鬼/織田作之助=他に何もいらないくらい好きなことを仕事に。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

鬼-織田作之助-イメージ

今回は『鬼/織田作之助』です。

文字数6500字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約17分。

仕事の鬼。
生活力のない天才。だけど好きを仕事にできる天才。
生きるために仕事する? 楽しむために仕事する。
なら、他に何もいらないくらい好きなこと見つけて、
仕事にできたら一番幸せ?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

辻十吉は流行作家だ。小説、シナリオ、脚本――執筆に追われて忙しい。

そこまでいろいろな仕事に手を出すのは、金に汚いからだと人々は噂した。ボロ家に住んでみすぼらしい服装をして、せっせと溜めてやがる、と軽蔑されていた。

ところがそうではなかった。

ある日、辻が私のところに「高利貸を紹介してくれ」とやってくる。私が驚いて理由を尋ねると「金がない」。

なぜ金がないのかと聞くと、仕事のため、日に百本のたばこを吸い、コーヒーを飲んで砂糖を浪費し(戦後の当時はすべて贅沢品だった)、仕事が忙しくて原稿料の為替が期限切れだったり――要するに、辻は金銭感覚に疎く、生活力に欠ける、いわゆる仕事の鬼だった。

またある日、私が辻を訪ねてみると、新円がないからたばこが買えないとしょげている。

私が証紙を売ってる闇市があると言うと、辻はその話に食いついてくる(1946年、戦後日本では金融措置の一環として新円切替が行われたが、切替後しばらくは証紙を貼った旧円が使用できた)。

金に無頓着なこの男にしては珍しい。

買いに行くのか、尋ねてみると、そんなめんどくさいことはしないという。

ならばなぜ?

「こりゃ小説になるね」と辻は言った。

狐人的読書感想

タイトルの『鬼』とは「仕事の鬼」のことだったんですね。

おもしろかったです。

何もかもを忘れて、一つのことに没頭できるというのはすさまじい才能だと思います。そればかりではなくて、そうして作り上げた小説だったりシナリオだったり脚本だったりが、ことごとく好評を得ているという――うらやましすぎるぞ辻、といった感じです。

しかし、その才能のため、物を書くこと以外の一切に関与することができず、生活能力の欠如は致命的で、周囲の理解やサポートがなければとても生きてはいけません。

まさに典型的な天才を思わされます。

さきほどはうらやましいとか軽く言ってしまいましたが、これをうらやましいと感じるかどうかは、ひょっとしたらけっこう意見が分かれるところかもしれませんね。

才能は欲しいけれども、それで生きていけないのでは意味がないし、だけど家族や恋人や友人や、いい人に巡り会えて理解やサポートを得られて生きられるのだとしたら、こんなに幸せなこともないような気がします。

てか、天才の人は天才であることを、幸せに思ったり不幸に感じたりすることって、あるんですかねえ……。

好きなことばっかりできて、それが人に評価してもらえて、お金をもらえて生きていけるのであれば、それほど幸せなことはないという感じですが、いろいろなものを天才であるゆえに犠牲にしているのだということはいえそうですよね。

周りが見えないということは、他の楽しいことも見えないというわけで、さらには周囲の人たちにも迷惑をかけてしまうわけで、だけどもそんなことは気にならないのが天才なわけで、だったらやっぱり好きなことを好きなようにして生きられる天才は幸せだな、という気がしますが、そもそも幸せだとか不幸だとかいうことさえ、天才には関係ないことなのかもしれません。

なので、そんなことをあれこれ考えてしまう自分は間違いなく天才ではないので、やっぱり天才をうらやましく思ってしまうというのがこの話のオチにもならないオチです。

もう一つ、仕事とお金の使い方についても思うところがありました。

作中で以下のような「私」のセリフがあるのですが。

『いっそ仕事をへらしたらどうだ。仕事をへらせば、煙草の量もへるだろう。仕事をしてもどうせ煙になるんだから、しない方がましだろう。……』

「仕事をしてもどうせ煙になる」ということは、大なり小なり、みんなに言えることなんですよね。

すなわち、食事などの生活費にお金が消えていく、ということなのですが、たぶんほとんどの人が、生活のため、生きていくために仕事をして、お金を稼がなければいけないと、思っているのではないでしょうか。

何のために仕事をするのか、と問われれば、それは生きていくため、ということになるのでしょうが、なんとなくそこにむなしさのようなものを感じたりします。

とはいえ、生活以外にも趣味であったり旅行であったり――楽しむためにもお金は使うわけで、ならば楽しむためにも仕事をしていることにもなるわけで、つまり生きるということは楽しむことなんだな、などという当たり前のことをふと思ったのですが、だったら仕事が自分にとって一番楽しいことであれば、それ以上の幸せはないような気がしました。

お金にならない仕事でも、それが自分にとって一番楽しい仕事で、最低限の生活ができるのなら、それでも幸せなのかなあ、みたいな。

とはいえ、贅沢がしたくてお金が欲しくなってしまいそうですが。

他に何もいらないくらい好きな物事があって、それを仕事にするのは難しいかもしれませんが、それができたら本当に最高だな、って、とりとめもなく思った、という、最後にとりとめもないお話でした。

読書感想まとめ

人に認められる天才に憧れる。他に何もいらないくらい好きなものを見つけて、それを仕事にして生きていけたら……と思うけれども、どちらもなかなか難しい。

狐人的読書メモ

人に認められない天才もいると思う。ぶしつけな言い方をすれば、金にならない天才だ。天才には憧れるが、そんな天才は悲惨だという気がした。

・『鬼/織田作之助』の概要

1946年(昭和21年)5月、『新風』にて初出。織田作之助は人に認められる天才だといって過言ではないだろう。仕事の鬼を描いた短編小説。

以上、『鬼/織田作之助』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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