小説読書感想『蜘蛛の糸 芥川龍之介』カンダタとスパイダーマンとスパイバー

あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。
(「『狐人』の由来」と「初めまして」のご挨拶はこちら⇒狐人日記 その1 「皆もすなるブログといふものを…」&「『狐人』の由来」

今回は小説読書感想『蜘蛛の糸 芥川龍之介』です。

芥川龍之介 さんの『蜘蛛の糸』は、無料の電子書籍Amazon Kindle版で8ページ、文字数3700字ほど。よく小学生の読書感想文の題材などにもなるようですが、大人でも楽しめる短編小説です。サクッと読めます。未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

あらすじ

蜘蛛の糸お釈迦様が蓮池の下を見ています。
そこは罪人たちが苦しむ地獄です。

罪人の一人にカンダタという男がいました。
カンダタは生前一度だけ善行を行いました。

それは一匹の蜘蛛を殺さなかったこと。

お釈迦様はそのことを覚えていました。
カンダタのため蜘蛛の糸を下ろします。

カンダタは蜘蛛の糸をのぼり始めます。

一休みして下を見ると、他の罪人たちが自分の後からのぼってくるではありませんか。蜘蛛の糸は細く、自分一人の重みでも切れてしまいそうです。

カンダタは他の罪人たちに「下りろ、下りろ」と喚きます。

つぎの瞬間、蜘蛛の糸はぷつりと切れて、カンダタは再び地獄の底へ、真っ逆さまに落ちていくのでした。

かんそう(てかほぼ気になることメモ)

まずは、お釈迦様が蓮池を通して地獄の様子を覗いている姿に、とても興味を引かれてしまいました。小畑健 さんの漫画『DEATH NOTE(デスノート)』の死神が、死神界の窓から人間界を眺める様子を思い浮かべたからでしょうか。

仏教では、死後の世界は6つに分けられていて、これを六道というそうです。

天道、人道、阿修羅道、飢餓道、餓鬼道、地獄道。

六道と聞けば、やはり岸本斉史 さんの漫画『NARUTO ―ナルト―』のペイン六道を彷彿とさせられてしまいますが。

図で見ると、なるほど、確かにお釈迦様の住んでいる天道の真下に地獄道があります。

そして地獄は大きく8つに分けられます。

等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄、叫喚地獄、大叫喚地獄、焦熱地獄、大焦熱地獄、無間地獄。

順番に、落とされる罪人の罪の重さとそこで科される苦しみが増していきます。この地獄はさらに細かく136種に分けられて、その中に、『蜘蛛の糸』にも出てきた「血の池」や「針山」が含まれています。

お釈迦様が蜘蛛の糸を下ろしてやったちょうどそのとき、カンダタは血の池にいました。ちなみに「血の池地獄」でググったら、「別府地獄めぐり」がヒットしました(汗)。温泉の「血の池地獄」は気持ちよさそうですが、本当の「血の池」は、はたして。

針山は想像するだに痛そうですが、血の池で浮いてるのって苦しいの? という疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょうか。

血の池は「性」についての罪を犯した者が落ちる地獄です。芥川龍之介 さんの『蜘蛛の糸』では詳細な描写はなく、「浮いたり沈んだりしていた」と、なんだかあまり苦しくなさそうな感じですが、実際は鬼が見張っていて、泳いで岸に上がろうとしたり、浮いていたりする罪人を金棒で沈めるのだとか。

現実でも、溺れるのは相当苦しい亡くなり方だと聞きますから、苦しくなさそうだから、落ちるなら血の池地獄でお願いします――とは言えなさそうですね。

「朝の蜘蛛は縁起が良くて、夜の蜘蛛は縁起が悪い」というジンクスがあります。蜘蛛は晴れた日にしか網を張らないので、朝の蜘蛛を見つけるとその日が天気の良い晴れやかな一日になる、また夜暗い所に網を張るというのは、泥棒がやってくる前兆をイメージさせて不吉なのだとか。

芥川龍之介 さんの『蜘蛛の糸』でも、救いの手として蜘蛛が出てくる辺り、このジンクスに通じるところがありますよね。泥棒がやってくる前兆という部分も、カンダタが殺人や放火といった様々な罪を犯した大泥棒なので、やはり通じるものがあります。

ドラゴンクエスト ソフビモンスター 042 カンダタカンダタと聞けばやはり『ドラクエ3』を思い浮かべてしまうわけなのですが(確か前にもこんなことが……ひょっとして僕はカンダタ好きなのかなあ⇒随筆読書感想『武士道の山 新渡戸稲造』必読のビジネス書・自己啓発本!)。

しかしてしかし実際の蜘蛛は意外と益虫なのだそう。その理由は、蚊やダニ、ハエといった害虫を餌として捕食してくれるから。

縁起の良し悪しは関係なく、小さな命でも、やはり大切にしたほうが良さそうですね。

とはいえ、蜘蛛嫌いの人は思わず――ということもありそうですが。

ちなみに「蛇と蜘蛛どっちが苦手?」といった質問がありますよね。ほとんどの二択同様極論気味の感は否めませんが。「私は蛞蝓だなあ」という人もきっといるんじゃないかなあ……(蜘蛛が蛙なら三すくみ完成?)。

蜘蛛

蛇この「蛇と蜘蛛どっちが苦手」という質問で性格診断ができるのだとか。

 

 

・蛇嫌いのあなたは、蛇のように過剰に「絡みつく(ベタベタする)」のが苦手。逆に言えば適度に甘えられる、甘え上手な愛されキャラ。恋愛やイベントなどに積極的傾向あり。

