運/芥川龍之介=狐人的感想は「答えのない問題」の狐人的回答(みなみけの夏奈がヒントをくれた?)

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

着物姿の少女今回は『運/芥川龍之介』です。

芥川龍之介 さんの『運』は、文字数8200字ほどの短編小説です。本当の幸せとは何なのか……考えさせられてしまうのです。未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

桜ある春の日の暖かい午後、陶器師すえものつくりの翁と若侍が話をしている。若侍は、陶器師の仕事場から見える、観音参りの人の行き交う往来を眺めて、「これで善い運がさずかるとなれば、私だって、信心をするよ」と軽々しく言う。翁はその言に疑問な様子であるも、多くは語らない。若侍は暇を持て余しているのもあってか、翁に、観音様が真に運を授けてくれるか、尋ねてみる。翁は「運を授けてくれるか否かではなくて、その運の善し悪しが問題だ」と言う。そして若侍に乞われる形で、ある出来事について語り始める。

観音今から3、40年前、西の市で麻糸の店を営んでいる女が娘の時分に、清水の観音様へ願掛けをしたことがあった。どうぞ一生安楽に暮せますように――母親を亡くしてから、娘は困窮に喘いでいた。お籠りをして、満願の夜に、娘は観音様のお告げを聞いたと思い込む。お告げによれば、「ここから帰る路で、そなたに言い寄る男がある。その男の言う事を聞くがよい」――帰途、お告げのとおり男が言い寄ってきて、娘は強引に男の住処へと連れ込まれてしまう。怖かったが、観音様のお告げだからと、娘は男の言いなりとなり、夜が明けると、男に乞われるまま、夫婦の契りを交わす。

男は娘に綾と絹を与えると、日暮れには帰るからと出掛けてしまう。娘は心細く、また不審にも思い、住処の奥を探ってみると……、そこには盗品と思われる金品の数々。男が盗人であることは疑う余地がない。早く逃げなければ――と慌てる娘の傍には、飯炊き女と思しき老婆が。娘を逃がしたら、男にひどい目に遭わされるという老婆、しかし娘もここにいては命にかかわる……、いつしか争いとなり、娘は老婆の命を奪ってしまう。

その後、娘は男からもらった綾と絹を抱えて、なんとか知人の家へ逃げ込むことができるも――、なんだか表が騒がしい。そっと外を覗いてみると、あの男が盗人として捕まり、引っ立てられていく。娘は、その男に惚れていたわけでもないのに、急に自分がいじらしくなって、思わず涙を流した。

娘はそのとき手に入れた綾と絹を元手に、今の商売を始めて安泰に暮らしている。観音様は娘に運を授けたのだ。

それを聞いた若侍は、「それなら、そのくらいな目に遇っても、結構じゃないか」と言い、翁は「手前なら、そういう運はまっぴらでございますな」と言う。

頬杖をつく少女
photo by Dustin J McClure

「物質的な幸福」を真の幸福だと考える若侍と、「精神的な幸福」の重要性を説く陶器師の翁と――はたしてどちらが本当の幸せなのだろうか……。

 

 

狐人的読書感想

いかがでしたでしょうか。

「物質的な幸福」と「精神的な幸福」

どちらが本当の幸せなのかと、真剣に考えてみると、これはとても難しい問題のように思えます。

幸せとは目には見えないもの、であれば、目には見えない「精神的な幸福」が、やはり本当の幸せなのか? ……しかし、人間の精神とは、肉体があってはじめて生じるものですよね……、そう考えるならば、やはり「物質的な幸福」の方が……、肉体を維持するためには、つまり生きていくためにはお金が必要ですよね、生きていてこそ人は幸せを感じられる……、ではやはり、幸せに必要なのは、お金?

