歌う骨/グリム童話=妬んでもいい、だがひとを傷つけてはいけない。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

歌う骨-グリム童話-イメージ

今回は『歌う骨/グリム童話』です。

文字数1500字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約4分。

兄だって弟を妬む、いわんや他人をや、というアニミズムの話。誰だってひとを妬んでしまうことはある。だけどその気持ちを表に出して、ひとを不快にしたり傷つけたりしたくないと思った。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

国を荒らすイノシシに頭を抱えていた王様は「このイノシシを退治した者は王女と結婚できる」というおふれを出す。

貧しい兄弟が名乗りを上げる。ずる賢い兄は西から、心優しい弟は東から、それぞれ森へ入っていく。

弟は森の中で小人に出会う。小人は弟の心の優しさに感心して、黒い槍を授けてくれる。弟はその槍で見事イノシシを退治する。

イノシシを担ぎ、森の西側に出た弟は、一軒の酒場で酒を飲む兄の姿を見る。兄のほうでも弟を見つけて声をかける。

兄は自分よりも先にイノシシを仕留めた弟を妬ましく思う。

一緒に帰る道中、小川にかかる橋のところへくると、兄は弟を背後から殴り、遺体を橋の袂のところに埋める。

弟の手柄を横取りした兄は王女様と結婚する。

何年かのち、一人の羊飼いが小川の橋のところで小さな骨の欠片を見つけ、それで笛を作って吹く。すると笛は歌い出す。

「兄に殴られ埋められた。兄は王女と結婚した」

羊飼いはこの笛を王様に届ける。王様はすべてを理解する。

悪事を暴かれた兄は処刑された。弟の骨は教会の美しい墓に埋葬された。

狐人的読書感想

仲がいい兄弟姉妹と仲が悪い兄弟姉妹とでは、はたしてどちらのほうが多いのでしょうね? ――なんてことをふと思います。

長い時間を一緒に育つのだから、兄弟姉妹は仲のよい印象を勝手に持ってしまいますが、しかし兄弟姉妹だからこそ、仲が悪くなってしまうこともあるんだろうな、と想像します。

たとえば、できのよい兄とできの悪い弟、美しい姉と美しくない妹など、周囲に比較されて育ったりすると、あるいはそれぞれが相手に対して複雑な思いを抱くようになり、必ずしも仲のよい兄弟姉妹とはいかないのかもしれません。

もちろん、他の人間関係同様、兄弟姉妹の関係も、仲がいい悪いとはっきり区切ることのできるものではなくて、仲よくできる部分もあれば、わかり合えない部分だってあるのだと思います。

全体として、おおむね仲がよいと思えれば、兄弟姉妹の関係はそれでいいのかもしれないな、なんて、考えさせられたのですが、さて。

この作品に登場する兄弟は、あまり兄弟という感じがしません。

童話特有の淡々とした文章で書かれているため、兄弟のお互いについての心情が読み取れず、関係性の薄い人間同士のお話のように読んでしまいます。

(あるいは兄弟には仲よくあってほしいと願う、僕の心の働きがそうさせてしまうのかもしれませんが……)

誰かが利益を獲得するとき、他人はそれをどうしても妬んでしまうというのは、わかりやすい感情の発露だと感じます。

そうなってしまうのは、自分がひとが手にしたものを十分に持っていないからで、しかし仮にそれを十分に持っていたとしても、他人を妬んでしまう感情というのは、止めようがないものなのかもしれません。

他人を妬みたくありませんが、そうすることをどうにもできないのだと悟ってしまい、ならばせめてその気持ちを表に出さないように、その気持ちから誰かを傷つけたりしないようにしたいと願う自分がいたりします。

この物語の兄にもそういう気持ちを持ってほしかったな、と残念に思いますが、これもまた「言うは易く行うは難し」ということなのかもしれません。

自分が誰かを妬んでしまったとき、教訓として思い出したい、今回の読書でした。

読書感想まとめ

妬んでもいい、だがひとを傷つけてはいけない。

狐人的読書メモ

・これは「兄」の話なだけに「アニミズム」の話でもある。

・「アニミズム」とは、生物、無機物を問わず、すべてのものには霊魂が宿るという考え方である。

・つまり「兄」と「アニミズム」には何の関連性もなく、ただの韻踏み、言葉遊びである。

・『歌う骨/グリム童話』の概要

KHM 28。やはり世界中に類話が多数確認されているグリム童話。日本の新潟県、鹿児島県には『歌い骸骨』、ロシアやハイチやアフリカにも似たような話が伝わっている。二人兄弟を三人兄弟としている別バージョンも存在するようだ。

以上、『歌う骨/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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