斬られたさに/夢野久作=面白いからこのオチの解釈を誰か教えて!

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

斬られたさに-夢野久作-イメージ

今回は『斬られたさに/夢野久作』です。

文字数23000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約56分。

面白い。
時代、ミステリー好きにこのオチの解釈を聞きたい。
真相をそのまま信じるなら、
結末の主人公の行動に理解できない部分がある。
もしやリドル・ストーリーなのでは? 深読み?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

文久三年。黒田藩の武士、石月いわつき平馬は二人の浪人に絡まれている若侍を助ける。若侍は江戸の友川家の次男、三次郎矩行のりゆきと名乗り、病弱な嫡男、長一郎矩道のりみちに代わり、江戸勤番の武士に討たれた父の仇討あだうちの道中であるというが……女の妖艶あでやかさがある。

恩返しがしたいと引き止める若侍に、平馬は主命を帯びて帰国を急ぐと告げ、別れる。しかし、その晩泊った小田原の宿で、平馬は思わぬもてなしを受け、聞けば若い侍の取り計らいだという。

さらに箱根を越えて見附宿みつけしゅく、そこで泊まった三五屋という宿でも、平馬はやはりもてなしを受け、今度は黒い塗駕籠ぬりかごに乗った奥方風の女の計らいだという。

平馬は宿の老主人、佐五郎に事情を説明し、その女について尋ねる。どうやら渡世人上りらしい佐五郎は、それなら自分が様子を探ってきましょうと、宿を出て行く。

中国路を経て、平馬は福岡に帰り着き、黒田藩一刀流の恩師である、浅川一柳斎の道場を訪ね、今回の旅の話をする。愛弟子の訪問を大喜びしていた一柳斎だったが、平馬の話を聞くうちに顔色を曇らせていく。

が、佐五郎の他、まだ誰にもその話をしていないことを平馬が明かすと、一柳斎は次第に顔色をやわらげて言う。もしもその若侍か、奥方風の女が、平馬を訪ねてきたらどうするか? 平馬はその問いの真意がわからず、以前のもてなしのお礼を言うと答える。すると、一柳斎は満足そうに、この修行がなれば免許皆伝を平馬に授ける、と笑う。

それからしばらくして、師の予言通り、あの若侍が平馬の家を訪ねてくる。平馬が仇討のことを聞くと、若侍は突如泣き伏し――その背中の丸み、腰の膨らみ……たしかに女だ。

彼女は平馬に仇討免状と父の遺言状を差し出し、全てを打ち明ける。仇の名は黒田藩の指南番、平馬の師である浅川一柳斎、兄と弟は病で臥せっているため、偽りの願書で老中の仇討免状を取った。彼女は平馬に救われて以来、彼を愛するようになり、父の怨みを捨て、ここに斬られにきたのだと言う。

瞬間、彼女は匕首を抜いて平馬に突きかかる。平馬は脇差で彼女を斬る。彼女は、本望でございます、ニッコリ笑う。そして、今までのことは何もかも偽り、本当の私は女役者……と、そこまで言って事切れる。

後日、せ侍斬りについて出頭した平馬と佐五郎老人が、一柳斎に招かれて夕食のもてなしを受けていた。

一柳斎が語るところによれば、友川の父を斬ったのは一柳斎の名をかたる浪人だった。事件直後、弟の矩行が仇討のため、一柳斎の前に現れた。一柳斎が仇討免状を持っているか尋ねると、矩行は掏られたといって斬りかかってきた。一柳斎はやむなくこれを返り討ちにした。

続いて佐五郎が語る。その噂は見附まで聞こえていた。仇討免状を盗んだのは、旅役者上りの、外蟇そとがまお久美という掏摸すりの女親分だった。お久美は友川家に同情し、義侠心と功名心から、代わりに仇を討つことを誓い、平馬の前に現れたのだ。

一柳斎の邸を出た平馬は目に涙を溜めて呟く。

これが免許皆伝か……。

平馬は自宅に戻ると旅支度をして屋敷を出る。

あなたを斬ったのはこの平馬ではなかった。世間体せけんていの武士道……人間のまごころを知らぬ武士道……鳥獣の争いをそのままの武士道……功名手柄一点張りの、あやまった武士道であった。あなたのお蔭で平馬は真実まことの武士道がわかった……人間世界がわかった。平馬の生命いのちははあなたのもとへ参る。思い残す事はない……南無……。

狐人的読書感想

時代物、剣客アクション、復讐劇、ラブロマンス、ミステリー――短い中にこれらいろいろな要素がつまっていて、とても楽しめる小説です。

おもしろい!

おもしろいのですが、しかし……いえ、だからこそと言うべきか、オチを読んだときに、何か釈然としないものを感じてしまうのは、ひょっとして僕だけ?

