道なき道/織田作之助=狐人の感想はなぜか俺TUEEE系⇒MMORPG(まじめな教育的感想もあります)

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

ヴァイオリンを弾く少女
photo by Buscavientos

今回は『道なき道/織田作之助』です。

織田作之助 さんの『道なき道』は、文字数8500字ほどの短編小説です。けなげな少女、寿子ひさこの奮闘する姿に、涙せずにはいられません! 未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

寿子はまだ9歳だった。父親に言われるままヴァイオリンを弾いていたが、音楽が何か、芸術が何か、なんてことが、どんなことなのか、わかるはずもなかった。当然、立派なヴァイオリニストになろうとも思っていない。父親の言うとおりに弾かなければ、いつまで経っても稽古は終わらず、叱られるのは怖い――ただそれだけ、それだけのために寿子は今日もヴァイオリンを弾き続けている。

寿子の父、庄之助は、大阪で少しは名の知れたヴァイオリニストだったが、大成することはなかった。ヴァイオリン教室を開くも、稽古の厳しさに生徒は集まらず、貧しい暮らしを続けている。

夏祭りの提灯生国魂いくたま神社で夏祭が行われた夜、よその子が祭を楽しむために出掛けていくなか、寿子は「祭に行きたい」とも言い出せず、黙々とヴァイオリンを引き続けている。曲は、7歳の春から習い始めた「ツィゴイネルワイゼン」――ふと、父、庄之助のピアノの手が止まる。

急に「神社へ行くぞ」と告げる父に、寿子は大喜びで、よれよれのワンピースに着替えてから家を出る。たくさんの出店が寿子の興味を惹きつけるが、庄之助は立ち止まることを許さない。

神社につくと、父に言われるまま「日本一のヴァイオリン弾きになれますように」とお祈りする寿子、そのあとに小声で付け足した「――パパが見世物小屋へ連れて行ってくれますように」というお願いが叶えられることはなく、「さあ稽古だ」と息巻く父に連れられ、家に帰る。

庄之助は、娘の弾く「ツィゴイネルワイゼン」に、秘められた才能の片鱗を見た。だから神前で、すべてを犠牲にして、娘を日本一のヴァイオリニストにすることを誓ったのだ。

その日以来、庄之助はなけなしの仕事もやめてしまい、寿子の稽古に没頭する。暮らしは貧しくなる一方、寿子の稽古も厳しくなる一方……。

寿子の母親は寿子が3歳のときに亡くなっており、今の母親は、寿子の母の妹にあたる後妻だった。この継母は、寿子に辛く当たることはなかったが、庄之助が寿子相手の稽古に熱中し、自身が腹を痛めて産んだ子たちを蔑ろにする姿には、さすがにいい気がしなかった。まだまだ幼い寿子も、そんな継母の気持ちを察していて、迷惑にならないよう、せめてヴァイオリンを上手く弾き、早く稽古を終わらせようとするも――なかなか上手くはいかず、稽古は夜明けまで続く日もあった。継母は思う、寿子も「勘弁してくれ」と頼めばよいものを、「親も親なら、娘も娘だ」。

血のにじむような稽古の日々を寿子は耐え抜いていく――。

寿子が十三歳のとき、庄之助はなんとかお金を工面して、東京で開かれるコンクールに寿子を出場させる。そこで寿子は、二位と大きな差を開けて優勝を果たす。審査員をしていた音楽家たちの評価も尋常ではなく、寿子のために特別賞まで設けられるほど。マスコミ、レコード会社、映画、音楽業界の各人が、寿子と庄之助のもとを訪れるも、庄之助は法外な演奏料をふっかけては一歩も譲らない。彼らも呆れて帰ってしまう。

大阪に帰る汽車の中で、汽車に乗っている間だけは、ヴァイオリンを弾かなくてすむ……、「富士は日本一の山……」とはしゃぐ寿子に、「――日本一のヴァイオリン弾き! 前途遼遠だ。今夜大阪へ帰ったらすぐ稽古をはじめよう」、痛々しくやつれ果てた娘の顔を見て、それしか愛情の注ぎようがないのだと、目の奥に光を燃やす庄之助だった。

桜と富士山
photo by skyseeker

狐人的読書感想

いかがでしたでしょうか。

寿子かわいそすぎる! 庄之助ひどすぎる!

