狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『桜桃/太宰治』です。
文字数5000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約13分。
子供は大事にされすぎている? 親だって自分の時間がほしい? 子供のためにすべてを犠牲にはできない? 親にゆとりがないと子供も不幸になる? 子供最優先の風潮? 子供より親が大事!と思いたい?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
主人公は小説家をしている父。心が苦しくても、家庭でも人と会うときでも冗談を言って場を取り繕う。心が悲しくても、作品を明るくしようと努めている。しかし一人になると命を絶ちたくなるほど鬱々とする。
母である妻との間に三人の子供。長女は七歳、長男は四歳、次女は一歳。父母はそろって下男下女のように子育てに忙しい。長女も次女も人並みに育っているが、長男だけは発育が遅く、障害があるかもと内心で恐れている。
長男のこと、小説を書く苦痛から逃れたいと酒を飲む。
家族での夏の夕食は大混乱で、父は母に「お鼻に一番汗をおかきになるようね」と指摘され、「それじゃ、お前はどこだ」とやり返す。母は「この、お乳とお乳のあいだに、……涙の谷、……」と返し、夫婦げんかがはじまる。
夫婦げんかといっても手荒なことも口論もしない。ただ皮肉を混ぜた言葉を一言二言やりとりするだけ。最後に父は黙し、いたたまれなくなり、仕事部屋に出かけると言って、飲みに出る。
飲み屋のおかみが桜桃を出してくれる。子供たちにはぜいたくなものを食べさせない。だから桜桃など見たこともないかもしれない。子供より親が大事、と思いたい。子供よりも、その親のほうが弱いのだ。父は桜桃を極めてまずそうに食べて種を吐き、心の中で虚勢みたいに呟く。子供よりも親が大事。
狐人的読書感想
「子供よりも親が大事」という言葉が印象に残ります。
親になる人は「自分よりも子供が大事」という覚悟を持って子供を生み育てていて、子供のためには何もかも犠牲にできるのかと思っていたのですが、当然ながらそういう人ばかりではないんですよね。
子供はかわいいしもちろん大事だけど、自分の時間がほしいし自分を大事にしたい、という人もけっこういるみたいです。
たしかに「親に自己犠牲を押しつけようとしている」ような空気をたまに感じることはあるんですよね。いまの子供は大切にされすぎている、みたいな?
あまり「子供が最優先」と言われ過ぎる社会では子育てするのも大変だろうなって思うことがあるわけです。
金銭的にも精神的にも親にゆとりがないと結局はネグレクトみたいなことになってしまい、子供を不幸にしてしまうわけですものね。
なんか、そういうプレッシャーが子供を作りにくくしているのかな、って気もします。
安定しない非正規雇用が増えて、給料も安い――だから子供をちゃんと育てられるか不安で、子作りには消極的になってしまう、みたいな?
少子高齢化のことを考えるのならばそれはやっぱり問題ではあるのでしょうが、しかし一概に悪いことなんだろうかという疑問も持ちます。
子供の絶対数が減って、しかし不幸になる子供も減っているのであれば、それは悪いばかりのことでもないのかな的な。
(とはいえ実際不幸な子供が減っているのかどうかはわかりませんが)
子供の側からしたら「覚悟がないんなら生まないでほしかったな」と思うこともあるかもしれませんね。
芥川龍之介さんの『河童』という作品で、河童は出産のとき子供に生まれてきたいかどうかを確認してから生むといった話がありましたが、それっていいなと一瞬思ったんですよね。
しかし、たとえばそのときは親がお金持ちで、自分は幸せになれそうだから生まれたいと言っても、ひょっとしたら生まれたあとで親が破産するかもしれず、やっぱり生まれてくるんじゃなかった――ということになるかもしれませんし。
結局のところ生まれてきて幸せか否かなんて、生まれてみなければわからないのかなと思い直したところです。
お金があれば子供は飢えたりせず、親も精神的なゆとりを持てて、幸せになれるような気がしますが、しかしお金があっても客観的にも本人的にもあまり幸せじゃない子供だっているのでしょうし……。
そんなわけで「子供より親が大事、と思いたい」という気持ちで子育てしてもいいのかもしれないと思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
子供より親が大事!と思いたい?
狐人的読書メモ
・とはいえ子供は大事にされたいだろうけど。
・『桜桃/太宰治』の概要
1948年(昭和23年)『世界』にて初出。太宰治の晩年の作品で傑作の呼び声も高い。太宰治の命日を指す「桜桃忌」の由来として有名な作品。実際の太宰治の家族がモデルとなっている。ちなみに桜桃とは「さくらんぼ」のこと。
以上、『桜桃/太宰治』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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