コンにちは。狐人 七十四夏木です。
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【140字の小説クイズ!元ネタのタイトルな~んだ?】
のまとめ。
その6。
文学作品の印象的な部分をピックアップ。
これで元ネタがわかれば凄い、という趣。
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回答は、
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元ネタの読書感想に飛びます!
101-A
「だめだめ。全然気持がこもってないじゃないか、お前は。もう一度やってみろ。いいか。真剣に、本当に真剣になって、竜になりたい、竜になりたいと思うんだ。竜になりたいという気持だけになって、お前というものが消えてしまえばいいんだ」
「はい、先生! いきます! ドラゴラム!」
101-B
彼は読み書きができない。だから動物の、植物の、星の名前を知らない。だが彼は、動物なら一目でその性質と強さを見抜く。どれが薬草でどれが毒草なのかをよく心得ている。星によって角度や時刻や季節を知るのを得意としている。名前を知ってはいても実物を見分けられない俺と、なんという違いだろう!
101-C
我々がそうするのはなんのためだ? 来世で極楽に生まれたいからか? ところで極楽にもジュウジュウ焼けた香ばしい焼肉を食べる楽しみがあるだろうか? 仙人のように霞だけ吸って生きるのなんてまっぴらだ! たとえつらいことがあっても、またそれを忘れさせてくれる楽しさのある、この世が一番さ。
101-D
俺が比較的彼を怒らせないのは、いままで彼と一定の距離を保って、彼の前にあまりボロを出さないようにしていたからだ。こんなことではダメだ。いかに怒られることが神経にこたえようとも、どんどん怒られて怒鳴られて、納得いかなければこちらからも怒鳴り返して――遠くからじゃ何も学べやしない。
101-番外編
他人を遠ざけるのは自分が傷つきたくないからじゃありませんか? 自分を傷つけるのは、人を傷つけたくないからで、自分はやさしい人間なんだと、言い訳していませんか? 怒られれば謝って、怒りたければ怒り返して、傷つけたり傷つけられたりしながら、本当の家族、友達、恋人に。それが人間です。
102
「なぜ? 私はくやしい。よくわかりもしないことをさも見てきたように言いふらしてさ」、――悪い噂は仲間をつくる人間の重要な社会的機能です。だけど悪い噂によって心を痛めるひとがいる。悪い噂を言われないようにすることは難しい。では悪い噂を言わないようにすることは?
103-A
その日、男は自分の妻が課長と浮気をしているという確信を得た。翌日、男は課長に辞表を叩きつけてそのまま帰宅した。妻を呼びつけ問いただすと――男の勘違いであることがわかった。明日からどうするつもり? 泣き伏した妻は心の中でニヤリと笑った――女の心の底には陰険が巣食っている、らしい。
103-B
『xxx』、『キス』、『チュウ』。
自分の唇を相手の唇、額や頬に接触させる
愛情表現を漢字2文字でお答えください。
それが今回の答えです。
104-A
タイトルの意味は、亡くなったひとの姓名を書き記した帳面のことを指しています。僕の母は狂人でした。一番目の姉は僕が生まれる前に亡くなりました。僕の父は愛ではなく物で、養家に行った僕を取り戻そうとしました。陽炎や塚より外に住むばかり。三人は幸福だったろうか? 家族について思います。
104-B
「伯母さん、これはなんていう樹?」
「どの樹?」
「このつぼみのある樹!」
「これはね、お前と同じ名前の樹よ」
「じゃあバカの樹という樹なのね!」
「いいえ、ボケの樹というんですよ」
「あははははは」
「おほほほほほ」
105
一人目――。二人目――。三人目――。
四人目――。五人目――。六人目――。
七人目――。八人目――。九人目――。
十人目――!
「さあ、愛人とはみんな別れてきた。
これで俺とやり直してくれるな!」
「やっぱむり」
106-A
彼女の耳は薄くて冷たくて柔らかくてピカピカしている。彼女の耳は一種特別の物質である。私は彼女の耳をパチンとやってみたくて堪らない。これは残酷な空想だろうか? 違う。それは彼女の耳が持っている一種の不思議な示唆力によるのだ。誰もが彼女の耳を触りたがる。
106-B
子供は残酷であるとはいうが、彼女の耳をパチンとやるというような、児戯にも等しい空想も、思い切ってやらない限り、それは我々のアンニュイのなかに、外観上の年齢をはるかにながく生き延びる。とっくに分別のできた大人が、いまもなお熱心に、彼女の耳をパチンとやる空想にとりつかれている。
106-C
しかし最近、この空想の致命的な誤算がわかった。彼女は耳をあまり痛がらない。引っぱってもつまんでも、いくら強くしても痛がらない。なのである日、私は彼女と遊んでいる最中に、とうとうその耳を噛んでしまった。彼女は直ちに悲鳴を上げた。私の古い空想はその場で壊れてしまった。
106-D
彼女は耳を噛まれるのが一番痛いのである。私の永らくの空想はこのようにして消えてしまった。しかしこういうことにはきりがないようだ。私はまた別のことを空想しはじめる。それは彼女の爪をみんな抜いてしまうのである。彼女はどうなるだろう? きっと生きる気力を失ってしまうのではなかろうか?
