小説読書感想『天衣無縫 織田作之助』あなたは読んで、笑える? 笑えない?

あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。
(「『狐人』の由来」と「初めまして」のご挨拶はこちら⇒狐人日記 その1 「皆もすなるブログといふものを…」&「『狐人』の由来」

今回は小説読書感想『天衣無縫 織田作之助』です。

当然(?)前回までのブログ記事からの流れのまにまに『文豪ストレイドッグス』つながりです。

天衣無縫 アニメカバー版<「文豪ストレイドッグス」×角川文庫コラボアニメカバー>テレビアニメ第2期開始早々登場した織田作之助 さん! 重要な役どころで大活躍でした。そんな織田作之助 さんの異能力は、今回取り上げる小説のタイトルから「天衣無縫」! 5秒以上6秒未満の未来が見える、いわゆる予知能力ですね。

 

『文豪ストレイドッグス』の織田作之助 さんのような予知能力が使えるキャラって、結構いるような気がするのですが、実際思い浮かべようとしてみると、案外出てこないものですねえ……。

[まとめ買い] BLACK CAT(ジャンプコミックスDIGITAL)僕が思い浮かべた中で、一番近い能力は、『To LOVEる ―とらぶる―』でおなじみの矢吹健太朗 さんの漫画『BLACK CAT(ブラック キャット)』に登場したスヴェン=ボルフィードというキャラクターのものでしょうか。「予知眼(ヴィジョンアイ)」も数秒先の未来が見える能力でしたよね。

『文豪ストレイドッグス』の中で、太宰治 さんから呼ばれていた「織田作(おださく)」というあだ名は、実際に親しまれていた織田作之助 さんの愛称なのだとか。木村拓哉 さんの「キムタク」が代表的ですが、縮めて呼びやすい名前って、確かに親しみやすいですよね。学生時代とかは、友人関係の構築に一役買ってくれそうです。

(ちなみにお名前が出たので太宰治 さんの読書感想はこちら)

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『文豪ストレイドッグス』の織田作之助 さんは混ぜカレー好き。現実の文豪・織田作之助 さんも大阪名物・難波『自由軒』の混ぜカレーが大好物だったのだとか。「トラは死んで皮をのこす、織田作死んでカレーライスをのこす」と書かれた額縁入りの写真が、『自由軒』では今でも大切に飾られているそうで、織田作之助 さんが地元に愛されている文豪であることがわかります。

『文豪ストレイドッグス』では、ポートマフィアの構成員といったちょっと怖そうな職業に就いていた織田作之助 さんですが、そんな実情とは反対に、殺さずの誓いを立てていたり、孤児を養っていたり、と「お人よし」な一面をのぞかせていました。

このお人よしな一面は、文豪・織田作之助 さんの著作『天衣無縫』の政子の夫、軽部から得られたモチーフなのかもしれないと、『天衣無縫』を読み終えた後に思いました。

……軽部はお人よしというか、まさに「天衣無縫」なわけなのですが。

戦国BASARA弐 其の五 [DVD]「天衣無縫」は無邪気で飾り気がない人柄を表す四字熟語です。また『戦国BASARA』の長宗我部元親の二つ名でもありますね(こっちはいらない?)。

 

 

織田作之助 さんの『天衣無縫』は、無料の電子書籍Amazon Kindle版で13ページ、文字数13000字ほどの短編小説です。句読点が少なく、一文が長い印象ですが、テンポが良いのでサクサク読めます。未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

あらすじ

『天衣無縫』の主人公は、帝大を卒業して会社員となった軽部清正……ではなくて、彼とお見合い結婚した政子という女性です。

ちなみに帝大(帝国大学)は、現在の東大や京大の前身となる日本トップの学校――ということは、夫の軽部はエリート社員……かと思いきや、「底抜けのお人よし」というか「天衣無縫」というかダメ人間。

同僚の飲みの誘いを断れずお見合いの席に遅刻。初デートの文楽(人形劇)は、三日前に終わっている上、一時間の遅刻。次のデートのディナーではお会計でお金が足りず……。

そんな軽部は、頼まれると嫌とは言えない性格で、借金してまで人にお金を貸してしまう始末。

天衣無縫過ぎる夫へのグチが止まりません……。

かんそう

織田作之助 さんの『天衣無縫』は大きく2つの読み方ができる小説だと思いました。

すなわち、

「笑える」か、「笑えない」か、です。

まずは「笑える」感想から

「べっ、別にお見合いなんて行きたくないんだからねっ! ワクワクなんかしてないんだからねっ!」とか言いつつ、念入りにお化粧をして、大急ぎで会場に駆けつける政子。

「眼鏡がダサいし、結婚なんか絶対してやらないし、べっ、別にアンタのことなんか全然好きじゃないんだからねっ!」とか言いつつ、お見合い後、先方から「異存はありません」との返事がくると、喜び勇んで「OK」の返事をしてしまう政子。

