六白金星/織田作之助=良い悪いじゃなくて、ただ家族なんだなあ。

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

六白金星-織田作之助-イメージ

今回は『六白金星/織田作之助』です。

文字数20000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約58分。

優秀な兄、頭の悪い弟、週末のみ帰る父、妾の母。
家族はバラバラ。
でもきっと、世の中、良い家族も悪い家族もない。
ただ家族。
ちょっとだけ家族を大切にしたいと思える小説でした。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

楢雄ならおは生れつき頭が悪く、兄の修一は優秀だった。修一は楢雄をバカにした。父・圭介と母・寿枝は当然兄をひいきした。中学校に入った夏、修一は楢雄に言った。俺たちはめかけの子だぞ。

父は大阪の大学病院で働いていたとはいえ、週末にしか帰宅しないのはそのためだった。夏休みが終わると兄弟の姓は変わった。母は赤飯とたいの焼物を出して泣いた。

三年生のとき、楢雄は修一に連れ出されて浜へ行った。そこには女学生とそのお付きのメイドがいた。うまくやれよ。修一は女学生と先へ行った。楢雄はいきなりメイドを抱き寄せた。ガタガタ震えるメイドを見て、楢雄はその場から逃げ出した。

俺はもう少しで罪を犯すところだった。震えるメイドの姿は妾になるつらさを辛抱する母の姿だった。母さん、なぜ妾になんかなったんです。楢雄は家を飛び出した。しかし、ビアホールで偶然出くわした担任教師に見つかり、この家出は未遂に終わる。

楢雄は翌年の進級試験に落第した。兄の修一は京都の高等学校に合格した。楢雄は自分の頭の悪さを遺伝のせいにして父と母をうらむ。父は楢雄を血が出るまで折檻せっかんする。楢雄の慰めは運勢表の「六白金星」だけだった。

六白金星は父母の星との相性が悪く、家族とは縁がうすく、気難しい性質たちで、人間関係に苦労するが、しかし忍耐力に富む大器晩成型だ――翌日から楢雄は将棋を始めるが、一度も兄に勝つことはできなかった。

修一はあれからも毎日のように海岸へ出て女を物色し、楢雄は遺書を書いてヒ素を飲み一命を取り留める。

二年が経ち、楢雄は高等学校をあきらめ、医学専門学校に入学する。この年に父・圭介が亡くなる。母・寿枝は自分と息子たちの貰うべき財産の分け前をしっかりと確保しており、修一はより一層妾の母を軽蔑する。

修一が良家の娘の家に婿養子に入る話は、素行の悪さが相手方の家にバレて破談となった。修一はそれを妾の母のせいにした。家族仲はこの頃から悪化するばかり、楢雄も家を出て下宿暮らしを開始する。

楢雄は学校を出ると伝染病院に勤め、学生時代に知り合った雪江と同棲した。母は楢雄のアパートを突き止め、ご近所に二人の生活を根掘り葉掘り聞き、雪江には息子と別れるよう説得する。

楢雄は怒り、勤め先の病院もアパートも変えるが、寿枝はそのたびに私立探偵を雇ってまで、二人の居場所を突き止めてしまう。最寄り駅で、しょんぼりたたずんでいる母の姿は、さすがに楢雄の気持ちをぐらつかせたが、しかし家族と縁を切って生きようという決心は変わらなかった。

寿枝に泣きつかれた修一が楢雄の説得に乗り出す。修一は電話で「俺は将棋でお前に貸しがあるぞ」と言って楢雄の自尊心を刺し、誘い出す。楢雄は「将棋以外の口は利かない」と言って修一の誘いに乗る。

やってきた楢雄の下駄は将棋の駒の形をしていた。聞けばあれから毎晩寝ずに定石の研究をしていたという。修一は「この男にはもはや何を言ってもムダだ」と悟り、将棋の駒を並べ始めた。

狐人的読書感想

家族ものといえば心温まる話を求めてしまいますが、織田作之助さんの『六白金星』はそういう話ではありませんでした。

だけど、だからおもしろくなかった、と言いたいわけではなくて、むしろとてもおもしろいというか、感じるところの多い小説です。

これがリアルな家族だという気がします。

この世にケンカや不和のない家族なんていないでしょうし、楢雄ならおのようにそれがこじれにこじれてしまい、もうほとんど修復不可能な状態で、家族とはほとんど連絡を取っていない、なんて人も決して少なくないような気がしてきます。

親の気持ち、子の気持ち――双方を思わされる作品です。

まずは楢雄の家庭環境(両親編)です。

母は妾で、父はほかに家庭を持ち、週末しか帰ってこない。最悪ではないのかもしれませんが、決していいものではありませんよね。

少子化のことを考えるならば、多夫多妻制(一夫多妻あるいは一妻多夫)を日本でも実現するしかないんじゃなかろうか、などと最近思ったのですが(最近は芸能人や政治家の浮気報道も多いですしね)。

そしたら高所得者やイケメン・美人しか結婚できなくなってしまう、みたいな話もありますが、そもそももう結婚自体を求めていないよ、って人も多いような気がするんですよね。

収入は低いし、結婚はできないし、だからもちろん子供だって育てられないし、だからもうリア充のみなさんが頑張ってくれたらいいよ、みたいな。

諦観のような気持ちで多夫多妻制を認める人も、現代には多いような気がするのですが、どうでしょうね?

