絵本の春/泉鏡花=蛇の怪異ときいて何を思い浮かべる、ああん?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

絵本の春-泉鏡花-イメージ

今回は『絵本の春/泉鏡花』です。

文字数7500字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約25分。

昔、若い女を雨戸に磔、真っ白な腹をずぶずぶと。
その話……ぼく知ってる……だってその話……。
蛇の怪異譚。
蛇は美女に化け、洪水を起こす。
巳巳巳の物語。
蛇の怪異、あなたは何を思い浮かべる?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

昔の屋敷町の荒れ果てた土塀が、いまもそのままになっている裏小路があった。

桃も桜も、真紅の椿も濃い霞に包まれた初春の黄昏時、十歳くらいの子供の私が、土塀の一ヶ所にくっついて、荒れた庭の中を覗いていた。

ボロボロの雨戸のような木戸に、月の光がさして、「かしほん」の文字がほのかに見えるが、それは花とつぼみをつけた桃の一枝の影かもしれない。

と、そこへひとりの大柄な女が湯帰りらしく、私のほうへ近づいてくる。夢中だった私が呼びかけられて気がつくと、それは占い師をしている小母さんだった。

小母さんは私を自分の家へ連れて帰る。そしてあの家にまつわる、美しい女の虐げられた、恐ろしい伝説を聞かせてくれる。

旧藩の頃、あの組屋敷にはある侍がいた。

仕える殿様が難病を患っており、巳巳巳巳、巳の年月の揃った若い女の生肝いきぎもで治るというので、侍は人買いから条件に見合った若い女を手に入れた。

そして、雨戸をまな板代わりに、女の裸をかすがいで打ちつけ、真っ白な腹をずぶずぶと割いた。

侍が持ってきた生胆の壺を、殿様の前で御典医が検めると、真っ赤な血肝と思ったものは糠袋ぬかぶくろだった。

侍は、腹を割いた女がまだ動いている、と弁明したが、怒った殿様は庭前にわさきで侍を斬らせた。

一昨年の夏の夜明け頃。

例の土塀のところに人だかりができて、若い男が倒れていた。医者が駆けつけて調べてみると、口いっぱいに紅絹もみの糠袋が。

どうにか息を吹き返した男曰く、月夜にこの小路へ入る、美しいお嬢さんの、湯帰りのあとをつけて、その舌を無理矢理吸ったのだという。

子供の私は小母さんの話を、その一つ目の話のほうを知っていた。

なぜならあそこで、美しいお嬢さんに借りた草双紙に、その話が書かれていたから……。

巳巳巳については他にも、明治七年七月七日、大雨の降り続いたその七日七晩目、蛇にまつわる洪水のあった話がある。

(すべては蛇の怪異のしわざだったのか……?)

狐人的読書感想

泉鏡花さんの読書感想は、前々回が『海の使者』でゲソ娘……じゃなくてクラゲの怪異、前回が『画の裡』で絵師の怪異、そして今回が『絵本の春』で蛇の怪異と、怪異ものが続いています。

怪異ものといえば西尾維新さんの『〈物語〉シリーズ』を連想します。蛇の怪異といえば「千石撫子」、「蛇切縄」、「クチナワさん」ですね(?)。

西尾維新さんが描く現代の怪異譚もおもしろいですが、泉鏡花さんが描く昔の怪異譚もおもしろいです。

調べてみると、蛇が美女に化けていたり、洪水を起こすといった怪異譚はけっこうあるみたいです。

例えば蛇が美女になる昔話のひとつに「貧乏で正直なねぎ売りの男が、竜宮から美しい姫を嫁にもらった」という話があります。

竜宮といえばやはり『浦島太郎』の乙姫様を連想しますが、僕にとっての乙姫様は龍神であって、あまり蛇と結びつけて考えたことはありませんでした。

しかし、龍と蛇とはその姿かたちから同一視されることもしばしばなので、乙姫様が蛇の化身、というのはなくはないように思えてきて、なんとなく新たな発見をしたような気になったのですが、そうでもないですかね。

また洪水については「ある侍の娘がお寺の僧との悲恋に悩み、池に身を投げると蛇体になった。その池に鎌や鉈など金目のものを落とすと洪水になる」といった伝説を見かけました。

思えば蛇という生き物は興味深いです。

「人間、蛇が嫌いか、蜘蛛が嫌いか」で二分できるともいいますし、アダムとイヴをそそのかして、知恵の木の実を食べさせたのも蛇でしたね。

ケツァルコアトル、ヨルムンガンド、エキドナ、バジリスク、ヤマタノオロチ、ウロボロス……神話に神様や怪物としても登場し、これらはゲームのキャラクターとしても有名なものがいますよね。

怪異やそれにまつわる動物は、元々空想であるだけに、創作との相性も抜群なように思えるのですが、それだけにいい作品やおもしろい話がごまんとあって、競争率は高いかもしれませんねえ……。

それだけに、創作するには二の足を踏んでしまう題材ですが、しかしいろいろ調べるだけでもおもしろいと思いました。

読書感想まとめ

蛇の怪異、あるいは蛇という動物が興味深いです。

狐人的読書メモ

読み物として、怪異譚にハズレはないと、狐人的には思ってる。

・『絵本の春/泉鏡花』の概要

1926年(大正15年)『文藝春秋』にて初出。蛇の怪異譚。鏡花の幼少時代、自身の読書熱と不気味な伝説を併せた作品だという。

以上、『絵本の春/泉鏡花』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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