ラプンツェル/グリム童話=ラプンツェルたちに物申してみました。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

アクセサリースタンド キラクリコレクション 塔の上のラプンツェル シルエット ラプンツェル

今回は『ラプンツェル/グリム童話』です。

グリム童話『ラプンツェル』は文字数6700字ほど。タイミング悪くディズニー『塔の上のラプンツェル』は見逃したけれど、タイミング良くグリム童話『ラプンツェル』を読んだので、ラプンツェルたちにちょっと物申してみました。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

昔、とある夫婦があった。夫婦の家の裏には魔女の庭があった。妊娠中の女はそこにあるラプンツェルがどうしても食べたかった。食べた過ぎて病気になった。男は魔女の庭からラプンツェルを取ってきて女に与えた。

翌日も男がラプンツェルを取りに行くと恐ろしい形相の魔女がいた。男は謝って事情を説明した。すると魔女は態度を一変させて男に言った。「ラプンツェルをほしいだけあげる、ただし産まれた子供はわたしがもらう」

約束通り、産まれた女の子は「ラプンツェル」と名付けられて、魔女が引き取って行った。ラプンツェルは美しい少女になった。12歳になると、魔女はラプンツェルを森の中の塔に閉じ込めた。

その塔に出口はなく、はしごもなく、頂上に小さな窓がひとつあるきりだった。魔女が塔に入ろうとするときにはこう言った。「ラプンツェル! ラプンツェル! お前の髪を下げておくれ!」すると窓からラプンツェルの黄金の長い髪が垂れてきて、魔女はそれを登って塔の中へと入るのだった。

ラプンツェルが14、5歳になると、この国の王子が塔の下を通りかかった。塔からは美しい歌声が聞こえてきた。王子は毎日歌を聞きにくるようになった。

ある日王子は魔女が塔に入っていくのを見た。同じようにすると、塔の窓からラプンツェルの髪が垂れてきた。王子はそれを登って塔の中へ。二人はたちまち恋に落ちた。結婚の約束をすると、塔を脱出する計画を立てた。

それから王子は、はしごを編む絹ひもを持って塔に通った。そんなある日、ラプンツェルが漏らした一言からすべてが魔女に露呈してしまった。激怒した魔女は、ラプンツェルの髪を切り、砂漠の真ん中へ追放した。

いつものように王子が塔の中へ入ると、そこには魔女が待ち構えていた。魔女の話を聞いた王子は、悲しみのあまり塔の上から身を投げた。王子は目を茨に引っかけて失明した。

王子は見えない目で森の中を数年間さまよった。そしてラプンツェルのすてられた砂漠に辿り着いた。ラプンツェルは男女の双子を産んで、悲しい日々を送っていた。

二人は再会を喜び合った。ラプンツェルの流した涙は王子のつぶれた目を癒した。それから二人は国に帰り、永く、睦まじく、幸福に暮らした。

魔女がどうなったのか? 知る者は誰もいない。

狐人的読書感想

塔の上のラプンツェル(吹替版)

さて、いかがでしたでしょうか。じつは先日(2017年3月10日)テレビでディズニーの『塔の上のラプンツェル』がやっていたので読んでみました――と言いたいところなのですが、見事に見逃しました。狐人的にはタイムリーなネタだったのでぜひ見ておきたいところでしたが……。

まあ過ぎてしまったことを悔やんでもしょうがないので、ディズニーの『塔の上のラプンツェル』のことは諦めて、グリム童話の『ラプンツェル』について書いていきたいと思います。

お付き合いいただけましたら幸いです。

……う~ん、一応ラプンツェルと王子、幸せになってよかったね、とは思ったのですが、作中本当に良い人間、というか、魅力的に映るキャラクターはいなかったですね。

みんな人間的で、だからこそある意味感情移入がしやすい部分はありましたが――とはいえ、物語に人間の美しき理想像を求めてしまうのは、完全に僕のエゴなので、それを批判的に捉えるのも間違っているとはわかっていても……。

(ちなみに美しき人間の理想像はこちら)

ラプンツェルの両親に物申してみる

まず、ラプンツェルのお母さん、なんで魔女の庭のラプンツェルを食べたくなっちゃったの! というツッコミ。

てかラプンツェルって野菜だったのですね。チシャとも呼ばれるサラダ菜みたいな野菜で、ビタミンA、C、カリウム、鉄分、葉酸などが豊富だそうです。

なので妊婦には最適な食物らしいので、体がどうしようもなく求めてしまった、と聞けば、責めるわけにもいかないわけなのですが……、魔女の庭のものだから人知の及ばぬ魔力が秘められていた、と想像すればなおさらなわけなのですが……、のちのことを思えばツッコまずにはいられませんでした。

そして、ラプンツェルのお父さん、なんで魔女の庭のラプンツェルを盗んじゃったの! というツッコミ。

まあこれも妻とお腹の中の我が子を案じての行動なので、一概に責めるわけにもいかないわけなのですが。魔女に我が子を差し出すことになったのも、そうしなければ妻の病気が続き、最悪妻も子も失ってしまうかもしれない――と考えれば、仕方なかったことにも思えるのですが……、のちのことを思えばやはりツッコまずにはいられませんでした。

ラプンツェルに物申してみる

で、いよいよラプンツェルよ、まあ王子と恋仲になっちゃうところまでは不可抗力だとは思うのですが、その後の言動が結構ひどいんですよねえ……。

「あのゴテルのおばあさんよりは、このひとほうがよっぽどあたしをかわいがってくれそうだ。」

王子の求婚を受けているとき、ラプンツェルは心の中で上のように思っているのですが、無理矢理親から引き離され、塔の中に閉じ込められているとはいえ、育ての親に対する愛情みたいなものはなかったのかなあ、と思わされる発言ですよねえ。

