犬の王様/夢野久作=おひとりさまレベルチェック、予想を裏切る素敵なファンタジー。

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

犬の王様-夢野久作-イメージ

今回は『犬の王様/夢野久作』です。

文字数1300字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約3分。

王様の残した遺言。つぎの王は息子にせよ。息子は犬だった。
王様の真意とは?

僕の予想は裏切られました。それだけに楽しめた作品でした。

おひとりさまレベルチェックができます。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

ある国の独り者の王様が亡くなる間際に遺言を残した。「俺の息子をつぎの王にせよ。さすれば俺が妃を迎えなかった理由がわかるであろう」。王様の息子とは、王様の可愛がっていた犬のことだった――

(とかあらすじを書いてみましたが、短いのでよろしければ全文どうぞ)

『犬の王様/夢野久作』

むかしある国に独り者の王様がありました。家来がどんなにおすすめしてもおきさきをお迎えにならず、お子様もない代りに一匹の犬を育てて毎晩可愛がって、「息子よ息子よ」とよんで、毎日この犬を連れては山を歩くのを何よりの楽しみにしておいでになりました。

そのうちに王様はちょっとした病気で亡くなられましたが、その御遺言には「俺が死んだら息子を王様とせよ。そうしたら俺が妃を迎えなかったわけがわかるであろう」との事でした。この国の家来は皆忠義者ばかりでしたから、変な事とは思いましたが、とうとう王様の「息子」の犬を王様にきめて、いろいろのまつりごとは今までの総理大臣がする事になりました。国中の人間はこのお布告ふれを見ると大騒ぎをして、お祝いの支度を始めました。

その犬は狸のようなつまらない汚い犬でしたが、いよいよお祝いの当日になりますと、金襴の着物を着て王様のお椅子に着いて、大勢の家来や人民にお目見得をさせる事になりました。

お目見得に来た人民の中に一人の婆さんがいて、一匹の三毛猫を抱いて犬の王様の前に出てお辞儀をしました。三毛猫は驚きました。忽ちお婆さんの手から飛び出して、

「フーッ」

と言うとそのまま一目散に山の方へ逃げ出しました。犬も何で知らぬ顔をしましょう。金襴の着物を着た儘王様の椅子を飛び降りて「ワンワンワンワン」と吠えながら一所懸命に追っかけました。

御家来や人民共の騒ぎは又大変でした。中にも総理大臣は騎兵を繰り出して真先に立って馬を躍らせながら、何処までもとあとをつけて行きました。

山奥に来ると向うに一つの洞穴があって、その中に犬が馳け込むのが見えました。

大臣と家来共は馬を降りて洞穴の中へ入って行きますと、やがて一つの見事な宮殿に来ました。その宮殿のお庭に一人の気高い姿をした女と一人の美しい青年が話をしておりました。

大臣は近寄って丁寧にお辞儀をしながら、

「今ここへ一匹の犬が猫を追っかけて来はしませんでしたか」

と尋ねました。

「猫は来ませんが、犬ならばそこに来ております」

と気高い女は青年わかものを指しました。

「エッこの方が」

と大臣は気絶する位驚きました。

女は顔を真赤にしながらこう申しました。

「今こそ本当の事を申し上げます。私はこの山の森の精で御座います。ずっと前にこの国の王様が狩りにお出でになった時にこの洞穴へ御入りになって、私と夫婦のお約束をなさいました。その後この皇子がお生まれになりましたが、私は一歩もこの洞穴を出ることが出来ませんので、仕方なしに皇子を一匹の犬にして王様のお傍へ差し上げました。お母さんなしでは誰も本当の皇子と思わないからで御座います。今日、皇子は王様がお亡くなりになってから暫く私に会いませんので、会いたくてたまらず、猫を追っかけるふりをしてここまで来られたのだそうで御座います。もう仕方が御座いません。なにとぞ王宮へ皇子をこのままの姿でお連れ下さいまし」

皆は、王子の顔が王様とこの森の精の女によく似ているのに気がついて、皆ひれ伏してお辞儀をした。そうして王宮にお伴をして、今一度この若い美しい王様のためにお祝いをしました。

若い王様はその後、暇さえあれば森に行ってお母様に会うのを何より楽しみにしておりました。

狐人的読書感想

犬の王様-夢野久作-狐人的読書感想-イメージ

「結婚しろ結婚しろ」と言われながらも、ペットの犬を可愛がるばかりで、ついに亡くなってしまうというあたり、現代のおひとりさまを思わせるお話だと思ってしまったのは僕だけ?(苦笑)

「独身女性は犬を飼ったらおわりだ!」みたいな。

まあ、実際そんなことはないんじゃないかなあ、と思う一方で、いつも愛犬が寂しさを慰めてくれるなら、「べつに結婚しなくてもいっか」という気持ちになるのもわからなくありません。このあたり、女性、男性ともに同じことがいえるのでしょうか? ちょっと話してみたくなる話題です。