しかしながらこの作品を読んで、では子供側の気持ちはどうなんだろう? ということをはじめて考えさせられました。

兄・修一が楢雄に「自分たちは妾の子だ」と教えたとき、以下のような言葉を言います。

「泣くな。妾の子らしく生きて行こう」

やはり子供からしてみれば、自分が妾の子だというのは、大きなショックを伴う事実なんですよね。

安易にもう「多夫多妻制」でいいのでは? と、思ったことをちょっと反省しました。

多夫多妻の子供の気持ちというのも、充分に考慮すべきなんですよね。

もしも少子化対策で多夫多妻制を導入するにしても、すべての妻、すべての夫が同等の身分であることを法律などで保障して、子供が劣等感を抱かないような配慮が必要でしょうし、人の気持ちが絡んでいることはなかなかシステマティックにはいかないよなあ、ということを改めて思わされたところでした。

つぎに楢雄の家庭環境(兄弟編)です。

優秀な兄に、頭の悪い弟。

両親もやはり兄をひいきしてしまい、ゆえに弟が強烈な劣等感を持ってしまう、という設定はとてもわかりやすいもののように思います。

僕の感触では、楢雄は決して頭が悪いわけではなくて、要領が悪いのかな、という気がしますが、まあ、要領が悪いというのは頭が悪いとイコールで見られてしまいがちではありますよね。

兄弟で比較されて傷つく、というのは兄弟・姉妹のある人には多かれ少なかれ経験があるのではなかろうか、などと想像してみるのですが、想像するだけでもイヤな気持ちになります。

親が子を比較するというのはよくないことに思えますが、しかし出来るほうと出来ないほうがいるという事実は如何ともしがたく、その事実のみで出来ないほうは心を痛め、出来るほうは増長してしまう――このコンプレックスの克服は容易なものじゃないですよね。

家庭環境や親の態度も大切でしょうが、結局コンプレックスは自分自身で克服するしかないんだよなあ、みたいな単純なことを思わされた部分でした。

最後、読後にふと思ったこと。

それは「楢雄の家族は気持ちがバラバラで、たしかにいい家族とは言えないのかもしれませんが、それでもやっぱり家族なのかな」ということです。

母子、兄弟、どんなに嫌い合っていても、どこか家族だな、と思わされるポイントがところどころにありました。

たぶん家族でいることって、いいことばかりじゃなくて、悪いことばかりじゃなくて、どっちが多いからいい家族とか、どっちが多いから悪い家族だとか、そういうことじゃなくて、ただただ家族なんだなあ、みたいな。

なんだか自分で書いていて、はたしてこれで人に伝わるのかな、って感じですが。

なんとなく、ちょっとだけ家族を大切にしたいような気持になった小説が、僕にとっての『六白金星』という作品でした。

読書感想まとめ

主人公・楢雄の家庭環境は両親編・兄弟編ともに最悪なように思えます。決していい家族の在り方が描かれているわけじゃなくて、読後ほのぼのも明るい気持ちにもなりませんが、なんとなくちょっとだけ家族を大切にしたいと思える小説でした。

狐人的読書メモ

・「六白金星」は占いに用いられる九星のひとつ。九星は、一白水星、二黒土星、三碧木星、四緑木星、五黄土星、六白金星、七赤金星、八白土星、九紫火星の九つ。興味深い言葉だった。

・エディプス・コンプレックス。フロイト。男子が母親に、女子が父親に愛情を抱き、それぞれの同性の親を嫉妬したり憎んだりする。やはり興味深い言葉。

・「デカダンで行け!」,「カラマーゾフの兄弟」,『国木田独歩の『正直者』」,「モーパッサンの『女の一生』」,「森田草平の『輪廻』」

・楢雄はハエ叩きが得意だったが、蚊は上に逃げようとする習性があるので、左右から横に叩くのではなく、上下から縦に叩くといい、という雑学。

・『六白金星/織田作之助』の概要

1967年(昭和42年)、『現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集』(筑摩書房)に収録。織田作之助の代表作。リアルな家族を描いた作品。ほのぼのあったかにはなれないが、ちょっと家族を大切にしたくなるような、読んでみて損はない作品だと思った。

以上、『六白金星/織田作之助』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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