・蜘蛛嫌いのあなたは、蜘蛛のように予測不能な動きと足の多さが理解できない。ゆえに固定観念や行動規範に忠実な常識人。恋愛については合理的で自立した関係を望みます。

・どっちも嫌いなあなたは、保守的な性格。臆病なので、仲良くなるまでに時間がかかりますが、一度打ち解けるとオープンになり、そのギャップに驚かれてしまうかも。

といった感じ。余談でした。

アメイジング・スパイダーマン2 (吹替版)ところで(余談は続くよ……どこまで?、も)、蜘蛛の糸といえばスパイダーマンを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか(どうでしょうか)? ニューヨークの街を縦横無尽に飛び回るウェブスイング! 暴走する列車を蜘蛛の糸で止めたこともありましたね(アメイジングじゃない方のスパイダーマン2)。

蜘蛛の糸は鋼鉄の5倍の強度があるともいわれています。実際、スパイダーマンの蜘蛛の糸は列車を止めことができるのだと証明した研究もあります。

蜘蛛の糸凄し! という話なのですが。

じつは日本の山形県にあるベンチャー企業(Spiber株式会社――スパイバー――)で、蜘蛛の糸の実用化が進んでいるのだとか。人工合成クモ糸の開発は、あのNASAでさえも断念しているのだと聞けば、なんとなくその凄さが伝わってきます。2015年9月には、この人工合成クモ糸(QMONOS)で作られたアウトドアジャケットが発表されました。蜘蛛の糸というのは、上のスパイダーマンの例のごとく丈夫で、しかもタンパク質でできていてエコ。現在の石油化学繊維にとって代わる素材となれば、環境問題のみならず、石油枯渇問題の対策としても期待できそうです。

そんな蜘蛛の糸は創作のモチーフにいろいろと便利そうですねえ……、冨樫義博 さんの漫画『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』のパイク(キメラアント)とか(あと幻影旅団も「蜘蛛(クモ)」ですね)。あと、貴家悠 さん原作、橘賢一 さん作画の漫画『テラフォーマーズ』の主人公、膝丸燈が糸を使っていましたが――あれは蛾の糸なのでしたっけ?

……ともかく、お釈迦様の下ろした蜘蛛の糸の強度はどうだったんでしょうか?

カンダタは一人だけ助かろうとしたから、糸が切れてしまったと解釈出来て、これが芥川龍之介 さんの『蜘蛛の糸』から得られる教訓だったように思います。つまり、蜘蛛の糸が切れてしまったのは、糸の強度の問題ではなくて、人間のエゴイズムの問題でした。

(エゴイズムをテーマとした芥川龍之介さんの他の小説)
小説読書感想『羅生門 芥川龍之介』テストに出るはエゴ!黒獣は出ない?
小説読書感想『鼻 芥川龍之介』世界に一つだけの鼻? 内供とウソップの鼻?

すなわち「みんなが困っているとき一人だけ助かるようなことをしてはいけないよ」みたいな。

口で言うのは簡単ですが、極限状態に置かれたとき、これができるだろうかと考えると、とても難しいように思います。そして『蜘蛛の糸』の最後の一段落にそのことが示されているように思います。

しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんな事には頓着とんじゃく致しません。その玉のような白い花は、御釈迦様の御足おみあしのまわりに、ゆらゆらうてなを動かして、そのまん中にある金色のずいからは、何とも云えないい匂が、絶間たえまなくあたりへあふれて居ります。極楽ももうひるに近くなったのでございましょう。

カンダタのように、自分一人だけが助かろうとする人間は、世の中にたくさんいる。だから、お釈迦様の見ていた光景、カンダタが一人だけ助かろうとした行いは日常茶飯事であり、そのことを、極楽の変わらない日常と対比して表現しているのだと感じました。

たとえば、自分が空腹のとき、別の空腹な人に、自分が持っている食料を分け与えてあげることができるでしょうか? 現代の日本では、東日本大震災のような非常事態でない限り、この状況は想像しにくいですかねえ……。では、あるいはもっと日常的に、機嫌が悪いときに話しかけられたりして、やさしい対応ができるかどうか、とか? う~ん……なかなかいい例えが思いつきません。

いずれにせよ、自分が苦しいときほど、誰かに優しくできる人間になりたいと思いますが、現実にそれができているのかと聞かれれば……(言わずもがな)。

月の影 影の海〈上〉―十二国記 (新潮文庫)月の影 影の海〈下〉―十二国記 (新潮文庫)同じようなことを考えさせられた小説に、小野不由美 さんの『月の影 影の海』(十二国記)があります(⇒小説読書感想『月の影 影の海』(十二国記)もっと早くに読んでいたら……)。よかったら読んでみてください。

……今回、読書感想というよりは、気になることのメモになってしまいましたが――しかしこれはこれで……。(いいのか?)

そんなこんなで以上、小説読書感想『蜘蛛の糸 芥川龍之介』でした。

ブログに関連した漫画

・死神が死神界の窓から人間界を見ているように、お釈迦様が蓮池から地獄を見てる? 小畑健 さんの漫画『DEATH NOTE(デスノート)』

・蜘蛛の糸を使った「愛の放射線(ラブシャワー)」
冨樫義博 さんの漫画『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』

・膝丸燈の糸は蜘蛛の糸じゃなくてオオミノガの糸
貴家悠 さん原作、橘賢一 さん作画の漫画『テラフォーマーズ』

・そういえば今回全然話題にしてないけれど……
文豪、芥川龍之介 さんが活躍する『文豪ストレイドッグス』

漫画版

小説版

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

それでは今日はこの辺で。

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