堕落論/坂口安吾=狐人的感想「堕落論は堕落論じゃないと思う僕は堕落している?」

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狐人的あいさつ(まず、変わらずの)

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

堕落論 アニメカバー版<「文豪ストレイドッグス」×角川文庫コラボアニメカバー>

今回は『堕落論/坂口安吾』です。

坂口安吾 さんの『堕落論』は、文字数8000字ほど。『堕落論』って堕落論じゃなくない? ……と思った僕はすでに堕落している? 未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ(てか、内容の要約)

(さて『堕落論』と聞いて、どのようなお話を想像するでしょうか? 坂口安吾 さんが「堕落、けしからん!」とお説教を繰り広げるのかと思いきや、意外や意外、「生きよ堕ちよ」と堕落を推奨しているではありませんか。では以下に内容の要点を書き出してみたいと思います。お付き合いいただけましたら幸いです)

終戦で世の中は一変した。花と散った特攻隊――彼らと同じ歳の若者たちは闇屋となり、亡夫の位牌いはいぬかずいた未亡人たちも、新たな恋の予感に胸をときめかせる……、しかしこれが人間の本来の姿である。

すなわち、敗戦で人間が変わってしまったのではなくて、これまでの世相が上っ面だったのだ。

例えば、武士道。これは日本人の心の弱さに対する防壁だった。仇討ちひとつとってみても、元来日本人はどれほど憎くとも、その感情は長続きせず、昨日の敵は今日の友、という考えを持って、敵との和解は日常茶飯事だった。

例えば、天皇制。これは大義名分、ただ政治的な理由で存続しているだけであって、また天皇を崇めることで政治家は自身の威厳を示し、一般人でも気づかずに同じようなことをやっている。

「私」は血を見るのが嫌いな臆病者であるが、戦争の偉大な破壊が好きだった。偉大な破壊の下に堕落はなかった。都会の大邸宅が灰塵と化し、焼け出された上品な父娘が、たったひとつのトランクをはさんで、濠端の草の上に座っている姿は、平和なピクニックと変わりない。焼野原を歩く、虚脱し、放心した罹災者りさいしゃたちの行進は、素直な運命の子供だった。十六、七の娘たちには、悲惨ななかでも笑顔があった。

「私」は戦きながらも、その美しさに見惚れた。そこでの「私」は考える必要もなく、美しいものがあるばかりで、人間はなかった。事実、戦争中の日本に泥棒はなく、おいはぎもなく、夜は鍵もかけずに眠っていた。そこは嘘のような理想郷だった。

しかしそれは人間の真実の美しさではない。

古代ギリシャに確立された人間性に、今日どれだけの変化があっただろうか。人間は変わっていない。戦争の凄まじい運命と破壊は人間を変えたりできない。戦争が終わり、若者は闇屋となり、未亡人は新たな恋をする――これは人間が変わったわけではなく、人間へ戻ってきただけなのだ。

人間は堕落する。戦争に負けたから堕落するのではなく、人間だからこそ堕落する。しかし人間はずっと堕落し続けることはない。人間は脆く、愚かで、弱いからこそ、武士道を編み出し、天皇を担ぎ出さずにはいられない。ただしそれは誰かに与えられるものであってはいけない。自分自身の武士道、自分自身の天皇を見出し、自分自身を救うためには、正しく堕落する必要があるのだ。

明日へ

 

狐人的読書感想(解説になってる?)

さて、いかがでしたでしょうか。

「これべつに堕落論じゃなくない?」
――と思ったのは、すでに堕落している僕だけ?

正直、一読しただけでは、あまりよく意味が理解できませんでした。

[まとめ買い] ONE PIECE モノクロ版(ジャンプコミックスDIGITAL)(1-50)分かったところといえば、武士道の仇討ち、日本人の憎しみという感情が長続きせず、すぐに敵と仲良くなってしまう――「昨日の敵は今日の友」というところは、少年漫画の王道パターンとして、すんなり受け入れられたくらい。『ドラゴンボール』、『ワンピース』、『ナルト』、『ジョジョ』……、いくらでも思い浮かべることができそうです。

坂口安吾 さんの『堕落論』は、終戦後の人々が明日へ向かって一歩を踏み出すための、道しるべとなるべく書かれたものだそうで、戦時、そして終戦後の当時を知らなければ、現代人にはなかなか共感しにくいお話なのかなあ、と愚考した次第(僕の学が足りないだけかもしれませんが)。

「欲しがりません勝つまでは」
――という戦争中のスローガンは、(学の足りない)僕でも聞いたことがありますが、第二次世界大戦中、戦争に否定的だったり、非協力的だったりすると、「非国民」と呼ばれて迫害された、というのは有名な話ですよね。

「にっくき敵をやっつけろ! 天皇の命令は絶対!」
――『堕落論』でいっている「武士道」や「天皇制」は、その精神が戦争の道具として利用されていた、ということを言っているのかなあ、と考えました。

