御身/横光利一=俺は恋をしてるんだ(2歳の姪に)。

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

御身-横光利一-イメージ

今回は『御身/横光利一』です。

文字数13000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約32分。

大学生の末雄は姪っ子がかわいくてしょうがないんだけど、
姪は不思議なほど彼になつかない。
姪に愛されたい叔父さんの奮闘記。
最近は甥や姪がいる大学生って増えてる?
現代でも共感力ある小説。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

6年前に嫁いだ姉のおりかが妊娠したと聞いて、末雄は顔を赤らめながら、嬉しくなる。末雄とおりかはとても仲のいい姉弟だ。

さっそく末雄は姉の家を訪れ、姉の下腹を気にしたり、心配したりするが、なんだか恥ずかしくて直接的に赤ちゃんについて尋ねることができない。

4月、末雄は東京で幸子ゆきこが生まれたとの知らせを受ける。6月、末雄は帰省して初めて幸子に出会う。俺にそっくりじゃないか。姉のおりかは少し赤い顔をする。末雄は愛おしさのあまり幸子の唇にキスをする。

それからの末雄は、あんなに小さく弱々しい幸子だ、何かささいなことでも命にかかわるのでは……、と心配する日々。

つぎの春の休暇、幸子は大きくなっていた。いつも一緒にいる姉は、大きくなったように見えないと、嬉しそうに言った。

東京の末雄のところに手紙がくる。幸子が種痘しゅとう(天然痘の予防接種)をして丹毒たんどくになり、片腕一本で生命が助かったという。

末雄は、片腕を切断された幸子が、壊れた玩具のように転がっている様子を思い浮かべ、激しい怒りが込み上げてきた。姉の不注意を激しく罵った。もはや幸子を自分の妻にして、必ず幸せにしてやるしかないと、思いつめた。

が、手紙は姉の言葉足らずで、幸子の腕に毒は回ったが、片腕を切断などはしていなかった。末雄は脱力して、今日はうまいものを腹いっぱい食べてやろうと思った。

休暇になると末雄はすぐ姉のところへ帰った。幸子は末雄を見て激しく泣いた。末雄は幸子がかわいくてたまらないのに、幸子は末雄を嫌っている。幸子を抱きたいのに、泣かれてしまう。

愛にとりつかれた者は惨めだ。愛することで見返りを求めるのに、なぜ見返りを求めるのかわからず、それでも見返りを求めずにはいられず、しかし愛は人間の中に確実にある……。

あまり泣かれるので、もうここへは帰るまい、と思っていたのに、つぎの夏の休暇も末雄は姉の家にいた。やっぱり幸子を見た途端、末雄は幸福を感じるが、幸子は末雄を見て後ろへ退さがっていった。

俺は恋をしてるんだ、と、末雄はまじめに思うことがあった。ただ一度でいい。彼女をしっかりと抱き、彼女もぴったりと抱かれること以外何も求めていないのに、幸子は冷たい。幸子を憎く感じる日が増えてくる。

子守は大変だ。ちょっとでも目を離せない。もうしたくないと思うが、幸子が笑ってくれると嬉しくなって、犬の真似など愚かなことを平気でやってしまう。

御身よ、御身、いまに見ろ。

末雄は幸子を見て、一人呟くのだった。

狐人的読書感想

う~ん……仲よしの姉弟、姉に赤ちゃんができたと聞いては、弟が顔を赤らめ、弟は赤ちゃんが自分に似ていると言って、今度は姉が顔を赤くし……なんだかあやしい姉弟を想像してしまうのは、邪心眼(?)を持つ僕だけ?(そんな入り?)

末雄、赤ちゃんの姪を異常に愛しちゃってますしねえ……、しかも赤ちゃん、末雄にそっくりらしいんですけどねえ……、そんなあやしい想像をしてみても楽しめる小説です(そんなあやしい想像をするのは、僕だけなのかもしれませんが……)。

『御身』は横光利一さんの処女作だそうです。20歳のときに生まれた姪のことを描いているといいますから、この作品の主人公である末雄も、大学生の青年と考えていいんですかね?