と。

感情が揺さぶられずにはいられない小説です。
感情が揺さぶられ過ぎて、思いがけず勢いのままに、あらすじが長くなり過ぎてしまいましたが……。

目の奥に光を燃やす庄之助って……、『巨人の星』か! 星一徹か? といった感じで、続きが気になる終わり方ですが(目を燃やしているのは主人公の星飛雄馬でしたっけ? 実際に見たことがないので、間違ってたらすみません)。

とはいえ、スポ根的なノリというか、テーマというのは、小説や漫画のみならず、創作には欠かせない要素ですよね……。

[まとめ買い] 魔法科高校の劣等生(電撃文庫)[まとめ買い] ワンパンマン(ジャンプコミックスDIGITAL)――かと思いきや、最近では「俺TUEEE系」みたいな、最初から最強の主人公が活躍するラノベや漫画も目立っていて……。

とっちがいいのか、悪いのか、という話でもないのでしょうが……(どちらもいい! という話なのですが)。

昔のRPG風の町MMORPG風の町それでも、あえていうなら、時代の流れみたいなものはあるのではないでしょうか? たとえばゲームにしても、仲間を増やし、経験値をためて、ボスに勝つ、いわゆる「友情・努力・勝利」型のRPGよりも、重課金で最初から強くなれるMMORPGの方が流行っているように思いますし。

織田作之助 さんの『道なき道』は敗戦直後の昭和20年に発表された短編小説。昭和から平成にかけて、世相も大分変化して、ウケるものも変化してきている? かといって、「ゆとり世代」だからとか、「さとり世代」だからとか、区別されるのも……。

しかしながら、けなげでまっすぐな主人公は、時代や世代を問わずして、受け入れられる人物像です。それがヒロインキャラだったりすると、同性の方に嫌われてしまうこともしばしばあるようですが、それが子供だったりしたら、まず嫌いになる人はいないのではないでしょうか? (あ、子供嫌いの人がいるか……)

ぱっと思いついたのは、北方謙三 さんの小説『水滸伝』(北方水滸)の楊令とか、浅田次郎 さんの小説『蒼穹の昴』の春児チュンル、同じく浅田次郎 さんの『プリズンホテル』の美加――などですかねえ。

北方謙三 さんも浅田次郎 さんも、人情味ある作風は、織田作之助 さんにどこか通じるところがあるような……、思い浮かべていて、思ったのですが、けなげでまっすぐな主人公像は、漫画よりも小説のほうが感情移入しやすいような気がしました。絵がない分だけ、想像の幅が広がるからかもしれません。

ちなみに、織田作之助 さんの別作品と、北方謙三 さんの『水滸伝』(北方水滸)の読書感想はこちら! (そういえば、浅田次郎 さんの作品についてはひとつも書いていませんでした。できればそのうち……)
小説読書感想『天衣無縫 織田作之助』あなたは読んで、笑える? 笑えない?
小説仲間におすすめ!『水滸伝』(北方水滸)歴史SLGのような小説

教育庄之助は、自分が果たせなかった夢を、寿子に託して厳しすぎる稽古を課すわけですが、これは明らかに親のエゴであって、決して褒められた行為ではないと思いました。

が、子供としては、はたしてどちらが幸せなのかなあ、ということも同時に考えさせられてしまいました。すなわち、期待されるのがいいのか、期待されないのがいいのか、ということです。

期待され過ぎて、寿子のように過度な英才教育を施されるのも嫌ですが、かといって、まったく期待されないのもどうなのかなあ……、みたいな。

親としては、自分の想いと子供の想い、双方の想いを踏まえた上で、適切な教育方針を定めなければならないのだろうか……、とか考えてしまうと、親になることの大変さ、そのの片鱗みたいなものを感じてしまうわけなのですが。

父と娘
photo by Vanessa Kay

ただ、期待されるのも、期待されないのも、子供がそれを受け入れて、幸せだと感じられれば、それでいいのかもしれません。練習が厳しくても、親の期待が重くても、それに応えるために努力すること、そこに幸せを見い出せれば、子供は幸せだといえるのではないでしょうか。

作中、継母が言うように、寿子はヴァイオリンをやめたいとか、稽古をもう勘弁してほしいとか、弱音を口にしていません。根性があります! 寿子と庄之助の親子関係も、寿子がヴァイオリンを続けていられるうちは、アリなのかもしれないと、そう思ってしまったのは他人事だから?