――とか狐人的には考えてしまいそうになりますが、これは「答えのない問題」のひとつといえるのではないでしょうか。人によって答えが違うし、時と場合によっても答えは変わってくるでしょう。

お腹が空いて倒れそうなときに、食べられない金塊をもらっても幸せにはなれませんし、お金も食べ物もたくさんあるけど、一人ぼっちの子供に、さらにそれらを与えても、子供は幸せを感じられない……。

[まとめ買い] HUNTER×HUNTER カラー版(ジャンプコミックスDIGITAL)冨樫義博 さんの漫画『HUNTER×HUNTER』(ハンター×ハンター)の「ドキドキ2択クイズ」を思い出してしまいましたが。

 

 

「お前の母親と恋人が悪党につかまり一人しか助けられない。
①母親
②恋人
どちらを助ける?」

というやつです。

「ドキドキ2択クイズ」の答えは「沈黙」。上でも述べたとおり、万人共通の回答というものがないからなのですが、このある種哲学的な問いに対する思考が、グローバル化する現代社会に生きる日本人には必要なのかもしれないと、そう思いました。

異性に告白されて、「もう少し待ってほしい……」とか、「もっと仲良くなってから……」とか、返されたことのある方、あるいは返したことのある方、いらっしゃるでしょうか?

yes-or-no日本語には、こうした曖昧な返事が多いように思いますが(それを言うためになぜ恋愛で例えた?)、英語には「Yes」か「No」しかない、というのは結構知られた話ですよね。

曖昧にすることで、相手の気持ちを尊重し、いさかいを避けるというのは、「和」を重んじる日本人の美徳ともいえそうですが、日本人がはっきりと返事をしないことで、海外の方は戸惑いを覚えることもあるのだと聞きます。

例えば、インド人やフランス人は議論好きだといいますが、彼らの一部は、あえて「No」と言うことで、相手の意見を引き出し、会話を深めようとしているのだとか。自分の意見を否定されてばかりいると、自分の存在までも否定されているような気分になって、不愉快を感じることもありそうですが、理由を訊いてみれば、曖昧に返事を濁すよりも、そちらの方がはるかに真摯的で、真剣に相手のことを思いやっている態度だといえそうです。

そんなわけで、「答えのない問題」とはいえ、だからといって真剣に取り組まず、答えを保留する態度を反省させられてしまいました。

考えるキツネ
photo by Rob Lee

なので、

「物質的な幸福」と「精神的な幸福」

どちらが本当の幸せなのか?

この「答えのない問題」に狐人的回答を出してみたいと思います。

話を芥川龍之介 さんの『運』に戻しまして、娘が得たメリットとデメリットを整理してみました。

 

メリット

・綾と絹
・それを元手に得た楽な暮らし

デメリット

・娘の貞操
・人の命を奪ってしまった罪悪感
・盗品と知っていても手を付けてしまった羞恥心

安泰な生活を手に入れた娘ですが、その代償として大切なものを失い、また罪悪感と羞恥心を抱えて、長い人生を生きていかなければならなくなってしまいました。

[まとめ買い] みなみけ(ヤングマガジンコミックス)『みなみけ』のアニメ1期(第7話)で、なぜか夏奈が、千秋の友達に防犯教室を開いたとき、「たとえ福沢先生が100人、千束になろうともお前たちにかなう価値はないものと知れ」と言っていましたし、娘の貞操はやっぱり大事!

 

――というわけで(?)、狐人的回答は、やはり「精神的な幸福」! (こんなまとめ方でよかったのでしょうか……、若侍のように、まだまだ陶器師の翁のような人生経験が足りないのだということで、ご容赦頂ければ幸いです)。

狐人的読書メモ

・『運』の概要

1917年1月発表の芥川龍之介 さんの短編小説。『今昔物語』の巻十六「貧女清水観音値盗人夫語第三十三」というお話がもとになっている。「物質的な幸福」と「精神的な幸福」について問われた作品。

・分からなかった言葉

(狐人的には分からない言葉が多かったので参考になれば)

青侍あおざむらい:若く、身分の低い侍

金鼓こんく:鉦と太鼓

壺装束つぼしょうぞく:平安時代~鎌倉時代にかけての外出時女性の着装。

黄牛あめうし:飴色の牛

網代車あじろぐるま:牛車の一種

績麻うみそ:紡いだ麻糸

襤褸つづれ:ぼろ。使い古された布

陀羅尼だらに:仏教の呪文のひとつ

白丁はくちょうくつ持ち・車副くるまぞいなどの役職

以上、『運/芥川龍之介』の読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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