小説読書感想『飴だま 新美南吉』物語作りの構成力が学べる、心温まる童話

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コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。
(「『狐人』の由来」と「初めまして」のご挨拶はこちら⇒狐人日記 その1 「皆もすなるブログといふものを…」&「『狐人』の由来」

今回は小説読書感想『飴だま 新美南吉』です。

「北の賢治、南の南吉(この言い回しが狐人的にお気に入り)」の新美南吉さんですね。

前回ブログ記事で取り上げた新美南吉さんの作品は『あし』でした(⇒小説読書感想『あし 新美南吉』ブログで読もう!馬の感性に「しびれる」)。

『あし』は大人が感性を刺激されるようなお話でしたが、今回の『飴だま』は、はたして。

無料の電子書籍・Amazon Kindle版で4ページ、文字数では1000字ほどの短編です。よろしければぜひご一読ください。

では簡単にあらすじを。

ぽかぽか陽気の春のある日、渡し舟に乗り合わせた母子と侍のハートウォーミングなお話です。まず船が出るなり、侍が眠り出します。黒いひげをはやして、いかにも強そうなこの侍を、母親は怖がっています。侍を怒らせないようにと、二人の娘に騒がないよう言い聞かせるのですが、二人の娘は飴だまが欲しいとねだります。母親は懐から飴だまの袋を取り出しますが、中に飴だまは一つしかありません。「あたしにちょうだい」と騒ぎ始める二人の娘たち――と、そこで侍が目を覚ましてしまいます。すらりと刀を抜く侍、青ざめる母親。「飴だまを出せ」と言う侍に、母親はそれを差し出します。そして――飴だまを刀でぱちんと二つに切った侍は、二人の娘にそれをわけてあげました。それから侍は元のところに戻って再び居眠りを始めるのでした。

さて、それでは問題です。これはいつの時代の話ですか。また、その理由も述べなさい。

正解は、「侍」「飴だま」といったワードから言わずもがな、ですよね(一応、答は江戸時代)。

なぜいきなり問題を出す、と訊かれれば、この『飴だま』が日本の小学校の国語教材として取り上げられるお話だということを言いたかっただけなのですが……。

今回、僕が『飴だま』を読んで感じたことを一言で表すなら、「物語作りの構成というものを学ばされた」といったところです。さすが学校教材にも選ばれる作品!

まず、『飴だま』というタイトルですが、これはただ食べ物の「飴だま」ということのみでなく、「侍」を象徴する重要なガジェットになっていると気づきました。

甘い「飴だま」に持つイメージというのは、どのようなものがあるのでしょうか。疲れているときになめるとほっとするような、なんだかやさしいようなイメージを思い描いてしまうのは、僕だけ?

仮にこのやさしいイメージが「飴だま」にあったとして、ラストで「侍」の示したやさしい行いと通じる部分がありますよね。

さらに「飴だま」は、口の中に入れてみるまでどんな味がするのか分かりません(パッケージを見るというのはなしの方向で)。赤い色だからイチゴ味かと思ってなめてみて、コーラ味だったらびっくりしますよね。

『飴だま』の母親も、見た目から侍を怖がりますが、実際にはやさしい人柄であったことを知ります。

ここで考えさせられたのは、「『飴だま』=『侍』」という構図は、始めから意図して組み立てられていたのかということ。さっと書いてみて、物語が出来上がってみたら、こうなっていた――ということは、やっぱりないんですかねえ……。

少なくとも、新美南吉さんの『飴だま』については、そんなことはなさそうですね。無駄がないというか、簡潔明瞭というか、しっかりと物語が組み上がっています(僕が言うのもなんだか不遜な感じがしますがともかく)。

たとえば、「春のあたたかい日」であることは、侍が居眠りをするギミックになっていますし、川の上の渡し船は、母子にとっては逃げ場のない、いわば密室状況となっています。

侍のはやしている黒いひげは、いかつい印象を与えますし、船の真ん中にどっかりと座る態度は、なんだか偉そうです。

二人の子供の「あたし」という一人称や喋り方から、幼い姉妹であることが察せられるし、「おオい、ちょっとまってくれ」と、舟に走り寄ってくる侍の発言から、ドジっ子――もとい、どこか人を和ませるような、おかしみみたいなものが感じられます。

このように、少ない情報の中からでも、きちんと登場人物のキャラクターが読み取れました。

そして、物語の構成において重要とされる「起承転結」は、母親の心情の変化によって、その移り変わりがもとてもわかりやすいです。

[起]
最初、母親はその見た目や態度から、「侍」を怖いものだという認識をもちます。
[承]
だから、侍の居眠りを邪魔して怒らせないようにと、二人の娘に騒がないよう言い聞かせるわけですが、そんな思いとは裏腹に、娘たちは騒ぎ始めてしまい、侍が目を開けているのを見ると、第一印象から侍を怒らせてしまったと思い込んでしまいます。
[転]
侍が刀を抜くと、母親は娘たちをかばおうとしますが、侍が「飴だま」を切って二人の娘に分け与えると、母親は自分の勘違いに気がつきます。
[結]
最後、母親を怖がらせないようにという気遣いから、侍が再び居眠りを始めるに至って、母親は自分の偏見を知ることになるでしょう。

新美南吉さんは、『童話における物語性の喪失について』という評論の中で、文体の簡潔、明快、生新さ、内容の面白さ、といったものの、童話における重要性を説いています。これらが、やはり『飴だま』という作品からも、見事に感じられると僕は思いました。さすが、『文豪とアルケミスト』にも登場している文豪・新美南吉さん、ですね(『文豪ストレイドッグス』の登場も待ち望まれるところですね)。

物語を創作するとき、まずは主題を置きます。

新美南吉さんの『飴だま』の場合は、「人を偏見で判断してはいけない」といった感じでしょうか。

その主題を描くために、「時」と「場所」と「登場人物」を配していきます。

・「時」=「春のあたたかい日」
侍が居眠りをしたくなる日和。

・「場所」=「川の上の渡し船」
母子が逃げられない密室状況。

・登場人物
「侍」=偏見の対象
「母」=教訓を得る
「子」=トリックスター的役割

とまとめることができるでしょうか。

なんだかプロットの作り方を教えてもらったような、そんな読後感を僕に与えてくれた作品が、新美南吉さんの『飴だま』でした。

僕の単純な感想を言ってしまうと、公共の場所などで騒がしい子供には辟易させられてしまうわけなのですが、『飴だま』のように、聞き分けのない小さな子供をもつ母親というものも、周囲に気を遣い、いざとなればそんな子供たちを守らなければならない――大変だよなあ……、といった感じ。そんな状況に置かれても、怒らずじつにスマートなやり方でことを収めてみせた侍は、カッコいい大人だと思いました。こういう大人に、僕もなってみたいものですが、はたして……。

うーむ。しかしこれ、日本の小学校の国語教材になる童話なんですよねえ。大人が読んでも勉強になる作品のような気もします。良い童話というものは得てしてそういうものかもしれませんね。

逆に、小学生より下の幼い子供では、この物語が理解できないかもしれません。母親が侍を怖がった理由がわからない、みたいな。「侍は強くてみんなを守ってくれるのに、どうして怖いの?」みたいな。

そういう意味では、新美南吉さんの『飴だま』は、小学生向けの教材としてぴったりだといえるのかもしれませんね。

(ここから雑談)

ところで、『飴だま』の侍は良いお侍さんでしたねえ。この侍は、『武士道の山』でたとえるなら、どの辺りにいるのでしょうか(『武士道の山』を詳しく知りたい方はこちら⇒随筆読書感想『武士道の山 新渡戸稲造』必読のビジネス書・自己啓発本!)。(山頂付近?)

「侍」といえば、良いイメージも悪いイメージもありますよね。戦国時代だと戦で活躍しているイメージですが、江戸時代だといばっていて農民から搾取するイメージがあります(もちろん偏見はよくないのですが)。

侍の語源は、「偉い人に仕える」という意味の「さぶらひ」に由来するともいいますから、現代でいうところの「サラリーマン」なんじゃ……とか思ってしまうと、「侍ジャパン」ってなんか……(言わずもがな)。ある意味日本にふさわしいネーミングなのかも……(言わずもがな!)。

とはいえ、現代において「侍」といえば、やはり良いイメージが主流ですよね。いまや外国の方でもご存知ですものね「侍」。

それにはやはり漫画の影響が大きいように思います。海外でも人気のある「侍漫画」は、空知英秋さんの『銀魂』、和月伸宏の『るろうに剣心』、山田芳裕さんの『へうげもの』、オノ・ナツメさんの『さらい屋五葉』といったものが挙げられるようです。狐人的には『スラムダンク』でおなじみ井上雄彦さんの『バガボンド』もおすすめしたいところです。

……ふむ。今回、感想に漫画話を絡めることができなかったので、雑談にねじ込んでみたわけなのですが、無理矢理感がパないですね。もっとうまく感想と漫画話をブレンドできるように努力(?)しなくては……。

そんなこんなで今回の裏・小説読書感想。

ひょっとして、二人の娘が美少女だったので、侍もやさしくしたのでは……とか勘繰ってみたり。男たる者、やはり美少女には弱いもの。そして女たる者も、美少年には弱いですよね。『文豪とアルケミスト』に登場する新美南吉さんは、『ごん狐』をモチーフにした可愛らしい美少年。美少年好きの女子はぜひチェックしてみてください。(『文豪ストレイドッグス』での登場も乞うご期待?)

以上、『飴だま 新美南吉』の小説読書感想でした。

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【140字の小説クイズ!元ネタのタイトルな~んだ?】

今回のブログ記事に(無理矢理?)関連付けた侍漫画

・空知英秋さんの『銀魂』

・和月伸宏の『るろうに剣心』

・山田芳裕さんの『へうげもの』

・オノ・ナツメさんの『さらい屋五葉』

・井上雄彦さんの『バガボンド』

美少年好きの女子は要チェック! 新美南吉さんの登場が待ち望まれる『文豪ストレイドッグス』

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

それでは今日はこの辺で。

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