キチガイ地獄/夢野久作=全ての謎がわかるかな?ドラマの展開が面白い!

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

キチガイ地獄-夢野久作-イメージ

今回は『キチガイ地獄/夢野久作』です。

文字数25000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約64分。

ある狂人がさ、檻の中で、精神病院の院長と思しき人物に語るんだけど、彼は人の命を奪った前科者、脱獄の大罪人、二重結婚の人非人、炭坑王の血統の秘密を知ってて、その正体が実は…。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

男は檻の中で、精神病院の院長と思しき人物に語り出す。やっと回復したから、退院させてほしい――男は北海道の炭坑王、谷山家の養嗣子ようしし、谷山秀麿ひでまろを名乗った。

大正X年の夏の初め、男は石狩川から流れてきたところを、谷山家の別荘に滞在していた小樽タイムスの記者Aという者に助けられた。髪やヒゲは生やしっぱなし、原始人のように丸裸のその男は、頭を強く打って記憶喪失になっていた。

Aは男になぜか親切だった。身分が不明なのは不便だと思ったのか、Aは男に偽りの身分を指導し、男は言われるがまま自身の過去をカムフラージュした。

それから約二週間が経った頃、谷山龍代たつよが別荘にやってくる。龍代は両親をなくし、兄弟もなく、二十三歳で谷山家の当主となり、社交界では女王と呼ばれていた。龍代は原始人から立派な青年に生まれ変わった男に一目惚れする。Aを仲介人として、男はすぐに龍代と結婚、谷山家の養子に納まる。

その頃の谷山家の財政は、炭界不況などの影響で、じつは相当ひっ迫していた。谷山家当主となった男は、自分でも驚くほどの才能を発揮し、新たににしんの倉庫業を成功させて谷山家を救う。長男も生まれ、幸せが続くかに思えたそんな矢先、突然妻の龍代が遺書を残してこの世を去る。

遺書によれば、谷山家の血統にはある忌むべき病気が遺伝しており、容易に他家とは婚姻できない。そこにどこの誰かもわからない、記憶喪失で都合のいい男が現れたのだ。近頃、龍代の体に、ついに遺伝病の前兆が現れ始めた。情けない姿を夫に見せたくない。だから別れを決意した。騙してしまってごめんなさい。でも、あなたを愛した心は真実のものでした。子供をよろしくお願いします。

そこまで一気に語った男は、精神病院の院長と思しき人物に言う。じつは今朝、足を滑らせて転んだ拍子に、過去の記憶がすべてよみがえってしまった。男はかつて人の命を奪った前科者であり、脱獄の大罪人、そして二重結婚の人非人だった――男の語りは続く。

男は福岡県朝倉郡の造酒屋、畑中正作はたなかしょうさくの三男で、昌夫まさおという名前だった。東京での大学時代、政治活動に没頭し、当時の大政党の党首を亡き者とし、終身刑に処され、北海道樺戸かばとの監獄に送られて間なく脱獄、以来消息不明となっていた。

脱獄後、男はその手引きをした恋人の鞆岐ともえだ久美子と合流した。それから北海道石狩川の上流、山また山のそのまた奥の奥山、人跡未踏の秘境の地で、原始的な生活を始める。

くわやナイフで小屋を建て、畑を耕し、魚を釣り、木の実を集め、まるでアダムとイブのように――男が二十一から二十五の間に、男児と女児の二人ずつ、四人の子供も生まれて、一家は山の中でひっそりと暮らしていた。

そんなあるとき、上空を新聞社の飛行機が横切り、それから四、五日して男がますをすくいに出かけると、向こうの川隅から青年が顔を出す。男はすぐに崖の綱に飛びついて逃げようとする。が、青年は威嚇のためライフルを発砲、弾は綱に当たり、男は急流の中へ落ちていった。そのときの青年がAだった。

冒険好きの新聞記者Aは、函館時報社が空撮した『人跡未踏の神秘境に謎の一軒家が!』の記事を数日前に読んで、スクープを撮るためやってきたのだ。

しかし、まさかあんなことになろうとは……。Aは谷山家の別荘に帰り、苦い気持ちを抱えたまま眠ってしまうと、翌朝、近隣の人々の騒ぎ声が聞こえてきて――流れ着いていたのはあの男だった。

Aは好奇心から男を介抱すると、どうやら記憶を失くしているらしい。Aは谷山家の知己で、その内情に通じており、男を谷山家の養子にはめこみ、金を搾り取ってやろうと計画する。

男と龍代の結婚後、Aは二人の前から姿を消し、男が気を失っている間に呟いていたうわ言の情報から、男の素性を調べ上げ、脱獄犯であることまでも把握する。

Aはこれらのスキャンダルがさらに金になると踏み、再度、神秘境の一軒家へ探索に向かう。が、そこで久美子と鉢合わせる。久美子はあの日ライフルの音を聞いていた。Aの背負うライフルから彼を夫の仇と考え――阿修羅と化した久美子はAに襲いかかる。

Aは山の中で久美子から逃げ惑う日々を送り――ようやく近場の旭川の町に逃げ延びたときには、その恐怖から半狂乱になっていた。

その噂を聞いた東京の目黒にある精神病院の副院長は、Aを研究対象として警察から引き取る。谷山家の重大秘密、二重結婚、脱獄囚の妻――やがて狂人の戯言だと思われていたことが真実だと悟る。

