張紅倫/新美南吉=人と人は手をとりあえるはずなのに。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

張紅倫-新美南吉-イメージ

今回は『張紅倫ちょうこうりん/新美南吉』です。

文字数4500字ほどの童話。
狐人的読書時間は約10分。

井戸に落ちた日本人少佐。それを助けた心優しき中国人少年。二人は束の間心通わせ、別れ、十年後に再会する。が、二人が喜びを分かち合うことはなかった。戦争や差別はよくないこと。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

1905年、日露戦争最後の会戦である奉天会戦。部隊の大隊長青木少佐は夜、歩哨の見回り中に水の枯れた古井戸に落ちてしまう。

翌日の昼頃、そんな少佐を助けてくれたのは近くの村に住む張父子だった。息子の張紅倫ちょうこうりんは十三、四の少年で、少佐には内地で待っている同じ年頃の息子がいた。

「わたしも日本へいってみたい、そして、あなたのお子さんとお友だちになりたい」と張紅倫は言った。そんな話をするたびに、青木少佐は日本や息子のことを思い浮かべた。

張親子のほったて小屋に療養して、四、五日経ったある夕方、父親の張魚凱ちょうぎょがいが帰ってきて言った。「こまったことになりました。村のやつらが、あなたをロシア兵に売ろうといいます。早くここをにげてください」

張少年はさびしそうに少佐を見つめた。少佐は懐中時計を少年の手に握らせその場をあとにした。

戦争が終わり、青木少佐も内地に帰り、退役して民間の会社に就職し、十年後にはその会社の上役になっていた。

ある日、会社の受付に中国人の青年が万年筆を売りにきた。少佐は中国人青年から万年筆を買ってやり、お金を支払った。

青年は去り際にポケットから懐中時計を取り出し時間を確認した。それは青木少佐が張紅倫に渡した時計に似ていた。

「きみ、張紅倫というんじゃないかい」と少佐は青年に尋ねた。青年は驚いた様子だったが、すぐにそれを否定した。自分は張紅倫ではない、時計はひとから買ったものだと。そして二人は別れた。

翌日、会社へ少佐宛ての無名の手紙が届いた。昨日の青年からだった。青年は紅倫だった。しかしあの場で名を明かせば、青木少佐が軍人時代に中国人に助けられたことが知られてしまう。それは少佐の名誉にかかわると思い、彼はあえてうそをついたのだった。紅倫は明日中国へ帰ると手紙の最後に綴っていた。

狐人的読書感想

何はともあれ「戦争はよくない」と思いました。

当時の日本では民族差別や階級差別が普通にあったということなんでしょうね。中国人である紅倫は日本にきてそのことを肌身に染みて感じていた、だから青木少佐との再会を喜び合うことをよしとはせず、少佐を思いやってうそを言ったわけです。

ひょっとして、すでに退役していた青木少佐はそんなこと気にしなかったかもしれません(あるいは人柄的に気にしなかったかもしれません)。

しかし差別というものは、当然ながらする側よりもされる側のほうがより実感されるわけであって、紅倫がそのことをより深刻に捉えていたとしても無理からぬことだという気がします。

国や民族や立場は違えど、人と人とは根本的な部分で通じあったりわかりあったりできるのに、その喜びを戦争などによる社会情勢のため表に出せないというのは、やっぱり悲しいことだと感じます。

そんなわけで「戦争はよくない」と思ったわけです。

ところで、あんまり関係ないかとは思うんですけど、戦争中に井戸に落ちる話ってどこかで聞いたことあるような気がしたんですが、村上春樹さんの『ねじまき鳥クロニクル』ですかね、たぶん。たしか間宮中尉は井戸に落ちたわけではなくて井戸に落とされたのだと記憶していますが。戦争中に井戸に落ちることって、実際に結構あったんですかね?

そんなことが気になった……いえ、戦争はよくないと思った、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

人と人は手をとりあえるはずなのに。

狐人的読書メモ

・状況によっては他人を生かすために自分を抹消しなければならない。

・『張紅倫/新美南吉』の概要

1931年(昭和6年)『赤い鳥』にて初出。原型として『古井戸に落ちた少佐』という童話を十四歳頃に書き上げていたことが南吉の日記より推定される。ヒューマニズム童話、人類愛、人間愛、あるいは『ごん狐』などと同様の生存所属の異なるもの同士の心の交流。

以上、『張紅倫/新美南吉』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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