敗戦によって日本人は、今まで信じてきたこれらの価値観、倫理観を改める必要に迫られたわけですが、これに当時のモラリストが異議を唱えていました――すなわち、これら価値観の転換を「人心の堕落」と非難したのです。事実、当時「闇米は食べない」として餓えた裁判官の方(山口良忠判事)がいらっしゃいます(旧体制の道徳を守ることを、命よりも大事に思っていた方が、いらっしゃったということ)。

(このパラダイムシフトを「堕落」と捉える人は、現在では少ないのではないでしょうか。戦争中の道徳を捨てることは、今ではそもそも「堕落」とはいえないわけで――ここに、僕が「『堕落論』って堕落論じゃなくない?」と思った理由がありました……、決して僕がすでに堕落しているからではありませんでした! ……いえ、『堕落論』的にも人間的にも、僕が堕落していると断ずるに些かの躊躇も持たぬ! ……いや「人間的にも」のほうには躊躇を持って! というわけなのですが……)

そこに待ったをかけたのが、坂口安吾 さんの『堕落論』。およそ政府によって示される世の中の価値観や倫理観にただ従うのではなくて、それを自分自身で考えて行動しようよ、というのが、大筋の主張だと理解しました。

この主張は、実際にできているかどうかはともかくとして、現在では当たり前の考えになっていますよね。ここに、現代人(僕だけ?)には理解が難しい理由があるように思いました。

ひとつの例として「欲しがりません勝つまでは」から「欲しいものは欲しいと言う」、この転換を『堕落論』では「堕落」としていて、旧体制のシステムから脱却することを、「生きよ堕ちよ」と肯定しているわけです。上の判事さんのように、欲しがらなければ命にかかわるのだから、この論調には頷かざるを得ないのではないでしょうか。

ダンボこうして考えてみると、現代に生きる一人として、僕にはストンと腑に落ちる論評ですが、前述のとおり、「堕落」を否定するモラリストがいたり、これまで信じていたものを捨てて新しい一歩を踏み出さなければならなかった、終戦直後で右も左もわからない人々にとっては、とても受け入れるのが難しいことだったのではないかと想像できます。

武士道や天皇制にも美徳があるわけですが(だからこそ戦争の道具として利用されたところがあるわけですが)、そこには一切触れず、それらを完全否定することで、堕落すること――つまり明日への新しい一歩を踏み出す指標にしようといった坂口安吾 さんの『堕落論』は、ちょっと過激な論調のようにも感じましたが、そのくらいでなければ敗戦直後の人々の心を動かすことはできなかったのかもしれない、と考えると、さすが文豪、坂口安吾 さんと思わず唸らされてしまいますが、どうでしょう?

最後に、『堕落論』に書かれていることをざっくりまとめてみると「自分で考え自分で行動しよう!」ということになるでしょうか――現在では当たり前の考えになっている、と前述してしまいましたが、「和」を重んじる、とかく集団に流されがちな日本人としては、結構耳に痛い方もいらっしゃるかもしれませんね(かくいう僕の耳に痛い)。

戦後のみならず、現代にも充分つうじる評論! 読書感想文も書きやすそうな評論! 読むなら『文豪ストレイドッグス』、『文豪とアルケミスト』に代表される「文豪ブーム」の訪れを感じられる今がチャンス?

――ということで、ぜひ!

狐人的読書メモ(気になったこと!)

狐面今回は比較的うまくまとめることができたでしょうか……、漫画の話に絡めることもできたし(そこ?)、ついごちゃごちゃ書きたくなってしまうのですが、論点はひとつにした方がまとめやすいのかなあ……(要約を省き過ぎた感は否めませんが……)、しかし内容は、坂口安吾 さんの『堕落論』のようにセンセーショナルなものにはならず、ありがちなものとなってしまった感が……、結局反省。

・『堕落論/坂口安吾』の概要

終戦――1945年(昭和20年)8月15日――間もない1946年(昭和21年)4月1日に雑誌『新潮』にて発表された随筆・評論。続編、『続堕落論』がある。

・武士道

ブシドーはいまや外国の方も知っている日本独自の精神。
(武士道の入門書⇒随筆読書感想『武士道の山 新渡戸稲造』必読のビジネス書・自己啓発本!)

・「欲しがりません勝つまでは」

戦争中のこの有名なスローガン、じつは11歳の少女(三宅阿幾子さん)が考えたと知ってびっくり! しかし真実は、三宅さんのお父さんが考えたそうでがっかり……。

・パラダイムシフト

ある時代には当たり前のこととされていた認識や思想、価値観などが革命的あるいは劇的に変化すること。パラダイムチェンジとも。
(意味が曖昧なのに、妙に気に入ってしまう言葉ってありますか? 狐人的には、これと「ゲシュタルト崩壊」がそう)

以上、『堕落論/坂口安吾』の読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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