副院長はさっそく谷山秀麿氏に連絡を取る。谷山氏はことの真相を聞き、Aが集めたいろいろの証拠品からとうとう記憶を蘇らせ、秘密の公表については副院長に一任し、北海道へと帰っていく。

男は檻の中で、精神病院の院長と思しき人物になお語る。自分がその男であり、畑中昌夫であり、谷山秀麿なのだと。

院長と思しき人物――副院長の助手は答える。あなたはAだ、と。

本当の谷山秀麿はいまも事業界で盛んに活躍している。あれから彼は北海道に戻ると久美子を迎えに行った。何もかもを打ち明けると、久美子は夫との再会を喜び、すべてを許し、いまは谷山夫人として、龍代が生んだ息子と自分の四人の子供たちを立派に育てている。それというのも副院長が秘密を公表しない旨、誠意ある手紙を谷山氏に送ったからだ。

Aは昨日も一昨日も、ずっと前から何度も何度も、同じ話を繰り返していた。気が狂ったために、自分のことと他人のことをごちゃまぜにしてしまっている。Aは、まだ会ったことのなかった副院長の助手を院長とカン違いし、ひょっとしたら自分の話を信じて、ここから出られるかもしれないと考えたのだ。しかし目の前には誰もいない。しかもここは精神病院でさえない。さっきから一人で喋っている。

Aは監房の檻の中で叫ぶ。

「俺は龍代に復讐するつもりだった! 俺をふったあの女に! 前科者を亭主に持たして、一泡吹かしてくれようと思ったのが、間違ってコンナ事になってしまったんだ! 俺は谷山家に怨みがあるんだ! ココを出してくれ! 龍代の阿魔あま……。出してくれ出してくれ出してくれくれくれ……出してくれッ……。出して……くれエエエ――ッ……」

狐人的読書感想

これは……すごくおもしろかったです!

正直に言ってしまうと、語り部の正体や彼の犯行動機など、主要なミステリー的謎は早い段階でわかってしまったのですが(とはいえ、じつは監房で一人で喋っていることまではわかりませんでしたが)、それでもドラマ展開で楽しめます。

『キチガイ地獄』ですか……現在ではあまり口に出してはいけないタイトルですが、夢野久作作品の中では、有名な作品じゃないのでしょうかね?

『ドグラ・マグラ』が有名すぎて、同系統の作品はその影に埋もれてしまっているのですかねえ……。

しかしふと、冷静になって振り返ってみると、ミステリー好きには物足りない作品になってしまうんですかねえ、これは。

記憶喪失とか、信頼できない語り手とか。これらのミステリー要素は、あるいは現代ではありふれたものに感じられるかもしれません。

ドラマ的にはどうなんでしょうね? 展開が読めてしまうあたり、新しいとはいえないのかもしれませんが、それでも僕はおもしろく感じました。

ともあれ、おすすめしたいですし、感想を交換したい作品です。

舞台設定も北海道ということで、狐人的には大変興味のある土地なので、それだけでも楽しめました。

北海道で、裸で、アダムとイブのように生活って……、ちょっと(寒さが)厳しそうだなあ、という内心の呟きも出てしまいましたが、それは言うだけ野暮というものかもしれませんね。

北海道って、日本の中でもオンリーワンな土地、というイメージがあるんですよね。まあ、名前だけの印象かもしれませんが……、北海「道」って他にないですもんね。

なぜ北海県ではなくて北海道なんだろう?

と、疑問に思ったので調べてみたのですが、そもそも「道」とは、8世紀頃、東海道とか山陽道みたいに、京都など「都以外の地方」を呼ぶ呼称としてつくられたものなのだとか。

北海道は昔「蝦夷地えぞち」と呼ばれ、いわば外国だったそうで、正式に日本の仲間入りを果たしたのは明治期だといいます。明治の「廃藩置県」の際、北海道は藩ではなく、さらに蝦夷地という地方という認識が強かったため、北海「道」とされたのだそうです。

北海道って、創作の舞台として大変便利な気がするんですよね、こんな言い方はあれなんですけれども。海を隔てて本州から切り離されているので、独立とかさせやすそう……新たな国家を設立、みたいな?

本作のように秘境の地で、それこそアダムとイブのように、独自の部落を作り上げていたって設定も、なんか惹かれるものがあるんですよね、リアルな実現性はさておいて。

上記は創作メモとして、残しておきたい事柄でした。

てか、あらすじで力を使い果たしてしまいました。

――というのが、今回の読書感想のわかりやす過ぎるオチ(?)です。

読書感想まとめ

ともあれ、おもしろかった! おすすめしたい!

狐人的読書メモ

・やっぱり気になったので、ちょっと調べてみたが、読んでる人多いっぽい。やっぱり夢野久作作品の中では有名なほうの作品なのかもしれない。

・『キチガイ地獄/夢野久作』の概要

1932年(昭和7年)『改造』にて初出。ミステリー、冒険要素あり。現代のミステリー好きには退屈に思われるかもしれないが、一般読者ならば十分に楽しめるのではなかろうか。狐人的にはとてもおもしろかったし、とても楽しめたし、とてもおすすめしたい小説である。

以上、『キチガイ地獄/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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