なぜそんな結末になったのか、なぜ主人公の平馬が世を儚んで切腹せねばならなかったのか、わからなくもないのですが、行動の必然性が理解できないというか、そこまで思いつめるほどのことだったのか、納得ができないというか……、誰かに教えてほしい気持ちでいっぱいです。

とはいえ、一応自分でも考えてみたことを、以下に書き残しておきます。

物語で明確に示された真相はつぎのようなものでした。

平馬が旅の途中で助けた、父の仇討を志す若侍は女だった。若侍の父の仇は、平馬の剣の師、一柳斎だった。若侍は平馬に命を救われたことで、彼に恋するようになり、彼の師を討つことを断念、しかし仇討よりも恋を選んだ自分が許せず、平馬の手により斬られることを望んで、そのとおりとなった。

友川家の真ん中の娘だと平馬に正体を明かした女は、旅役者上りの、外蟇そとがまお久美という掏摸すりの女親分だった。一柳斎はすでに仇討にきていて友川家の弟を返り討ちにしており、それ以前に仇討免状などを弟から掏っていたのがお久美だった。お久美は義侠心と功名心から、その仇討を代わりに果たすことを決意した。

これらのことを、師一柳斎は弟子平馬の腕試しのため、知っていながらあえて伏せていたという。何も知らない平馬はただ流されるままに女を斬ってしまい、世に絶望して切腹という結末を迎える。

オチの解釈については、平馬も女を愛していて、その女を自らの手で斬ることになってしまい、それを止めることができたかもしれない事実を、師である一柳斎が隠していたことに絶望して――と考えられるのですが、どうも納得できません。

平馬の最後の想いを、師の偽り(人間のまごころを知らぬ武士道)と、女の義侠心(人間のまごころを知る武士道)と、とらえて、運命を儚んで……というのはわかるのですが、師一柳斎の語る真相が、僕には『世間体せけんていの武士道』に思えてならないんですよね。

つまり、世間体を気にしてでっちあげた、偽りのストーリーなんじゃないかな、とか疑ってしまうのです。

友川の父の遺言状の連名に、

友川三郎兵衛矩兼血判
嫡男 長一郎矩道代筆印
次男 三次郎矩行  印

とあることから、長一郎と三次郎の間に、「次一女」がいることが推察できるんですよね。もし若侍が掏摸の女親分ではなくて、本当に友川の真ん中の娘で、言っていたことがすべて真実なのだとしたら、老中は偽りの願書に仇討免状を出してしまったことになり、まさに世間体が悪い。

遺言状によれば、『一、父は不忍しのばずの某酒亭にて黒田藩の武士と時勢の事につき口論の上、多勢に一人にて重手おもで負い、無念ながら切腹し相果あいはつる者也。』とあり、一人に多勢で戦った一柳斎もまた世間体が悪い。

彼らがそれぞれの世間体を保つために、老中側と一柳斎側が結託し、偽りの真相をでっちあげ、友川の娘に運命的な出会いをした平馬を利用し、せ侍を斬らせることで、真実を闇に葬り去ろうとしたのでは――そして、そのことに絶望した平馬が、最期に巡らせた想いが、「真実まことの武士道がわかった……人間世界がわかった」ということだったのだとしたら、狐人的にはとても納得できるんですよね。

とはいえ、自分でもこれに、いろいろな反論が思い浮かびます。

たとえば、だったらなんで、若侍は最期に自分の正体を「女役者」だと明かそうとしたのか――おそらく、老中と一柳斎がでっちあげた真相は、佐五郎が知っていたことからも市中の噂となっており、当然若侍も自分がただの贋せ侍にされていることを知っていて、だから最後に、平馬の罪の意識を少しでもやわらげようとして、嘘をつこうと思ったのでしょうか……、う~ん、ちょっとこじつけっぽいですかね?

結局、すなおに真相を信じて読んでみても、僕がもやもやした違和感を感じるだけであって、案外すんなり受け入れられる人のほうが多いのかもしれません。

もし、時代・ミステリーに自信があって、実際に本編を読んでみて、真実やオチの解釈がわかった! という方がいらっしゃったら、ぜひとも教えていただきたいと、そう思うくらい、本当におもしろい小説でした。

おすすめです!(真実が知りたいのとは関係なく)

読書感想まとめ

『斬られたさに』のオチの解釈と真実を誰か教えてください!

狐人的読書メモ

・リドル・ストーリーとして読むのは深読みのし過ぎかな? でも、そのほうがおもしろい気がするな。

・「武士もののふは道に心を残すまじ。草葉の露に足を濡らさじ」とはいえ……、ね?

・『斬られたさに/夢野久作』の概要

1934年(昭和9年)『大衆倶楽部』(第2巻第1号)にて初出。著者初の時代小説。時代、剣客アクション、復讐、恋愛、ミステリー、いろいろな要素が合わさってとても楽しめる作品に仕上がっているが、オチの解釈に違和感を覚えずにはいられない。だからおもしろい。

以上、『斬られたさに/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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