境遇と年頃を考えれば、現実の女の子らしい気はするのですが……、見逃してしまいましたが、ディズニープリンセスの一人ということで、やはり健気で美しき理想像を追い求めてしまいます。

「ねえ、ゴテルのおばあさん、うしてあんたのほうが、あの若様わかさまより、引上ひきあげるのにほねれるんでしょうね。若様わかさまは、ちょいとのに、のぼっていらっしゃるのに!」

これは、魔女にすべてが露呈するきっかけとなったラプンツェルの発言ですが、なかなかひどいことを言っています。素直な性格といえば多少は聞こえが良くなりますが、しかしうっかりミスってレベルじゃない。

「馬鹿な子ほど可愛い」とはいいますが、ラプンツェルの場合、これはまともな教育を与えていない(と見受けられる)魔女に責任があって、馬鹿だから子供が可愛いのか子供を可愛がるために馬鹿にしているのか、みたいな、親離れできない子供と子離れできない親とどっちに責任があるのか、みたいな、ちょっと考えさせられる部分でした。

ちなみにこの引用の台詞ですが、グリム童話の初版では「わたしのお洋服がきつくなっちゃって、わたしの体に合わなくなっちゃたの。どうしてかしら?」というような、妊娠をほのめかすものだったそうです。

『ラプンツェル』といえば、童話から「大人な描写」を徹底的に削除した例としてよく挙げられる作品なのだとか。

いつの時代もどの国でも「子供はどうやって生まれてくるの?」的な子供の質問には悩まされていたのかなあ、と想像してみると、ちょっとおもしろいお話でした。

(子供の「大人な」質問に答えるための日本の童話はこちら)

王子に物申してみる

王子の愚かさについては、語るまでもないかもしれませんが、一応。

若気の至りなのはわかりますが、王子の行動はどこまでも軽率だったように思います。塔から落ち、失明し、数年間森をさまよったのは、多少やりすぎな感は否めませんが、当然の罰のように僕は感じました(哀れではありますが)。

しかし、最後にはラプンツェルと再会し、男女の双子ともども幸せに暮らせたので、そこで王子の罪は許された的な、救いの存在が感じられる結末で、感慨深く、とてもよかったと思います。

人間の罪は、どこまでが許され、どこまでが許されないのか。許される罪と許されない罪があるのか。そもそも罪とはなんなのか? キリスト教的原罪? みたいな哲学的なことを考えそうになってしまったのはともかく置いておくとして。

余談ですが、ラプンツェルは男女の双子を産みましたが、じつは双子が産まれてくる場合、性別が別になるパターンは、統計的にもっとも多いそうです。ただしその場合は必ず二卵性双生児となり、一卵性双生児の男女の双子というのは存在しないのだとか。

物語中に双子が登場すると、なんとなく神秘性のようなものを見出して、そこに深い意味が隠されているのではないかな、と興味を惹かれてしまうのは僕だけなのでしょうか?

――とはいえ、『ラプンツェル』における双子の意味については、はかりかねているわけなのですが……。

魔女に物申してみる

最後に魔女です。

ゴテル婆さん……、この人も、とても良い人間とはいえそうにありませんが、そもそも人間じゃないのでは、と考えたほうがいいのかもしれません。

グリム童話の初版では「妖精」だったようですし。

シェイクスピアの『真夏の夜の夢(夏の夜の夢)』にパックという妖精が登場しますが(あと話には関係ないけど漫画『ベルセルク』にも)、この妖精パックは「トリックスター」と呼ばれる存在です。

トリックスターは、物語の秩序を乱し、引っかき回す役割をもったキャラクターの総称ですが、『ラプンツェル』の魔女も、このトリックスターであると解釈できるように思います。

何かしらの運命といったようなものをもたらす存在を「トリックスター」として認識することが、僕には多いわけなのですが、そうなると、もう善悪では語れない者になってしまい、なのでなかなか語るのが難しいです。

『ラプンツェル』の魔女の場合も、いったい何がしたかったのか、まったくの謎ですよね。物語の結びのとおり、「それは誰も知った者はありません」ということなのでしょうが、それだけにいろいろと想像させられてしまうところはあります。

ただ単に子供が欲しかっただけなのかもしれませんし、じつはゴテル婆さんには頃結婚詐欺にあった経験があって、この世のすべての男に復讐するため……、といった有名な恐ろしい話もあります。

物語を創作する上でのガジェット(装置)としても興味深いのがこのトリックスターです。

読書感想まとめ

ディズニーの『塔の上のラプンツェル』は見逃したけれど、グリム童話の『ラプンツェル』は読んだので、登場人物それぞれに物申してみました。なんで食べたくなっちゃったの、お母さん。なんで盗んじゃったの、お父さん。やっぱり理想的なプリンセスがいいよ、ラプンツェル。若気の至りじゃすまないよ、王子。あなたにはなんも言えない、ゴテル婆さん。

狐人的読書メモ

しかし、ちょうど『金曜ロードSHOW』でやっていたとは……、ちょっとタイミングを外してしまいました。……この読書感想は見逃した八つ当たりじゃないよ?

・『ラプンツェル/グリム童話』の概要

KHM 12。……旧約聖書の『失楽園』的なお話?

以上、『ラプンツェル/グリム童話』の読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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