コンにちは。狐人 七十四夏木です。
Twitterに投稿している
【140字の小説クイズ!元ネタのタイトルな~んだ?】
のまとめ。
その29。
文学作品の印象的な部分をピックアップ。
これで元ネタがわかれば凄い、という趣。
Twitterで配信中。
回答は、
画像リンクをクリックすると、
元ネタの読書感想に飛びます!
561
探偵の手:机の上に書きかけになっている晩餐会の礼状を指し「そこで盗んだものを下さい」という風に両手を軽く重ねてさし出す。
悪人の手:強く否定して、身の潔白を表明する。
探偵の手:礼状の文字のふるえを指し、鋭く詰問する。
悪人の手:ソロソロとポケットのピストルを探り……
562
人さらいの魔法使いがいた。乞食に変装してきれいな娘を誘拐した。魔法使いは娘を豪華な自宅へ連れ込み、娘の好きなものをなんでも与えた。そして数日後にある試練を課した。私は旅に出る、この家の鍵と卵を預ける、小さな鍵の部屋には絶対に入るな、卵を大事に持ち歩け。その約束を破った娘は……
563
滑らかな色の白さで、山腹のなだらかなくぼみでさえ、丁度雪にさす月の光のような、かすかに青い影を湛えているだけである。まして光をうけている部分は、融けるような鼈甲色の光沢を帯びて、どこの山脈にも見られない、美しい弓なりの曲線を、遥はるかな天際に描いている。
564
長い津軽の冬の終わり、あちこちの雪原に、冬枯れの黄色い草と緑の新芽が生えている。津軽では、黄色い草に火をつけて、それを野火と呼んで子供たちが遊ぶ。火を隔てて、五、六人ずつの二組に分かれて、歌を歌う。
――雀、雀、雀こ、欲うし。
――どの雀、欲うし?
565
島で、或あさ、鯨がとれた。
どこの家でも、鯨を食べた。
鬚は、呻りに、売られていつた。
りらら、鯨油は、ランプで燃えた。
鯨の話が、どこでもされた。
島は、小さな、まづしい村だ。
566
九月末の日曜日、私と友達の慶次郎がいつものように野原に初茸や栗を採りに出かけると、野原の入り口で「東北長官一行の出遊につき立ち入り禁止」の立て札を見つける。そしてそこでは二人の役人がおもてなしの準備で忙しくしている。役人は、おもてなしの準備でいつも忙しくしている。
567
子供の時に、自分の家へ郵便が投げ込まれるのを遠くから見て飛んで帰った事がある。別に手紙が見たいわけではなかったけど、どこから来た手紙か知りたかったからである。町中の家々に来る手紙をみんな知っている郵便屋さんが羨ましくて仕様がなかったものである。
568
ズルタンじいさんを処分しよう、もう何の役にも立たないし。でもズルタンは私たちのために忠実に仕えて働いてくれたし最後まで飼ってやれないかしら?それはあんまり利口じゃないね。もう泥棒だってあいつを怖がらないんだから。たしかにあいつは役に立ってくれたが、そのぶんたくさんエサをあげたよ。
569
生活難、病苦、精神的苦痛――新聞に出る動機は、動機に至る道程であって、動機の全部ではない。人間は人間獣であるために動物的に命を失うことを怖れている。生活力は動物力の異名に過ぎない。氷のように澄み渡った、病的な神経世界にいる。永久の眠りにつけば、幸福ではないにせよ、平和である。
570
混沌の世界に太陽が昇る。
「誰も見ていないのにごくろうさまね」
虹の女神アイリスが笑う。
「わしは太陽だから昇る。見ることのできるものは見るがよい」
と太陽は答える。
571
クリームのやうににほふから、
――朝の空気はにほふから、
通風筒は深呼吸。
とても一ぱいすひこんだ。
572
春、二つのうずのしゅげの花は、ふさふさした銀毛の房に変わっている。そしてひばりがやってくる。いい天気です、もう飛ぶばかりでしょう。僕たち遠いところへ行きますよ。飛んでいくのは怖いですか? なんにも怖いことはありません。
573
人形はニコニコして答えました。「お気の毒様ですね。あなたのように何でも可愛がる事を知らないものには私は役立たずに見えるでしょう。しかし人間の中には私を生命よりも大切な友達にして下さる方がいくらでもありますよ。私は狼のお役に立つよりも人間のお役に立った方がうれしいと思います」
574
「姫は十五歳になると、糸車の針が指に刺さって命を落とす」十三人目の魔女は生まれたばかりの姫に呪いをかけて立ち去っていった。残された十二人目の魔女は「呪いを取り消すことはできないが、呪いの力を弱めることはできる。姫は命を落とすのではなく、百年の眠りののち目を覚ます」と告げた。
575
半時間もかからずに書いた弔辞は意外の感銘を与えたが、幾晩も推敲を重ねて書いた小説の批評は惨憺たるものだった。保吉はこうしたことに運命の皮肉さを思った。時間をかけて書いたものよりも短時間で書いたもののほうが意外な高評価を得ることがある、というあるある。
576
「私」が『玩具』という小説を書こうとしている話。「私」という一人の男が、あるなんでもない方法によって、自身の三歳、二歳、一歳のときの記憶をよみがえらす。生まれてはじめて地べたに立ったときのこと。皮膚で聞いたものの名前。二つのときの冬に、一度狂った話。達磨と言葉を交わしたこと。……
577
小さい卵のなかにいる
かあいい坊やよでておいで、
みんなはおまえを待っている。
お空は青くはれている、
坊やのお歌を待っている。
梢の空気は澄んでいる。
小麦は軒端にこぼれてる。
お花畑は呼んでいる、
遊びにおいでと呼んでいる。
光はいっぱいみちている。
……
578
慶次郎と一緒にまっ赤な崖に叫び、こだまが返ってくるのを楽しんでいた。しかし「馬鹿野郎」と悪口を叫んだとき、こだまはごそごそと呟くように聞こえてきて――私と慶次郎は恐くなってその場から逃げ出した。うしろからハッハッハと笑うような声がした。次の年は兄さんにも一緒にでかけてもらった。
579
トロッコには裸の女が載せられていた。女は病気になった台湾館の給仕娘のひとりだった。その右手には治吉に宛てた手紙が握られていた。手紙の内容は、ギャングが治吉の誘拐を企てているという警告だった。女は手紙ごとソーセージ製造機の中に放り込まれ――治吉は意識を失った。
580
めっけ鳥は鳥じゃない。鳥にさらわれた子供の名前だ。めっけ鳥が拾われた家には魔女がいた。めっけ鳥を食おうとしていた。「ねえ、あなたがわたしを見捨てないなら、わたしもあなたを見捨てないわ」とレンヒェンが言った。「いまもこれからも、決して君を見捨てたりしないよ」とめっけ鳥は言った。
※オリジナル小説は、【狐人小説】へ。
※日々のつれづれは、【狐人日記】へ。
※ネット小説雑学等、【狐人雑学】へ。
※おすすめの小説の、【読書感想】へ。
※4択クイズ回答は、【4択回答】へ。
コメント