水呑百姓/グリム童話=数の暴力をぶっとばせ!?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

水呑百姓-グリム童話-イメージ

今回は『水呑百姓/グリム童話』です。

文字数5000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約12分。

悪の主人公が数の暴力という巨悪に挑む! 資本主義社会に対するアンチテーゼ的童話。人間は他人と比較して幸福を得る生き物です。炎上は川の水に落として消火せよ?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

むかしあるところに、金持ちの百姓だけが住む村があり、そこにはただ一人だけ貧しい百姓が住んでいた。彼はみんなから小百姓と呼ばれていた。雌牛を買う金もなかった。ある日、小百姓は名付け親の指物師に木の仔牛を作ってもらった。木の仔牛が大きくなればやがて本物の雌牛になると考えたのだ。

つぎの朝、小百姓は牛飼いに木の仔牛を抱いて牧草地へ連れていってくれるよう頼んだ。木の仔牛は草を食べる姿勢のままいつまでも牧草地を動かないので、牛飼いはそのままにして帰ってきた。それを見咎めた小百姓は牛飼いと一緒に牧草地へ行くが、木の仔牛は誰かに盗まれていた。小百姓は村長に文句を言いにいった。村長は逃げた仔牛のかわりに雌牛を一頭やるように牛飼いに言った。

こうして小百姓は本物の雌牛を手に入れたが、貧乏なのでエサを与えることができなかった。そこで雌牛の肉を塩漬けにして、皮を町へ売りに行くことにした。小百姓は水車小屋のそばで翼の折れたカラスを見つけた。かわいそうに思い牛の皮に包んだ。その後すぐに嵐がきて、その水車小屋に泊めてもらうことにした。粉屋のおかみさんは一切れのパンとチーズを渡し、わらのところで寝るようにと小百姓に言った。

しばらくすると水車小屋に牧師がやってきた。おかみさんは牧師を歓迎して焼肉とサラダとケーキとワインをテーブルに用意した。自分との待遇の違いに小百姓は腹を立てた。そこへ粉屋の亭主が帰ってきた。おかみさんはあわてて焼肉を暖炉へ、ワインを枕の下へ、サラダをベッドの上へ、ケーキをベッドの下へ、そして牧師を玄関の戸棚へ、それぞれ隠した。

粉屋の亭主はわらのところで寝ている小百姓を見て一緒にパンとチーズを食べようと誘った。亭主は小百姓の持つ皮の中に何が入っているのか興味を示した。小百姓は皮の中には占い師が入っていると言った。亭主は自分を占ってほしいと言い、小百姓は5つのうち4つまでならと言って承諾した。

『一つ、ワインが枕の下に隠されている』
『二つ、暖炉の中に焼肉が隠されている』
『三つ、ベッドの上にサラダが隠されている』
『四つ、ベッドの下にケーキが隠されている』

占いカラスが言った(と小百姓が言った)占いはことごとく当たったので、亭主は5つ目の占いも聞きたくてしかたなかった。そこで食事のあと、小百姓は300ターラーで5つ目の占いを教えると請け合った。おかみさんは青ざめていたがなすすべはなかった。

『五つ、玄関の戸棚に悪魔が隠れている』

亭主は「悪魔は出て行かねばならん」と言って玄関の戸を開けた。と、たちまち戸棚から牧師が飛び出し、玄関の外へ走り去っていった。亭主は「たしかに黒い悪魔を見た」と言った。

小百姓は村へ帰るときれいな家を建てた。村長と村人たちに聞かれると小百姓は「町で雌牛の皮を300ターラーで売った」と答えた。村長と村人たちは我先にと牝牛を潰して皮をはぎ、町の商人に売りにいった。商人は「そんなにたくさんの皮をどうしろってんだ?」と言って買ってくれなかった。

村長と村人たちは仕返しに小百姓を処刑することにした。穴を開けた樽に小百姓を入れ、川に転がり落とすことにした。小百姓は引き出され、牧師と二人きりで最後のミサが行われた。その牧師は粉屋のおかみさんと一緒にいたあの牧師だった。小百姓は窮地から逃がしてやった代わりに自分を助けるよう牧師に求めた。

そこへ羊飼いが通りかかった。小百姓はこの羊飼いが村長になりたがっているのを知っていたので「この樽に入れば村長になれるとしても、おれはそんなことしないぞ!」と叫んだ。こうして羊飼いは小百姓のかわりに樽の中に入ることになった。牧師はそのことを村人たちに黙っていた。

樽が川へ転がり落とされたあと、小百姓は羊飼いの羊を連れて意気揚々と村に戻ってきた。村長と村人たちは仰天してわけを尋ねた。小百姓は「川の底にたくさんの羊が草を食べている草原があった」と言った。村長と村人たちは川へ飛び込み、全員帰らぬ人となった。小百姓は一人村の跡継ぎとして大金持ちになった。

狐人的読書感想

……う~ん、とりあえず牛飼いと羊飼いがかわいそ過ぎますね。何も悪いことしていないのに(牛飼いなんて親切にしてあげたにもかかわらず)、小百姓にだまされて不幸にされてしまうとは……。

あと牧師と粉屋のおかみさん。ああいう関係だったと想像してしまってもいいんですよね? それを小百姓に利用されてしまったのはまあ自業自得かもしれませんが……。

グリム童話の主人公って必ずしも善人ばかりじゃないんですよね。そこがおもしろく感じられる最近の自分がいたりします。

本作の主人公・小百姓もけっこうあくどいことをやっていますが、結果的に幸せになっていてなんだかなって感じです。

ひょっとして「貧乏人はそれだけで正義」的な、「資本主義社会に対するアンチテーゼ」的な童話なんですかねこれ……(そんなわけない?)。

村には金持ちの百姓ばかりが住んでいて、当然のように一人の貧しい小百姓が迫害されているように見受けられます。

人間は他人と比較して幸福を得る生き物ですが、そのため全体として個や少数を迫害するって、いじめとかもそうですけれどやっぱりはたから見てると気持ちのいいものじゃないんですよね。

数の正義といえば当たり前のことなのでしょうが、この作品ではそんな数の正義に個が打ち勝っているさまが描かれているようで、そのあたりの結末はなんともいえない爽快感があったりもします。

小百姓も村人たちも悪いっちゃ悪いんですが、しいていうなら大多数で一人を理不尽に迫害するのがもっとも悪いということなのかもしれません。

とはいえやっぱり世の中は数の正義なんだろうなぁ……と思った、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

数の暴力をぶっとばせ!?

狐人的読書メモ

・数の正義というか「数の暴力」というらしい。ある集団が特定の思想において大多数の支持を得ていることをもって、その集団が絶対的な正義であると錯覚し、自分たちの思想に賛同しない少数派の人たちを排斥する。最近のインターネット上の炎上とかそんな感じするときある。

・『水呑百姓/グリム童話』の概要

KHM61。原題:『Das Bürle』。主人公も敵役もみんなそれなりに悪人。そんなところもグリム童話の魅力の一つ。「資本主義社会に対するアンチテーゼ」的な童話(なのかもしれない)。

以上、『水呑百姓/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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