女坑主/夢野久作=金持ちも貧乏人も、生きてる意味が見出せない?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

女坑主-夢野久作-イメージ

今回は『女坑主/夢野久作』です。

文字数13000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約38分。

国粋主義や反共主義がよくわからなかった。
虚無主義についてもよくわからなかった。
持つ者も持たざる者も等しく虚無主義になり得る。
そこがなんだか不思議な気がした。
虚無的読書感想。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

新張にいばり炭坑の女坑主、新張眉香子みかこは、「エチオピアに行くからダイナマイトを用立ててほしい」、という青年に対し、軽く朗らかに笑って、その無茶な要求を引き受けた。

眉香子は「本当にエチオピアへ行くつもりなのか?」と青年に尋ねる。青年は問われるままに事情を話す。

今度のエチオピアとイタリアの戦争は、エチオピアの利権を掴みたいイギリスが、双方を巧みに扇動して始めさせたものだったが、このまま黙って見過ごすわけにはいかず、どうにかイギリスとイタリアの戦争にまで発展させたいのだという。

青年と十二人の同志たちは、じつはエジプトのスエズへ行き、半数がイギリス海軍の軍艦を道連れに自爆し、残りの半数がスエズ運河のダムを爆破して、それをイタリアの仕業に見せかけ、イギリスとイタリアの間に戦争を起こさせるつもりだという。

眉香子は国のために命を投げ出そうという青年の弁に感動し、電話へ手を伸ばすと、二箱のダイナマイトを直ちに用意するよう指示を出した。

礼を言ってすぐ立ち去ろうとする青年を、眉香子は強引に引き止めた。そして豪華な食事と酒で青年をもてなした。

眉香子は「青年の命が惜しい」と言った。青年は命を捨てることなど恐れてはいない様子だった。眉香子は青年に「命を捨てる気をなくさせてあげる。イギリスとイタリアの戦争を、あたしが食い止めてみせてあげる」と続けた。

眉香子は警察と通じていた。眉香子が青年を引き止めたのは、警察が青年たちを捕えるための時間稼ぎだった。△産党の九州執行委員長、維倉いくら門太郎は仲間の待つはずの旅館に戻ったところを、警察に取り押さえられた。

眉香子は誇らかに笑った。

狐人的読書感想

『女坑主』は夢野久作さんの晩年の小説だそうです。夢野久作さんの晩年の小説には国粋主義・反共主義色の強いものが多いらしく、どうやら本作もそのような作品だそうですが、知識が薄いためか、あまり大した感想を持てませんでした。

女坑主と共産主義者の青年が、双方騙し合いの激しい心理戦を繰り広げたりすることもなく、最後あっさりと青年が捕まってしまいましたが、その辺が反共主義の結果なんですかねえ、……よくわからず。

なので、作品のテーマに沿った感想が、今回は書けそうにないのですが(いつも?)、気になったことをちょっとだけ書きとめておきたいと思います。

虚無主義ということについてです。

女坑主も青年も、二人とも虚無主義者みたいなんですよね――人生に意味なんてないんだから、いろいろ考えて生きていたってしょうがないよね、みたいな。

とはいえ。

女坑主と青年、二人の身の上はまったく違ったもので、簡単にいうとお金持ちと(たぶん)貧乏人だと思われます。

お金持ちでも貧乏人でも、等しく虚無主義になり得るところに、不思議な感じを受けました。

僕にとって、貧乏人が虚無主義になるというのは、わかりやすい気がします。

働いても給料はなかなか上がらず、税金と物価はどんどん上がっていき、雇用は非正規のものばかりが目立つようになり、長く安定して働ける環境、退職金、年金の保証はどんどん期待薄になっていって――なんとな~く「生きてる意味が見いだせない」ってなるのはすごくよく共感できるように思うのです(なんだかプロレタリア的な視点になっていますが……)。

しかしながら、お金持ちがなる虚無主義というものは、想像することはできるのですが、実感はしにくいんですよね。

おそらくは、なんでも自由にできて、なんでも手に入って、だからいろいろな物事がなんだかむなしくなってきて――みたいなことだとは思うのですが、……う~ん、やっぱり共感は難しく感じてしまいます(僕がお金持ちじゃないから?)。

持っていても、持っていなくても、人間はそれぞれにそれぞれの不満を抱えてしまうわけで、決して満足することのない欲深い生き物なのだと、再認識させられます。

僕はあまり贅沢をしたいとか、いいものを食べたいとか、何でも欲しがったり、旅行に行きたがったり――ということはないという気がするのですが、欲がないのもひとつ虚無的だといえそうなんですよね。

欲望は一概に悪いものではなくて、それは向上心につながるものだとも思うのですが、欲望の行きつく果てがやはり虚無なのだとすれば、人間とは救いがたい生き物だと感じてしまいます。

どうして、他の生き物みたいに生きるためだけに生きられなくなったんでしょうねえ……、本当に人間は進化の先に立っているのか、疑問に思うことがあります。

……なんか、内容が虚無的な読書感想になってしまいました、というのが今回のオチです。

読書感想まとめ

読書感想の内容が虚無的。

狐人的読書メモ

「恋愛なんて……恋愛なんて……ハハハ。恋愛なんて何でもないじゃないですか。ほんの一時の欲望じゃないですか。永遠の愛なんてものは男と女とが都合によって……お互いに許し合いましょうね……といった口約束みたいなもんじゃないですか。お金のかからない遊蕩ゆうとうじゃないですか」

芥川龍之介とか、同様のことを言っている文豪って、けっこう多いという気が、ふと、した(それだけ)。

・『女坑主/夢野久作』の概要

1936年(昭和11年)『週刊朝日』にて初出。夢野久作の晩年作、遺作。国粋主義・反共主義色が強いのが晩年作の特徴だといわれている。

以上、『女坑主/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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