とにかく、末雄のはしゃぎっぷり、姪への溺愛っぷりがぱないです。

俺は恋をしてるんだ(2歳の姪に)。

ちょっと笑ってしまいましたが、気持ちはわからなくもない気がします(あやしい意味ではない)。甥や姪がかわいくてしょうがない! って、友達がスマホの写真を見せてくる、みたいな話、なんかよく聞くような気がするんですよね。

現代は少子化、出産年齢の高齢化、などと言われていますが、その影響なのか、年子よりも少し歳の離れた兄弟姉妹が増えているんですかねえ……、そう思えば、これは昔の小説ですが、今でも共感しやすい小説であると、いえるのかもしれませんね。

末雄の気持ちには行き過ぎたところがある、とは思いつつも、共感できる部分が多いです。

たとえば、生まれたばかりの姪が泣いていて、枕の下へ手を入れると抱いてもらえると思ってぴたりと泣き止む、だけど静かに手を離すとまた泣き出して、にやりとする(そんなことしてたから、嫌われてしまったのかも)――

『彼はうまい手を覚えたつもりでもう一度それを繰り返そうとした。が、ふと、幸子ゆきこは生れて今初めてだまされたのではなかろうかと思った。』

『そんな風に考えると、彼は自分のしたことがそう小さいことだとは思えなくなった。彼は姪を抱き起した。そして、謝罪の気持ちで姉が帰って来て乳を飲ませるまで抱き通してやった。』

隣家の赤ちゃんが肺炎で亡くなったと聞いて――

『「やれやれ。」と彼は思った。生き続けて大きくなってゆくということは、よほどむずかしいことのように思われて気が重苦しくなってしまった。』

母が孫の顔ばかり見ていて――

『子よりも孫の方が可愛いらしい、そう思うと、その日一日彼はふさいでいた。』

末雄が姪への愛や恋を思う文章――

『愛という曲者くせものにとりつかれたが最後、実にみじめだ。何ぜかというと、われわれはその報酬を常に計算している。しかしそれを計算しなくてはいられないのだ。そして、何故計算しなくてはならないかという理由も解らずに、しかも計算せずにはいられない人間の不必要な奇妙な性質たちの中に、愛はがっしりと坐っている。』

『彼のせめてもの望みは、幸子を一度、ただの一度でいいしっかりと抱いてやる、そして、彼女はぴったりと彼に抱かれることだった。更にそれ以上の慾をいえば、いつでも彼の欲する時に彼女が彼に抱かれることだった。実際彼はこのことに苦しめられた。しかし、彼の受けた愛の報酬もやはり前の夏の休暇と同じようにつめたいものであった。彼は幸子を憎く感じる日がだんだん増して来た。』

みたいな。大学生くらいの青年らしい感情が溢れていて、そのくらいの年齢の人、またはそのくらいの年齢をすでに経た人が、とても共感できるように思えたんですよね。

『彼女が笑うと、彼はいよいよ乗り気になって赤い顔をしながら本気に犬の真似をしたり、坂道を昇る自転車乗りのペタルを踏む真似をしたりしてはしゃいだ。が、途中で急に彼は不気嫌になって黙ってしまった。すると、幸子はひとり首を振り振りペタルを踏む真似をして、「チンチンチン。」といいながらへやの中を馳け廻った。彼女にとっては、この叔父さんは全く壁に等しい代物しろものであるらしかった。
「今に見ろ。」そう彼は幸子を見てひとごとをいった。』

がんばれ、叔父さん! と応援したくなってしまいますね。

弟が姉へ、叔父が姪へ、青年が幼――など、背徳的な想像を巡らせてみても楽しく、また青年の幼い姪に対する無邪気な愛に共感してみておもしろい小説でした。

読書感想まとめ

俺は恋をしてるんだ(2歳の姪に)。

狐人的読書メモ

・ところどころ文学青年らしさも垣間見える。文学青年、文学少女にはより共感できる小説かもしれない。

・そういえば、赤ちゃんへのキスって、たしか虫歯がうつるからダメって話が、あったような気がする。

・『御身/横光利一』の概要

1918年(大正7年)執筆、が、このときは未発表。のち1924年(大正13年)5月、第一創作集『御身』(金星堂)で初出。著者が20歳のときに生まれた姪のことをモチーフに書かれた短編小説。志賀直哉の影響が色濃い作品。末っ子文学。

以上、『御身/横光利一』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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