[まとめ買い] 四月は君の嘘(月刊少年マガジンコミックス)ヴァイオリンを題材にした漫画といえば、アニメ化もされ、去年(2016年)には実写映画化もされた、新川直司 さんの漫画『四月は君の嘘』の大ヒットが、記憶に新しいところです。

 

天衣無縫 アニメカバー版<「文豪ストレイドッグス」×角川文庫コラボアニメカバー>近年は、『文豪ストレイドッグス』に代表されるような、文豪ブームの流れがキているような……、『TRICKSTER ―江戸川乱歩「少年探偵団」より―』に代表されるような、江戸川乱歩 さんブームがキているような……、というような話を前回のブログ記事でもしましたが。
(⇒人間椅子/江戸川乱歩=狐人的な感想で衝撃のラストに残された謎を徹底解剖!

この流れに乗って、織田作之助 さんの『道なき道』もメディアミックスすれば、大ヒット間違いなし? オダサクブーム到来! (――と思えるくらい、『道なき道』はいい作品です!)

狐人的読書メモ

狐人的に読書していて「ちょっと気になったこと」

・寿子のモデル

Tsuji-Hisakoなんと、『道なき道』には実在するモデルがいました。戦前、天才少女と呼ばれてヴァイオリニストデビューした辻久子 さんと、そのお父さんの辻吉之助 さんです。僕は今回のブログ記事を書くまで存じ上げなかったのですが、日本のヴァイオリニストの草分け的な方なのだとか。自宅を売却して、3000万円のストラディバリウスを購入したエピソードが有名なのだそう。写真のように、とても美しい方なので、天才少女の呼び名と相まって人気があったみたいですね。

ネットで見つけた昭和23年11月号『音楽之友』という雑誌に載っていたというインタビューが印象的だったので、以下にメモしておきます。

「あれを讀むと昔のあの頃の事を懐しく思い出しますわ」
「でも全部がホントの事ばかりでは無いのですよ。」

・チゴイネルヴァイゼン(ツィゴイネルワイゼン)

『道なき道』の作中、寿子が7歳の春から練習し、9歳のとき、父が寿子の才能を見出した曲。1878年、スペインのヴァイオリニスト、サラサーテ作曲のヴァイオリン曲。

・ラフォリア(ラ・フォリア)

『道なき道』の作中、東京で行われた「東京日日新聞主催の音楽コンクール」で13歳の寿子が弾いた課題曲。1700年、イタリアの作曲家、アルカンジェロ・コレッリによって作曲された曲。

・コンクールの審査員たち

レオニード・クロイツァー:
ロシア出身、当時日本で活躍していたっピアニスト。

ミッシャ・エルマン:
ウクライナ出身のヴァイオリニスト。

レオ・シロタ:
ウクライナ出身、ユダヤ系のピアニスト。

ヤッシャ・ハイフェッツ:
ロシア出身、20世紀を代表するヴァイオリニスト。「ヴァイオリニストの王」とも。

ヨーゼフ・ローゼンシュトック:
ポーランド出身、当時日本で活躍した指揮者。「ローゼン」、「ロー爺」、「ローやん」などの愛称で親しまれた。

・スパルタ教育

(『道なき道』の作中、言葉としては出てきていませんが、庄之助が寿子に施した教育は、いわゆる「スパルタ教育」。この語源が気になったので、調べてみました)

「スパルタ」とは、古代ギリシャの都市国家であるスパルタを指している。軍国主義だった当時のスパルタでは、兵士養成のために非常に厳しい軍事訓練を課していたことによる。

・スパルタ式スパルタ教育

300<スリー ハンドレッド> (字幕版)生後、男の赤子は選別される。未熟児などはここで除かれ、ワインで洗われて痙攣を起こしてしまうと、虚弱児として除かれてしまう。

7歳になると軍隊へ。命令の絶対服従、戦いでの絶対勝利、などの思想を叩きこまれる。12歳になると30歳まで全裸での生活。沐浴なども禁止されていた。

スパルタの戦士たる者、読み書きは必須とされ、13歳で成人し、短剣一本を渡され、町を追い出されて1年間戻れなかったという。その期間、食料などは奴隷の町から奪うことで生き延びねばならない。

……凄まじきスパルタ教育! ですね。庄之助の稽古をひどすぎると思いましたが、その比ではなく……、上には上がいる、ということでしょうか。

以上、『道なき道/織田作之助』の読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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