ちなみに、おひとりさまレベルを計るチェック項目みたいなのがあって、おもしろかったので以下に書き残しておきます。

  • レベル1.ひとり喫茶店
  • レベル2.ひとりファミレス
  • レベル3.ひとりラーメン
  • レベル4.ひとり映画
  • レベル5.ひとりカラオケ
  • レベル6.ひとり焼肉
  • レベル7.ひとり国内旅行
  • レベル8.ひとり海外旅行
  • レベル9.ひとり遊園地

――といった感じ。

ただ、やはりいまはおひとりさまの時代というべきか、もはやひとりで行くのが常識となりつつあるものも、これらのなかには見られるようですね。

勉強、待ち合わせ、読書、お昼休憩など、ちょっとした時間つぶしに利用される喫茶店、ファミレスは言うに及ばず、ラーメンは女性にはひとりで入りづらいという方も多そうですが、全然平気というひともちらほら。映画もひとりでゆっくり楽しみたいというひとたちが増えているそうです。

ひとりカラオケ(ヒトカラ)は専門店もできていますよね。普通のカラオケ店で、「ひとりです」って言うのは、お客さんからすると恥ずかしくて言いにくいように思われるかもしれませんが、店員さんからしてみれば、部屋も汚さず注文も少ないので、じつは大歓迎なんだそうです。

ひとり焼肉も広いテーブルでひとりだとなんだか……、という感じですが、カウンター席のひとり焼肉専門店があります。

旅行は――とくに海外旅行はたしかにハードルが高いようにも感じますが、「一人旅」という言葉は昔からありますし、「誰にも気を遣わなくてもいいから」という理由で意外とアリみたいですね。とはいえトラブルがあったときなどが不安ですが……。しかし一人旅のプラン旅行などもあるので、こちらも新たな出会いがあって楽しいかもしれません。

ひとり遊園地は相当ハードルが高いように思われました。僕が調べたかぎりでは、遊園地サイドもとくにおひとりさまを呼び込むための積極的な対応などはしていないようで、いまでも遊園地は、やはり家族や恋人、友達なんかと行くところだといってしまって間違いないでしょう。さすがに「レベル.9」だけのことはあります。

とはいえ、こうして並べてみると、企業側が結構おひとりさまニーズに対応していることがわかって、おひとりさま時代の到来を感じさせられる結果になってしまいましたが、さて、あなたはレベルいくつだったでしょうか(笑)

余談が過ぎ(過ぎ)てしまいましたが、ここからはおひとりさまレベルの話から、『犬の王様』の内容に戻ります。

家来にどんなに勧められてもお妃を迎えなかった王様が、亡くなる前に言い残した遺言の内容が意味深で、俄然興味が湧きました。先がとても気になるいい導入だと思いました。

「俺の息子(愛犬)をつぎの王にせよ。さすれば俺が妃を迎えなかった理由がわかるであろう」というところから、僕はひょっとしてこれ、諧謔的なオチなのかなあ、と疑いました(夢野久作さんの九州日報シリーズには、ブラックユーモアを思わせるオチが結構あるので)。

王様がお妃を迎えず、愛犬をつぎの王にせよと言ったのは、「王様なんて犬がやろうと誰がやろうと大差ない」みたいな意味なのかなあと。

王様の資質とは徳やカリスマ性といった人の心を惹きつける魅力であって、政治はその魅力の下に集った優秀な臣下に任せればよいから、高度な政治的能力は必要とされず、犬でも務まるというようなことを示そうとしているのではないかと。

王様の家来たちは犬を王様にするという遺言に従ってしまうくらいの忠義者ばかりだし、政治はいままでの総理大臣が取り仕切ってうまく回っているようだし、このあたりもそんな想像を膨らませてしまった要因でした。

「政治のトップなんて犬(誰)がやってもおんなじで、結局何も変わりやしない」とか言ってみると、これは現代の政治にも思わされるところがありますが、しかしそうなってくるとこの王様、なにか自分の王としての在り方に、鬱屈した思いを抱いていたのかなあ、みたいな、ちょっと穿った見方をしてしまいました。

ところがこの物語、僕のこんなひねくれた想像とはまったく違うお話でした。普通、と言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、いい意味で普通のファンタジー展開で、予想を裏切られた僕としてはとても楽しめた作品でした。

王様と山の森の精とのラブロマンス。妃を娶らなかった王様の一途な想いを好ましく思いました。一国の王と山の森の精との間に生まれ、犬に変身させられていた若く美しい王子様には、何か特別な力が宿っていても不思議ではないですよねえ……、想像力を刺激されました。

ありがちな、といってしまえばそれまでかもしれませんが、僕はなかなか楽しめた作品でした。

読書感想まとめ

犬の王様-夢野久作-読書感想まとめ-イメージ

おひとりさまレベルチェック。

またもやブラックユーモアかと思いきや、すてきなファンタジー作品でした。

狐人的読書メモ

うん、半分以上は余談だ(そんな日もある、そんな日ばかりだけれど)。

・『犬の王様/夢野久作』の概要

1922年(大正11年)12月『九州日報』にて初出。九州日報シリーズ。今回はブラックユーモアではなくてすてきなファンタジー。

以上、『犬の王様/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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