『十八歳の花嫁』を読む花嫁の、

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読書時間:およそ5分。
あらすじ:海の見える駅のベンチに一組の男女が腰掛けている。「あなたと結婚できて本当に良かった」と老婦人が言う。「……すまない」と青年は謝る。――戦時、兵隊の士気を高めるために、『軍人援護の美談』というものがあった。そこにはわたしの大好きだった祖母のことが書かれていた。

 

海の見える駅のベンチに一組の男女が腰掛けている。

気持ちのいい日和だ。風がやさしく渡り、空を映す青い水面を、穏やかに揺らめかせている。

「ふふふ」

ふと、老婦人が独り笑いする。

「ごめんなさい。またあのときのこと思い出しちゃって」

青年は思わず顔をしかめる。 続きを読む 『十八歳の花嫁』を読む花嫁の、

指環Re:ベンジ

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読書時間:およそ5分。
あらすじ:江戸川乱歩の『指環』は、1925年『新青年』(大正14年7月号)にて、『白昼夢』とともに「小品二篇」というタイトルで一括発表されたが、『白昼夢』が好評だったのに対し、『指環』の評価は芳しくなかった。著者自身「愚作だった」と認めているけれど、僕は好きな小説なので、指環Re:ベンジ!

 

【E】
「全く黙殺されてしまったので、私自身もなる程愚作だったなと悟った」

【A】
「失礼ですが、いつかも新幹線でご一緒になりませんでしたか?」

【B】
「……ああ、私も思い出しましたよ。やはりこの線でしたね」

【A】
「先日はろくにお話もできませんでしたね。お仕事ですか?」

【B】
「ええ。あなたもお仕事で?」

【A】
「恥ずかしながら求職中でして。それにしても、あのときはとんだ災難でしたね」

【B】
「まったく。私もあのときはどうしようかと思いましたよ」 続きを読む 指環Re:ベンジ

百分の待ち人

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読書時間:およそ15分。
あらすじ:僕は小説が好きだ。僕は小説が好きだ、という話だ。そして、いま夏目漱石の『夢十夜』を読んでいる、という話だ。待ち人とは、待っている人じゃなくて待っている相手のことだ。すなわち、『百分の待ち人』とは、僕のことであり僕の彼女のことだ。要するに、恋人を百分待たせてはいけない、という話だ。

 

僕は小説が好きだ。

たとえば、死んだ女性が百合の花になって逢いにくるのとは反対に、もしも小説が女性になって逢いにきてくれたなら(その際、女性が美少女であったなら、なお申し分ないことは、あえて言うまでもないかもしれないが)、僕は直ちに、その女性に結婚を申し込むに違いない。 続きを読む 百分の待ち人

モノノフの仔

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読書時間:およそ10分。
あらすじ:――なんでもよほど古いことではある。少年と大王。激しい炎を背景に、二人のモノノフが相搏とうと、対峙していた。モノノフの子ならば必ずや父の仇を討たねばなりませぬ――二人の剣が交わるとき、少年は、母の教えの真意を知る。

 

――なんでもよほど古いことではある。はてさて。何時代と表すべきか。あえてモノノフの時代とでも言い表すことにしようか。

夜。

大王の屋敷が激しい炎に包まれていた。

赤々と燃え上がる屋敷を背景に、二人の男が対峙していた。 続きを読む モノノフの仔