おきなぐさ/宮沢賢治=逝くことについて考えるとき。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

おきなぐさ-宮沢賢治-イメージ

今回は『おきなぐさ/宮沢賢治』です。

文字4000字ほどの童話。
狐人的読書時間は約11分。

翁草、うずのしゅげ、おじいさんのひげ。春、白い綿毛の種は風に乗って飛んでいき、うずのしゅげの魂は天国へ昇っていく。逝くとは。一日の終わりに就く眠り。新しい出発。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

(岩手県では)「おきなぐさ」を「うずのしゅげ」という。うずのしゅげと言ったほうがしっくりくる。蟻に「うずのしゅげが好きか嫌いか」尋ねてみる。蟻は「大好きです」と答え、「それは黒く見えるときもまっ赤なときもある」と続ける。

去年、風の透き通ったある日の昼間を思い出す。枯草の中の二本のうずのしゅげが話をしている。雲はどこからくるんだろうね。そんな他愛のない話。そこへひばりがやってくる。今日は風が強い。僕たちも一ぺん飛んでみたいなあ。もう二ヵ月お待ちなさい。

二ヵ月後の春、二つのうずのしゅげの花は、ふさふさした銀毛の房に変わっている。そしてひばりがやってくる。いい天気です、もう飛ぶばかりでしょう。僕たち遠いところへ行きますよ。飛んでいくのは怖いですか。なんにも怖いことはありません。

そして二つのうずのしゅげの魂が天のほうへ飛んでいく。二つの小さな魂は、二つの変光星になったに違いない。変光星はあるときには黒く、あるときには蟻が言ったように赤く光って見えるから。

狐人的読書感想

宮沢賢治童話らしい、情景が美しい作品でした。

おきなぐさは「翁草」、老人の頭に似ているからそういう名前になったんだとか。「うずのしゅげ」は岩手県の方言で「おじいさん(うず)のひげ(しゅげ)」という意味になるそうです。また、ネコグサとの異称もあるとのこと。

春になって、うずのしゅげの白い綿毛のついた種は、風に乗って飛んでいきます。そして、親としてのうずのしゅげは天国へ逝ってしまうことが描かれているように思います。

命のリレーとでも言うんですかね。つぎの世代に命をつないでいくこと、そして自分は天国へと昇っていくこと、それは何も怖いことではないのだという、生命賛歌の童話のようです。

自分の命の終わり、逝くことについて考えるとき、なかなかうずのしゅげのように「なんにも怖いことはありません」とは言いがたいように思ってしまいますね。

準備のできている人にとって、それは一日の終わりに眠りにつくようなものであり、また新しい出発をすることである、みたいに言われても、わかるようなわからないような気がします。

自分という存在が消えることへの恐怖というよりも、やっぱりそれに伴う痛みや苦しみのほうが怖いように感じるのですが、そのへんは人それぞれなんですかねぇ……。もちろん、自分の存在が消えてしまうことへの、漠然とした不安みたいなものはたしかにあるのですが。

そういった不安は、子供だったり孫だったり、自分に連なる子孫たちに自分の一部が受け継がれていると感じたり、彼らが自分を記憶として覚えていてくれると思えば、軽減されるものなんでしょうか? そういった実感をいつかは得られるのでしょうか……なかなか想像しにくいんですよね……。

どういう生き方をしていくのかによって、そのときの感慨というものも全然変わってくるのかもしれません。

うずのしゅげのように「なんにも怖いことはありません。さよなら。ありがとうございました」と言って逝ければ、それはいい人生だったと言えそうな気がしますが、そんなふうに逝ける自信はいまのところまったくありません。

十年おきくらいに読み直して、考え直してみたいような、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

逝くことについて考えるとき

狐人的読書メモ

・オキナグサはプロトアネモニン・ラナンクリンなどを含む有毒植物。汁液に触れれば皮膚炎、誤食すれば中毒による腹痛、嘔吐、血便、痙攣、心停止(プロトアネモニンは心臓毒)の可能性がある。

・『おきなぐさ/宮沢賢治』の概要

初出不明。情景描写が美しい童話。命のリレー。生命賛歌。

以上、『おきなぐさ/宮沢賢治』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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