十八歳の花嫁/織田作之助=狐人的感想「小説を想像する楽しさと日本人としての精神を学ぶ」

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

十八歳の花嫁-織田作之助-イメージ

今回は『十八歳の花嫁/織田作之助』です。

織田作之助 さんの『十八歳の花嫁』は文字数850字ほどの短編小説です。このブログで読めます。著者自身が美談といっているように、昔の日本人女性のいじらしさ、みたいなものを感じられるお話です。美談なのかもしれないし、哀しいお話なのかもしれないし、あるいは――。未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

(パブリックドメインの非常に短い小説なので今回は全文を掲載します)

『十八歳の花嫁/織田作之助』

最近私の友人がたまたま休暇を得て戦地から帰って来た。○日ののちには直ぐまた戦地へ戻らねばならぬ慌しい帰休であった。

久し振りのわが家へ帰ったとたんに、実は藪から棒の話だがと、ある仲人から見合いの話が持ち込まれた。彼の両親ははじめ躊躇した。婚約をしてもすぐまた戦地へ戻って行かねばならぬからである。しかし、先方はそれを承知だと、仲人に説き伏せられてみると、彼の両親もそしてまた彼も萬更ではなかった。

早速見合いがおこなわれた。まだ十八になったばかしの、痛痛しいばかりに初々しい清楚な娘さんである。

その娘さんがお茶を立てるのを見ながら、自分は苦しいばかりの幸福感をのんでいたと、あとで彼は私に語った。話はすぐ纒った。

しかし、娘さんの両親は、結婚式はこんど晴れて帰還されてからにしたい。それまでは一先ず婚約という形式にしたいと申出た。なんといってもまだ若い、急ぐに及ばないという意見であった。いくらかの不安もあったろうか。

ところが、すっかりその娘さんが気に入ってしまった彼は、すぐ結婚式を挙げたいと駄々をこねた。娘さんの両親はどうしたものかと迷った。

しかし、娘さんは迷わなかった。結婚式を帰還するまでのばすのは、何か戦死を慮っているようで、済まないと、両親を説き伏せた。

二日のちにはもう結婚式が挙げられた。支度もなにもする暇もない慌しい挙式であった。そして、その翌日の夜には彼ははや汽車に乗っていた。再び戦地へ戻って行くためである。十八歳の花嫁はその日から彼に代って彼の老いた両親に仕えるのである。

×

私はこの話をきいて、いたく胸を打たれた。あるいはこの話は軍人援護の美談というべきものではないかも知れない。しかし、いま私は「私の見聞した軍人援護朗話」という文章を求められて、この話を書き送ることにした。この十八歳の娘さんのいじらしいばかりに健気な気持については、註釈めいたものは要らぬだろう。ひとはしばらく眼をつぶって、この娘さんの可憐な顔を想像してくれるがよい。

十八歳の花嫁-織田作之助-狐人的あらすじ-イメージ

狐人的読書感想

さて、いかがでしたでしょうか。

ひねくれものの僕としては、やはり美談というよりは、痛々しいばかりに初々しい清楚な娘さんの、ただただ痛々しいお話のように思ってしまいます。

「漢」なら駄々をこねちゃダメ――とはいえ

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まず、私の友人であるところの青年よ。一目惚れしちゃったのはどうしようもないけれど、すぐ結婚式を挙げたいと、駄々をこねちゃダメでしょ――と思っちゃったのは僕だけ?

生きて帰れるかどうか、という状況ならば、娘さんの今後のことを考えて結婚しないのが、「漢」という気がするのです。

ただ、勝手に「青年」とか書いてしまいましたが、彼自身もまだ十代の少年であったとしたら、この態度にも頷かざるを得ないところがあります。

それでなくとも、生きて帰れるか分からないからこそ、結婚式を挙げておきたいというのは、本当に切実な、人として当たり前の本音です。

年齢にかかわらず、その思いを非難することは誰にもできないでしょう。

男らしくないとかいってしまってごめんなさい(え、そこまではいってないって?)。

(ところで一目惚れってしたことありますか?)

浅い縁の男のために自分を犠牲にできるか?

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両親が躊躇するのを押して、浅い縁の男のために、自分の将来を顧みず、結婚式の挙行を決めた娘さんの健気な気持ちは、たしかに美談と断ずるに些かの躊躇も持たぬ! ――といえそうです。

「恋愛は夢、結婚は現実」ともいわれるように、恋愛と結婚は違うもの、そこに愛がないからといって、結婚してはいけない法はないわけですし、反対に愛し合っているからといって、結婚しなければいけないわけでもないです。

ただし現代、とくに女性は上記のように、いわれずとも恋愛と結婚を別のものとして捉えている向きが多いように思います。

経済力のないすごく好きな男性と経済力のあるそれなりに好きな男性だったら、後者と結婚する、みたいな(視野の狭いものの見方であったらすみません)。

どうしたって、先の人生を心配して、現実的な利益を優先してしまいがちなのが、現代人の考え方のように思えますが(どうでしょう?)、娘さんの行動は、そうした現代人の考え方とは趣を異にするもので、たしかに、僕も見習うべき美点、であるように思いました(だからといって自己犠牲の精神が必ずしもよいとも思えませんが)。

(結婚したくても結婚できない、笑える夫婦関係築けていますか、良き妻の在り方とは……、こちらもどうぞ)

想像して、物語のハッピーエンド補完計画!

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僕は、娘さんの「自己犠牲の精神」を、著者のいう美談だと解釈しましたが、しかし感覚的には理解できても、共感するのはちょっと難しく感じました。

現在と戦時と――おそらく時代背景の違いに、その一因があるように思われます。

戦時中の日本人の精神性というものが、戦争の経験のない、平和な現代に生きる僕としては、感覚・知識としては理解できても、実際的には理解できないからだと考えました。

これが良いことなのか悪いことなのかは、正直よくわかりません。

終戦記念日などでいわれるように、戦争の悲惨な経験を決して忘れてはいけないわけではありますが、平和な時代、平和な国に生まれた幸運について、感謝せずにはいられないわけで、でも人類の歴史を鑑みれば、戦争体験のない世代が、再び戦争を起こさないとは断言できないわけで……、そういった意味では、『十八歳の花嫁』を美談として受け止められる心というものを、日本人は保ち続けていく必要があるように思い、このような作品の必要性みたいなものを感じました。

――とはいえ、著者も僕も、いじらしいとか、健気とか、あるいは痛々しいとか、自己犠牲の精神だとか、娘さんの気持ちを勝手に忖度してしまっていますが、実際はどうなのでしょうねえ……、というお話です。

この短い物語を読んだだけでは、娘さんも彼に一目惚れしなかったとはいい切れませんし、彼が戦争で帰らぬ人になったという記述もありません。

意外と彼は無事に帰ってきて、娘さんはたくさんの子宝に恵まれて、老いても二人連れ立って散歩に出かけるような……、そんな幸せな人生を送ったかもしれません。

「結婚した人が本当に愛する人であるのかどうかは、人生が終わってみるまで分からない。だから最後、結婚した人が愛する人であったと自信を持っていえるように人生を生きなければならない」

――みたいなことをどこかで聞いたのですが、はたしてどこだったか……。織田作之助 さんの『十八歳の花嫁』は、短いからこそ物語を想像力で補完できるところに、短編小説の良さを感じた作品でもありました。

(こちらのは想像の余地なく悲恋ですがよろしければ)

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では最後にちょっとだけ雑談にお付き合いください。

「十八歳の花嫁」と聞いて、何を(あるいは誰を)思い浮かべるでしょうか?

1970年代には『おくさまは18歳』という少女漫画を原作としたテレビドラマが高視聴率を記録したのだとか……、この題材は、現在の漫画やアニメなどにも結構見られるテーマのように思います。

僕などは、『三国志』において、18歳で50歳の劉備の妻となった孫尚香(孫夫人)なんかを思い浮かべてしまうのですが、いかがでしょうか?

50歳と18歳の結婚というのもすごい年の差婚ですが――日本では、成年年齢を現在の20歳から18歳に引き下げる、といった民法改正案が予定されているのは、最近のトピックスですが、これにともない婚姻年齢も「男子18歳」、「女子16歳」から「男女とも18歳」に統一されることはご存知ですか? 一部男性からは、「おくさまは女子高生」の夢が潰えた、といった意見もあるようですが(笑)。

この改正案は現在、今年(2017)年の通常国会提出を目指しているとのことで、早ければ2021年には施行か? といった感じですが、世界的には中東(イエメン)やアフリカを中心に、早い結婚が当たり前に行われていて、いろいろと問題もあるみたいです。

近い将来、EU諸国でも婚姻年齢は18歳に統一されるそうで、これがグローバル・スタンダードな流れのようで――その幻想はぶち壊されるもの……、ということで、一部男性には諦めてもらうしかなさそうですね。

(もしくは2021年までがチャンス!?)

読書感想まとめ

狐面戦時中のいじらしい日本人女性の姿を描いた美談――ですが、現代人には実感として理解しにくいお話かもしれません。とはいえ、二度と戦争を起こしてはいけない、という気持ちを新たにするためにも一読の価値あり。想像力で幸せな結末を補完できる楽しみもあります。グローバル・スタンダードは「結婚は男女とも18歳」。その幻想はぶち壊されるもの……、ということで「おくさまは女子高生」を夢見ている男性諸氏は諦めてください(もしくは2021年までがチャンス!?)。

狐人的読書メモ

既存の短編小説を想像力で補完して、オマージュ作品というか、アレンジやスピンオフなど書いてみるのは、小説を書く練習としていいのかもしれない……、と思った。

以上、『十八歳の花嫁/織田作之助』の読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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