106-E
爪がない。爪の手入れができない。
爪がない。爪の手入れができない。
爪がない。爪の手入れができない。
彼女は何度もそう思うだろう。そのたびに彼女はいまの自分と昔の自分が違うことに気づいてゆく。そうしてだんだんと自信を失ってゆく。彼女を常に輝かせてくれた爪が、もはやないのだから。
106-F
彼女はよたよたと歩く別の動物になってしまう。いずれ歩くことさえしなくなる。なんたる絶望! そしてついには物を食べる元気さえ失くしてしまうのではなかろうか?
106-G
爪のない彼女! こんなにたよりなく、かわいそうなものがあるだろうか! この空想はいつも私を悲しい気持ちにさせる。その悲しみのために、この結末が正しいのかどうかさえ、私にとっては問題ではなくなってしまう。
106-H
爪を抜かれた彼女。目を抜かれても毛を抜かれても、彼女は生きているに違いない。だけど爪だけはダメだ。これが彼女の活力であり、智慧であり、精霊であり、すべてなのだと私は信じている。
106-I
私は今日もゴロッと仰向きに寝転んで、彼女を顔の上へあげている。とても柔らかいぷにぷにしたそれを、ひとつずつ私のまぶたにあてがう。心地よい彼女の重量。温かい彼女のそれは、私の疲れた眼球にしみじみとした、この世のものではない休息を与えてくれる。
106-J
「ああ、仔猫よ、お願いだからしばらく踏み外さないでおくれ。お前はすぐに爪を立てるのだから」
107-A
むかしある国に、独り者の王がいた。家臣がどんなに勧めても妃を迎えず、息子と一緒に山を歩くのを何よりの楽しみとしていた。王は病気で亡くなる間際に遺言を残した。「俺の息子をつぎの王にせよ。さすれば俺が妃を迎えなかった理由がわかるであろう」。王の息子とは、一匹の犬のことだった――
107-B
忠臣ぞろいの家臣団は、王の遺言どおり犬を王にした。玉座についた犬は、ある日猫を追って飛び出してしまった。家臣たちは慌ててその後を追い、山奥の洞穴に入ると、そこには見事な宮殿があった。宮殿の庭では、気高い姿をした女と、美しい青年が話をしている。大臣が女に犬の行方を尋ねてみると――
107-C
女は美しい青年を指さして言った。「私は山の森の精です。王様は狩りに来たときここへ入られ、私達は夫婦となりました。そしてこの王子が生まれました。だけど私はここから一歩も出られないのです。母がいなければ不審に思われるでしょう。仕方なく王子を犬の姿にして王様のもとへさしあげたのです」
108
「あなたの手はケダモノの手なんかじゃないわ。たしかに、たたく手は乱暴かもしれない。だけどあなたの手は扉をたたく手、人生の扉をひらく手でしょう? ケダモノの手なんかじゃない、立派な手よ。人間の、立派な手」
109-A
久助君は遊びのつもりで兵太郎君に組みついた。しばらく冗談半分の取っ組み合いが続いたが、しかしそのうち、相手が冗談なのか本気なのか、久助君にはわからなくなってきた――友達との距離感はけっこう難しい。楽しくてテンションが上がってしまうとついつい言動が行き過ぎてしまうことがある。
109-B
久助君は起き上がった兵太郎君の顔を見てびっくりした。見たこともない、さびしい顔つきの少年がそこにはいた。久助君はこう思った。ぼくがよく知っている人間も、ときにはまるで知らない人間になることがある――ひとは完全にはわかり合えない。それは久助君にとってひとつの新たな悲しみであった。
110
山道の途中にある、侘しい釣鐘の影の中で、そっと、美麗な女の、人妻の写真を見たとき、樹島は血が凍るように、ぞっとした。たしかに、そこに写っていたはずなのだ。美女に抱かれた赤ん坊が――消えていた。
111
『ユリ熊嵐』というアニメ作品をご存知でしょうか? 今回の元ネタはこのモチーフともいわれています。人間と熊は相容れない関係ですが、お互いに何か惹かれるところがある、という部分がたしかに共通しているように思われます。熊に好かれるひとになりたいですね。あ、ユリは共通しません、念のため。
112-A
寒い。定雄は長い読経の早く終わることばかりを願った。しかし、もしこれが父の回忌ではなくて他人のだったら、こんな願いも起さずにいるだろうと思うと、いつまでも甘えかかることのできるのは、やはり父だと思った。――子はいつまでも親に甘えたい、だけど甘えるばかりじゃダメなのかもしれない。
112-B
「奥さん、坊やをおんぶ
しましょうか?」
「この子は足が強いですから」
「けれどまだまだありますよ」
「清ちゃん、どうする?
おんぶしてもらう?」
「僕、歩く」
いくら疲れていてもこんなときには、
長く一人っ子だった清は、
いつも母親のほうの味方をするに
決まっていた。
113-A
……さて、このお話はこれでおしまい、おや、あそこに小ねずみがちょろちょろと駆けていますね。誰でも捕まえたひとは、あれで大きな毛皮の頭巾を、自分でこしらえてごらんなさい――親離れ子離れできない、と話題に上ることがありますが、自立心は早くから育んでおいたほうがいいのかもしれません。
113-B
兄妹は継母にひどいことをされた。
しかし、継母は兄妹を売ったわけ
ではなかった。
「お兄ちゃん、お継母さんはわたしたちを
売ったりしていないのに、へんね?」
「……さあ、いまは密告が
流行っているからね。
誰かのうらみでも買ったんじゃないかな」
114-A
強いから奪って、弱いから奪われて、強いからいじめて、弱いからいじめられて、強いから従わせて、弱いから従って、強いから生きやすくて、弱いから生きにくくて――だけど、強いから幸せで弱いから不幸せなのだろうか? どういうことなんだろうなあ、いったい、強いとか弱いとかいうことは。
114-B
『ワンピース』のロロノア・ゾロの必殺技のひとつ。
『○○り』!!!
『○○』の部分が今回の答えです。
115
タイトルは関東の一地方を指す地域名です。明確な定義はありませんが、著者によれば、その範囲は現在の東京23区西部と立川以東の市部、埼玉県川越市以南の中南部、神奈川県川崎市北部のごく一部がその地域に含まれます。ツルゲーネフの短編小説が引用されています。トトロの森がある、らしいです。
116
押絵の人形に一目惚れした男が、押絵の世界に入ってしまいます。本やゲームのなかに入りたいと思ったことありませんか? そこで一生暮らしたいと。その世界の大好きなキャラクターたちは年をとりませんが、その世界に入った僕らは年老いていく。それはいったいどんな気持ちがするものなのでしょう?
117-A
都会のきれいな街並みは彼を圧迫し、田舎の自然は少しも彼の興味を引かなかった。彼は自分の生まれた町を愛した。そこは美しさとは無縁の町だった。だが路傍の花や水たまりに映る春の雲は、彼にいじらしい美を示した。大自然は脅威、無自然は悲劇。人工の文明に息づく緑、都市と自然の調和を思う。
117-B
母は体が弱く、ゆえに彼は母乳を与えてもらえず、牛乳で育ったことに劣等感を抱いていた。自分が与えられなかったものを、与えられて育ったほかの子供たちを羨んだ。――親はなんだって我が子に与えたい、だが経済状況や教育方針などによっても、それができない場合がある。いずれ彼も理解すると思う。
117-C
彼の家は貧しかった。下流階級の貧困ではない。貧しいのに体裁をつくろわねばならぬ中流階級の貧困だ。彼は体裁をつくろう両親の嘘と、小遣いのためにつく自分の嘘と、何より貧困を憎悪した。貧しいから嘘をつくのか? 物質的な貧しさは精神的な貧しさなのか? 貧しさに負けない。強い心がほしいと思う。
117-D
彼は教師を憎んだ。教育上の責任、ことに生徒を処罰する権利は教師を暴君にした。彼は教師に反発した。だから試験は高得点にもかかわらず、内申点がいつも全体の評価を下げた。教師は仕事である。教師も人間である。期待や反発は教師にも重い。教える者の姿勢、教わる者の姿勢。人を映す鏡を思う。
117-E
彼は本を愛した。本の与えてくれる知識や見識が彼を傲慢にした。ものを知らない同級生たちを彼は見下した。本があれば友だちはいらない。本の楽しさが彼をぼっちにした。書を捨てよ、町へ出よう。それから本屋に行って、本を買って帰ってこよう! ……違いました。たまには町に出て友だちと遊ぼう!
117-F
彼はぼっちだった。彼は友だちにやさしさを求めなかった。彼が求めるのは頭脳だった。だが結局のところ、才能の多少を問わず、彼に友だちをつくることはできなかった。あなたは友だちに何を求めますか? 友だちに何を求められたいですか? それとも何も求めないのが友だち? むずかしく思う。
118
タイトルとなっている言葉には二つの見方ができます。ひとつは女性の働き方改革など、女性の権利を男性の権利と同等にまで引き上げることであり、ひとつは男性専用車両やメンズデーなど、男性の権利を女性の権利と同等にまで引き上げることで、この作品においては後者のことが主張されています。
119
『〇〇〇な患者』。インフルエンザだと思っていたら肺結核でした。病気の早期発見は大事。体調に不審を感じたら病院へ。病気のときは不安で自暴自棄になりがちです。重病の場合はとくに。自暴自棄になっていつも看病してくれるお母さんさえも疎ましく思います。病気と闘う強い心を読書で養いませんか?
120
修善寺の温泉宿、夫婦で春の山歩き。小鼓のような桂川の瀬の音。桜の咲いた里の景色。ふわふわと。姉妹らしき二人連れの幼女が、若菜を摘んで歩くような、うっとり顔でやってくる。姉が二本、妹が一本。タンポポの花をすいと差し出す。
「どうもありがとう」
私はお礼を言って、二本の方を欲張った。
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