政子はツンデレヒロインです(笑)。

以前ブログ記事に書いた小説(⇒小説読書感想『森の神 夢野久作』ブログで全文が読める! 森の神ツンデレ説?)でもツンデレを疑いたくなるようなキャラ(森の神)が出てきましたが、「ツンデレ」という言葉が最近出来ただけであって、そのキャラ自体は昔からあったのかもしれませんね。そう考えると、「ツンデレ」はやはりヒロインキャラの王道といえそうですね(いえない?)。

そしてダメ夫の軽部もどこか憎めないキャラクターです。

そんなかわいい夫婦の、ハートフルなラブコメディとして読んでみると、「末永くお幸せに!」といった感じで楽しめます。

名短篇ほりだしもの (ちくま文庫)実際、北村薫 さんと宮部みゆき さんが編集に携わった『名短篇ほりだしもの』というアンソロジーに、織田作之助 さんの短編小説『探し人』、『人情噺』、そして『天衣無縫』の三作が収載されているのですが、その中の「解説対談」で、宮部みゆき さんが『天衣無縫』について以下のように評しています。

『私は三つのうちで『天衣無縫』が一番すきです。最後まで奥様の一人語りで「あの人は私だけのものだ」とか、かわいいなあ!』

北村薫,宮部みゆき編(2011)『名短篇ほりだしもの』ちくま文庫.

たぶん、こちらの読み方が多数派になるような気がします。語り部である政子の辛辣な語り口の中に、ちょっぴりのかわいらしさとやさしさが感じられて、僕もおもしろいと思いました。

他方「笑えない」感想です

読んでもらえるとわかるのですが、とにかく夫の軽部がダメダメ過ぎる。他人事だと思えば笑えるのですが、本当にこの人が自分の伴侶だったら……と想像してしまうと全然笑えません。最後、政子が胸倉を掴んで折檻しているほどです。

軽部は、人一倍の働き者で、遅刻も早退も欠勤もしないで、勤勉に努めています。そこはダメじゃないのですが、タイムレコードをいつも押し忘れているところがダメなのです。そのために、人事では軽部がいつも無届欠勤をしている扱いになってしまい、帝大出のエリートで、真面目な勤務態度にもかかわらず、出世も昇給も毎回先延ばしになってしまう……その旨を政子がきつく指摘すると、なんと軽部逆ギレ。

そんなことまでいちいち気をつけて偉くならんといかんのか、といつにない怖い顔をして私をにらみつけた。そして、昼間はひとの分まで仕事を引き受けて、よほど疲れるのだろうか、すぐ横になって、寝入ってしまうのでした。

ここは非常に納得できませんでした。

たとえば、他人を蹴落としてでも出世しろ、とでも政子が言ったのならわかるのですが(であればむしろ、上の引用のような態度に、カッコよささえ感じてしまいますが)、出退勤のタイムレコードをちゃんと押して……、と当たり前のことを言っただけでこの態度。

全然笑えませんでした。

「天衣無縫」(無邪気)な人って、確かに周りに一人はいて、どこか憎めないような気がして、迷惑をかけられたり、嫌なことを言われても、ついつい許してしまうところがあって、「この人、絶対人生得してるよなあ」とか思わされることもあるのですが、結構綱渡りな人生だと思うこともあります。

社会環境に左右されるというか。会社や学校で周りが大人な人ばかりだと、「天衣無縫」な人は「愛されキャラ」としてうまくなじんでやっていける反面、周囲になじめないと排斥されてしまう、みたいな。

ただ、「天衣無縫」な人って、そこのところを意識的にか無意識的にか、ちゃんとわかっているような気がします。それを理解していて自分の適応できる環境を選んだり、自ら作り出したりしているように見えることが多いです。

だからやっぱり「天衣無縫」な人はお得だよなあ……とか考えるのは、ただのやっかみなんだろうなあ――とか思うと自己嫌悪に陥ったりします。

『あなたは「天衣無縫」な軽部タイプ? あるいはしっかり者の政子タイプ?』

とか自己分析しつつ読んでみても楽しいかもしれません。

狭いレンジの自己分析になりそうですが……。

あなたは『天衣無縫』を読んで、「笑える」? それとも「笑えない」?

以上、『天衣無縫 織田作之助』の小説読書感想でした。

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今回ブログ記事に関連した漫画

・ちなみに矢吹健太朗 さんの漫画『To LOVEる ―とらぶる―』

・「天衣無縫」!
文豪、織田作之助 さん が登場する『文豪ストレイドッグス』

漫画版

小説版

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

それでは今日はこの辺で。

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