狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『熊/新美南吉』です。
文字130字ほどの詩。
狐人的読書時間は約1分。
月夜、遠い声、冷たい檻、望郷の熊。切ない…だけどその思いは人間のエゴか? 動物にも感情はあるか? 動物を飼うのは残酷か? ついにその答えが…? ついでに熊の肝臓を食べると人間は…?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
(今回は全文です)
『熊/新美南吉』
熊は月夜に声きいた。
どこか遠くでよんでいた。
熊はむくりと起きて来た。
檻の鉄棒ひえていた。熊は耳をばすましてた。
アイヌのような声だった。熊は故郷を思ってた。
落葉松林を思ってた。熊はおおんとほえてみた。
どこか遠くで、
こだました。
狐人的読書感想
短い詩ですが、たしかな物語がありますよね。こういう作品は、厳密にはなんていうんでしょうねぇ……物語詩?
ともあれ切ないお話です。
熊の望郷の思いが、ひしひしと伝わってくるようですが、しかしこれ、人間側の勝手な解釈であって、実際に熊が望郷の思いを抱いているのか、誰にもわかりませんよね。
「動物にも感情はあるのか?」というようなことは昔から言われてきていて、かつては「動物に感情はない」と考えられてきましたが、最近では「動物にも感情がある」ことがわかってきています。
ただし、動物が人間と同じように感情を抱くのか――たとえば動物も愛情を感じるのか、という点については、いまのところ否定的な考えが主流のようです。
ある実験では、犬に「エサをもらえる合図」と「飼い主に褒めてもらえる合図」を覚えさせ、どちらにより多く反応するかを試してみたところ、やはり「餌をもらえる合図」のほうにより多く反応したといいます。
飼い主が他の犬や、あるいは人間の子どもを相手にしているとき、愛犬はそれに嫉妬するような行動を起こすことがありますが、これは群れ社会でボスや他の仲間とのつながりを守ろうとする本能から生じているのだという話もあります。
そういう話を聞くと、たとえ動物に感情があっても、やっぱり人間とはどこか違うようにも思えるのですが、しかし人間と同じようにも感じるんですよね。
人間だって、エサをもらえるの(お金や物)と褒めてもらえるの(愛情)とでは、エサを優先することのほうが多いような気がしますし、これはそのときの状況(空腹状態や愛情の飢えなど)によっても、かなり変わってきますよね?
人間が嫉妬を感じるのだって、友達や恋人や家族など、自分にとって好ましい相手、都合がいい相手、すなわち「生きるのに有益な相手を他者に取られたくない」という本能から発しているとも考えられます。
そんなふうに考えてみると、人間と動物の感情というものは案外一緒なのかもしれず、となれば、人間のエゴだと感じられる動物への感情も、意外と動物の気持ちに寄り添ったものなのかもしれないなぁ……、とか、やはりエゴイスティックに考えてしまうんですよね。
人間と動物が同じ感情機能をもっていて、人間が動物と一緒にいることで幸せを感じるならば、動物も人間と一緒にいることで同じ幸せを感じていて、両者に感情的認識の違いはないのかもしれないなぁ、とか、想像してみます。
これは親と子どもの関係に似ていて、親と子どもであれば言葉を使ってやりとりができ、相手が本当に嬉しいのか悲しいのか、幸せなのか不幸なのか、聞いて確認することができますが、動物との間では、それができないのがもどかしいところです。
とはいえ、人間も動物も、「自分の知らない幸福」と「自分の知ってる幸福」と、どちらが幸せかは判断することさえできません。
子どもの場合、よその家と自分の家と、どちらが幸せかは判断が難しいでしょうし、人間に飼われている動物も、人間の飼育環境と野生環境とではどちらで生きるのが幸せなのか、やっぱり判断できません。
生まれるところを選べないというのは、人間も動物も同じことで、では生物は、どちらもそこにある環境の中で、手に入る幸せで満足するしかないわけです。
よく「人間がペットを飼うのは残酷か?」みたいな話がありますが、たしかに、人間に飼われる世界は動物にとって残酷かもしれませんが、しかし、世界はどんな世界だって残酷なものです。
結局、人間も動物も、残酷な世界でエゴイスティックに生きるしかなく、それを肯定するしかない気がした、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
動物に感情はあるのか? 動物を飼うのは残酷か?
狐人的読書メモ
・熊雑学、世界に熊は8種類しかいない。
・熊雑学、テディベアの呼称はルーズベルトから。
・熊雑学、熊の肝臓を食べると人間は命を落とす。
・『熊/新美南吉』の概要
1932年(昭和7年)8月、『赤い鳥』にて初出。熊の望郷の念は人間のエゴでしかないのか?
以上、『熊/新美南吉』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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