キキリツツリ/夢野久作=人生の先輩としていいこと言ってるうるさい親。

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

キキリツツリ-夢野久作-イメージ

文字数3000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約8分。

露子は勉強して上の学校に入りたい。
しかし意地悪な継母がそれを許さない。
そこに魔法使いの虫が現れて……
夢野久作版シンデレラ?
オチとじつは良いこと言ってた継母が印象的。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

露子は上の女学校に入りたかった。意地悪な継母はそれを許さなかった。

「どうせ試験を受けるための勉強だとか言って、うちの仕事をなまけるつもりでしょ。試験前だけ勉強して、上の学校に入れたって、本当に入れたことにはならないわ。勉強しないで入れたのが本当よ」

露子も勉強しないでは女学校には入れないだろう、と思って、泣く泣く黙るしかなかった。その夜、露子は台所に敷いた薄い布団の上で、寝られないでいた。

キキリツツリ。

ふいに妙な音が聞こえてきて、露子はそのほうへ……。雨戸の桟の上で、赤い帽子をかぶった小さな虫が一匹、読書をしていた。

「あなたが女学校に入れるようにしてあげましょう」

翌日の放課後、露子は校長室に呼ばれた。

「露子さん、あなたのご両親にお許しをいただきました。夜勉強する時間ももらいました。勉強して、りっぱに女学校に入ってください」

「私は夜に勉強はしません。だってお母様が言ってることも本当だと思うから。普段の授業をもっと気をつけて、覚えてみます」

校長は露子のその言葉に感動した。露子の継母もその話を聞いて涙し、いままで悪かった、と改心した。

その後、露子は優等で女学校に入った。あの虫がどうしてあんなことができたのか、不思議だった。一度会ってお礼が言いたかった。しかし以後、露子の前にあの虫が姿を見せることはなかった。

狐人的読書感想

夢野久作版シンデレラ、なんですかねえ、これは。

露子さんはめっちゃいい子だし、虫はなんかカッコいいし、継母も最後には改心して(シンデレラは残酷な勧善懲悪オチでしたが)大団円、けっこう好きなお話です(ベタではあるかもしれませんが)。

露子さんは理想の子供、というか、理想の人間が描かれている気がするんですよね、やっぱり。意地悪な継母の言うことでもちゃんと聞いて、言われたとおりにして、恨んだり憎んだりせずにただ悲しんで――そんな人間が現実にいるだろうか、などとひねくれものな僕は考えてしまいます。

人間はどうしても、自分をいやな目やつらい目にあわせる相手を、恨んだり憎んだりしてしまうように思ってしまいます。だからこそよけい、童話などに見られる純粋無垢な理想像に惹かれて、そんなふうに在りたいと願いますが、それがなかなかむずかしいの現実なんですよねえ(……ひょっとして僕だけ?)。

小学4年生にして上の学校で勉強したいという、意識高いところも見習いたいです。最近では、意識高い言動はするけれども、実が伴っている人を「意識高い系」とかいうネガティブワードがありますが、ちゃんと言動一致した露子さんのような意識高い系を目指したいですねえ(それもまたむずかしく感じられてしまいますが)。

継母は意地悪でいやなやつっぽいのですが、言ってることが全部間違っているわけじゃない、というところに思わされるところがあります。

たとえば、「女の癖に女学校へ行くなんて余計な事です」というのは男女平等たるべきいまの時代ではあきらかに間違いだといえるのですが、「試験の前に勉強して女学校に這入れたって、本当に這入れたのではありませぬ。勉強しないで這入れたのが本当です」というのはたしかにそのとおりですよね。

どうしても勉強は、試験前の一夜漬けに偏ってしまいますが、毎日コツコツ勉強して、試験前もいつもと同じ量と時間勉強して、それで上の学校に進んでいくのが、たしかに本当のことだと感じられて、身につまされる思いがします。

思えば、煩わしく感じられる親の言ってることって、ほとんどは人生の先輩として言ってくれてるアドバイス、いいことなんですよね(反発ばかりせずにちゃんと聞かないとなあ……)。

認めるのはなんか悔しいですが、いいこと言ってるんですよね、意地悪な継母も。それをすなおに聞き入れられる露子さんもすばらしいです。だから最後、継母が改心したのは、露子さんにとって幸いなことだったように思えます。今後も、いろいろな人生のアドバイスが、継母から期待できそうです。

見ると、その雨戸のさんの上に小さい小さい虫が一匹、洋服を着て眼鏡を掛けて、揺れ椅子に腰をかけて書物を読んでいます。今の音は虫が揺れ椅子をゆする音でした。

露子さんは驚いて眼をまん丸くしていると、虫は小さな赤い帽子を取って、椅子に腰をかけたまま露子さんにていねいにお辞儀をしました。

さて、シンデレラでいえば魔法使い的立ち位置の虫ですが、その姿やさりげない言動がカッコよく感じられてしまいます。『キキリツツリ』というタイトルが、虫の鳴き声ではなくて揺れ椅子をゆする音だったのが、なんだか印象的なんですよね。

どうやって校長を動かして、露子さんの継母を説得し、ことを丸く収めたのか……気になりますよね。

魔法的な何かしらの力であることは疑う余地もなさそうですが、であれば校長と話しをして説得したのか、洗脳魔法を用いたのか、継母にも洗脳魔法を? じつは魔法使いの校長が虫に化けていたのでしょうか、そして継母に洗脳魔法を? ……じゃあ、露子さんの通っている学校って魔法学校?

――みたいな、いろいろとファンタジーな想像が膨らんでしまいますよね(ひょっとして僕だけ?)。

まあ、つらい現実から逃避するために、露子さんが生み出したイマジナリーフレンドという可能性もあるんでしょうか、……しかしそうなると、この話は全部夢だったという夢オチもありなのでしょうか?

夢の読書感想でした。

――という今回の読書感想のオチ。

読書感想まとめ

純粋無垢な露子さんはめっちゃいい子だし、不思議な虫はなんかカッコいいし、意地悪な継母も人生の先輩としていいこと言ってます。しかし夢オチかもしれない、夢野読書感想!

狐人的読書メモ

意地悪な継母が登場するグリム童話などでいつも思うのは「父親はいったい何をしてるんだよ」ということ。その度、日本では亭主関白という考え方もあるけれど、世界的にやはり家庭では女性の発言力が絶対なのだと思い知らされる。

親が子供を守るのは当たり前のこと、っていうけれど、案外そんなこともない現実があったりもする。親が子供を守るのは当たり前のこと、っていう社会にしなきゃいけないとは思うけど、当たり前のことは忘れられやすいとも思う。

当たり前になると忘れるし、忘れると感謝がなくなるし、感謝がなくなると当たり前のことができなくなる。親は当たり前と思っても、子はそれを当たり前と思わずに感謝して、いずれ自分が親になったとき、それを当たり前と思えるようにならなきゃならない。

そうするためのバランス感覚ってなんかむずかしく感じるのだけれど、当たり前のことなのかな……?

読書する虫は「本の虫」(読書の虫)とかかってる?

・『キキリツツリ/夢野久作』の概要

1923年(大正12年)『九州日報』にて初出(4回連載)。「九州日報シリーズ」。夢野版シンデレラストーリー。じつはいいことを言っている継母が印象的だった。意地悪な継母が改心してハッピーエンドというのはちょっと珍しい気がした。夢野作品の安定のブラックユーモアなオチを知っているから特に……?

以上、『キキリツツリ/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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