ガドルフの百合/宮沢賢治=挫折から立ち直るために必要なこと。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

ガドルフの百合-宮沢賢治-イメージ

今回は『ガドルフの百合/宮沢賢治』です。

文字6000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約15分。

陰鬱な旅人の姿が心に残る。初恋に破れたからといって「これからのおれの恋は人類愛だ!」となるのは牽強付会なようだけど、旅人がまた歩き出すには、何か意味づけが必要なんだ。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

旅人のガドルフは朝から歩き続けていた。つぎの町はいっこうに見えてこない。疲れのためか、ガドルフの目には、周囲の景色が陰鬱に映る。曖昧な犬。横切ったそれが本物か幻か、判断がつかない。

まもなく黄昏と雷雨が一緒にやってきた。やがて、雷光閃く夜になり、ガドルフは稲光の中、大きく真っ黒な家を見つけて、雨宿りする。玄関で声をかけても返事はない。

階段のところで濡れて重くなった外套を脱いだガドルフは、そこの窓に、何者かの影を見たように思い、確認した。開けた窓の外には、風雨に揺れる白い百合の花が十本ばかり咲いていた。

ガドルフは百合の花に心惹かれ、それを自分の恋だと思うが、激しい風雨に打たれるうちに、一本の百合が折れてしまう。あの百合は折れ、おれの恋は砕けた、と消沈するガドルフ。

その後、階段に腰かけたまま眠ってしまったガドルフは、二人の男が激しく争う夢を見た。目を覚ますと、どうやら雷雨は去ったらしい。窓の外の百合は、あの一本を除いて、嵐に勝ち誇るように咲いていた。

おれの百合は勝ったのだ。濡れた服を着て、また歩き出すのはいやだけど、しかたない。ガドルフはしんとしてこう考え、また旅へと出発する。

狐人的読書感想

なんか難しかったです。正直、一読しただけでは意味がわかりませんでしたが、不思議と心に残る作品でした。

解説を読んでみると、ひとつの捉え方として、この作品は「宮沢賢治の失恋」が描かれているらしいです。

宮沢賢治さんは、十八歳の頃に肥厚性鼻炎で入院して、そこの看護師さんに思いを寄せていましたが、父親に反対されて、あえなく失恋となりました。

一本の百合を看護師さん――宮沢賢治さんの恋の暗喩だとすると、二人の男が争う夢は、自身と父親との対立もしくは恋愛に対する葛藤であり、最後、一本を除いた他の百合が嵐に勝ち誇るように咲いていたシーンでは、恋愛を宗教愛(広くすべての人への愛)へと昇華していこうとする心の動きが描かれているのだといいます。

こういった解釈を知ると、たしかに納得できるんですよね。

(もちろん、これは解釈のひとつなので、これだけが真実だとは言えないわけではありますが)

ただし、前述したとおり、意味は分からなくとも、不思議と心に残る作品なので、それだけでも一読する価値は十分にあると感じます。

陰鬱な旅人の姿というのはイメージしやすくて、何か心を打つものがあるんですよね……。

スティーヴン・キングさんの小説『ダーク・タワー』とか、三浦建太郎さんの漫画『ベルセルク』などを思い起こしたのですが、あるいはこれらのイメージを本作に重ねてしまったので、妙に印象的に読めたのかもしれません。

視覚的な作品なので、映画好きにもおすすめできるかもしれません。

挫折して、また歩き出すのはいやだけど、旅人はまた歩き出さなければならず、そのためには挫折に自分なりの理由付けをして、納得しなければなりません。

人間、挫折や失敗をしてもまた歩き出すためには、よかれあしかれ、その理由を見出して、また歩いていかなければならず――その理由は、きっと誰かに教えてもらうものではなくて、自分で見つけなきゃいけないんだよなぁ……、みたいな、人生を歩く姿を見たように思った、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

挫折から立ち直るために必要なこと。

狐人的読書メモ

・ガドルフ、ガンドルフ、ガンダルフ。

・『ガドルフの百合/宮沢賢治』の概要

初出不明。賢治作品の中ではマイナー。が、不思議と心に残る作品である。人生を歩くことの暗喩か。興味深い作品。

以上、『ガドルフの百合/宮沢賢治』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

(▼こちらもぜひぜひお願いします!▼)
【140字の小説クイズ!元ネタのタイトルな~んだ?】

トップページ

※オリジナル小説は、【狐人小説】へ。
※日々のつれづれは、【狐人日記】へ。
※ネット小説雑学等、【狐人雑学】へ。
※おすすめの小説の、【読書感想】へ。
※4択クイズ回答は、【4択回答】へ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました