狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
国木田独歩 さんの『初恋』は文字数2500字ほどの短編小説です。『初恋』というタイトルからは、ツルゲーネフ さんの小説や島崎藤村 さんの詩を思い浮かべる方のほうが多いかもしれませんが、今回は国木田独歩 さんの『初恋』です。……あるいはご自身の初恋を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょうか? 最近の漫画でいうと、2015年テレビアニメ化され、2017年舞台化が決定している日吉丸晃 さんの『初恋モンスター』? 読み終わってみれば、想像した『初恋』とはちょっと違った、と感じるかもしれませんが、とても素敵なお話です。未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
主人公の「僕」は14歳の時のことを懐かしく思い出す。
僕の村には「大沢先生」という頑固爺が住んでいた。
先生は漢学者であり、理屈っぽく、偉そうなので、村人たちから敬遠されていた。当時の僕はといえば、学校のガキ大将で、すごぶる生意気だった。子供のくせに、この先生のいばった態度が気に入らない。いつかぎゃふんといわせてやろうと猪古才なことを考えていた。
ある日、僕が散歩をしていると、先生が松の根に腰を下ろして書見をしていた。その傍に孫娘もいて、遠く海のほうを眺めている。先に娘が僕に気づき、にこりと笑いかける。つぎに先生が、怖い顔で僕を見て、本を懐にしまう。
僕は先生に「何を読んでいたのですか」と尋ねる。先生は「それを聞いてどうするか」と問い返す。僕は「孟子が好きですから」と続ける。じつは先生が、孟子を毛嫌いしていることを、僕は知っている。先生は懐から孟子の本を取り出して「ここを読んでみろ」と、ある句を示す。僕が「それが何です?」と返すと、先生は続けて孔子の言葉を引き合いに出して、「これこそ日本の国体に適う教えだ」という。「これでも貴様は孟子が好きか」と続ける先生への返事に困った僕は「それならなぜ先生は孟子を読むのですか」と揚げ足を取る。返答に窮する先生――。
それ以来、僕と先生の交流が始まる。家を訪ねてみれば、先生はまるで自分のおじいさんであるかのように、親切にいろいろな話を聞かせてくれる。下男の太助もおもしろいし、孫娘の愛子はかわいい……。
前に話した松の根で老人が書を見ている間に、僕と愛子は丘の頂の岩に腰をかけて夕日を見送った事も幾度だろう。
これが僕の初恋、そして最後の恋さ。僕の大沢と名のる理由も従ってわかったろう。
狐人的読書感想
さて、いかがでしたでしょうか。
なんだかとても素敵なお話だと思ったのは、僕だけ?
国木田独歩 さんの小説を読んだのは、これでまだ3作目なのですが、すでにファンになってしまいそうです(すでにファンになっているかもしれませんが)。とにかく『忘れえぬ人々』が良過ぎました(拡大解釈して感動している感はありますが)。
(そんなわけでよろしければこちらもぜひに)
「僕」の初恋のきっかけ。孟子と孔子の解釈の違い。
国木田独歩 さんの『初恋』は、読みやすく、分からない表現や漢字もなくて、綺麗にまとまった物語です。しいて一点だけ挙げるとすれば、孟子 さんの句の解釈が不足しているように感じました(まあ、孔子 さんの教えの反対をいっているのだと捉えられるので、何の問題もありませんが)。
『君、臣を視ること犬馬のごとくんばすなわち臣の君を見ること国人のごとし云々の句である』
――の部分です。
これは孟子 さんによって提唱された儒教における「五倫の教え」の一つ、「君臣の義」の一部分です。君主が臣下を飼い犬や馬のように扱って敬う心がなければ、臣下のほうでも君主をただの国民と変わらぬようにしか見ず恩義を感じなくなる、といった「忠誠とは相互的なもの」であることを表した教えです。
一方、先生が日本の国体に適うと絶賛している孔子 さんの教えですが、
『君、臣を使うに礼をもってし臣、君に事うるに忠をもってす』
――の部分です。
「礼」、「忠」という漢字だけみると、孟子 さんと同じようなことをいっているように聞こえますが、孔子 さんのいう「礼」は社会規範のことで、「忠」は自分の心に素直な様、といった感じの意味になります。すなわち、「君主は社会規範によって臣下を使い、臣下は素直な心で君主に仕える」とでも訳してみると、これはなんだか「一方的な忠誠の形」と受け取れます。
国木田独歩 さんの『初恋』の初出は1900年(明治33年)ですから、その頃の日本では、孔子 さんの教えのほうが適していると、先生はいっているわけです(ただし孔子 さんの教えを全体的に見ると、必ずしも封建的な忠君思想を唱えているとはいえず、そこには大きな誤解があるようです。現代人たる僕が読むと、ここにアイロニーを感じるのですが、当時の時代背景や国木田独歩 さんの経歴を見るにそれはないのかなあ、と思ったり。どうでしょう?)。
初恋が実らない理由。8割の人が告白できなかった。
さて、ここからの話は国木田独歩 さんの『初恋』からはちょっと離れてしまいますが、もしお付き合いいただけましたら幸いです。
「草食系」から発展して、現実の恋愛を求めていない「絶食系」も増えていると聞く昨今ですが、いま、このブログを読んでくれているあなたは、初恋って覚えてますか? あるいはいま初恋中?
ネットで見つけた、とある調査によると、男女を問わず8割の人が、初恋の相手に告白できなかった、というアンケート結果があるみたいです。(僕ではない)作中の「僕」の初恋は、見事最後の恋となりましたが、現実で初恋は実らない、といわれる所以は、じつはここにあるのかもしれませんね。
そういう方々は、やはりそのことを後悔していて、「後悔するくらいなら告白しとけばよかった」と思っているそう(現在進行形で初恋中の方には貴重なご意見のように聞こえますが、それが分かっていても告白できないのが初恋なのかもしれません)。
初恋の人に会いたい! と思ってしまうシチュエーションは、恋人と別れたときや思い出の場所に行ったとき、同窓会に参加するときやSNSを始めたとき、などが挙げられるようです。
初恋の人に会いたい! と思ってしまったとき、同窓会で偶然……(ベタ過ぎ?)、なんとか人伝てに……、といった方法がぱっと浮かぶものなのでしょうか。現代では、実名登録の『Facebook』で探すといったやり方もあるそうで(じつは検索してみたことのある方いらっしゃいますか?)、初恋の人に限らず、元カレや元カノの近況を知るのは、現在そんなに難しいことではなくなっているのかもしれません(ちょっと怖い話でもあるかもしれませんが)。プロの探偵を雇ってまで……、となってくると、ちょっと心配になってしまいそうですが……。
初恋の人に告白できなかったことを後悔している人が多いという話をしましたが、思い出は美化され……、初恋の人に会うと後悔することもまた多いそうです。初恋は過去のものとして心の奥底へ大事にしまっておくのがどうやら吉のようですね。
(……これはいったい何の話だったんだ――ということを書き終えた後になって気づきました)
読書感想まとめ
国木田独歩 さんの『初恋』はとても素敵なお話です。てか、今回これしか感想書いてません(最近この流れが多いような気が……ネタ切れ?)。
(ちなみにネタ切れ気味の前回ブログ記事―読書感想―はこちら……ネタ切れ気味って、全然宣伝になってない気もしますが)
狐人的読書メモ
思えば、本ブログ記事のイメージ画像にもあるように、『文豪ストレイドッグス』きっかけで、国木田独歩 さん作品を読み始めたわけですが、これは大正解でした。
(ちなみにちなみに文豪ストレイドッグスにも登場している文豪-女性-、泉鏡花 さん―男性―の哀純愛小説? はこちら)
・『初恋/国木田独歩』の概要
1900年(明治33年)発表。少年の成長と、頑固爺との温かな交流が、簡潔に描かれている。
・『初恋モンスター』の概要
日吉丸晃 さんの漫画。2015年テレビアニメ化。2017年舞台化が決定。女子高生が小5男子に恋するお話。……男女問わず、やはり最近のトレンドはこれなのだろうか?
・10月30日は――
初恋の日。島崎藤村 さんの詩が発表された日が由来らしい。島崎藤村 さんゆかりの宿、長野県小諸市の中棚荘では毎年「初恋はがき大賞」というイベントが開催されているそう。ちなみに、なもり さんの漫画『ゆるゆり』のキャラクター、向日葵ちゃんの妹、楓ちゃんの誕生日が10月30日(さすがにちなみに過ぎるかなあ……)。
以上、『初恋/国木田独歩』の読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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