春の鳥/国木田独歩=六蔵=武蔵=バガボンド=スラムダンク連載再開?

シェアよろしくお願いいたします!

あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

鳥と飛ぶ少年今回は『春の鳥/国木田独歩』です。

以前のブログ記事に書いた『忘れえぬ人々』が凄い小説だったので、いやがうえにも期待は高まってしまうわけなのですが、はたして。
(⇒小説読書感想『忘れえぬ人々 国木田独歩』凄い小説なので四回読んでほしい!

あらすじ

物語の主人公は、都会から田舎の町に赴任してきた若い教師の「私」。その町には散歩にうってつけの山がある。秋の末のこと、とある日曜日の午後、「私」は頂上の城跡に出掛けて行った。いつものように、そこから見渡せる田園風景と読書を楽しんでいると、山で遊ぶ五歳ほどの白痴の少年に出会う。

少年は、しばらくして「私」が下宿することになる家の子で、名を六蔵といった。家の主人によれば、白痴である六蔵は、学校にやっても迷惑をかけるばかりになってしまうので、退学させたという。しかし将来のことを思えば、少しでも教育を施してやりたい。どうにか教えてやってはもらえないだろうか。白痴教育には特別な知識が必要である。「私」は、はじめ躊躇するも、主人と六蔵の母親の頼みを受け、また自身も六蔵に哀れみの情を抱いていたこともあり、引き受けることに。

それから「私」は工夫を凝らし、根気強く六蔵を教えるも、成果は上がらず……、自身の無力さや今後の教育方針などを悩んでいたある冬の日、山の城跡で、「私」は六蔵を見かける。天主台の石垣にまたがり、優しい声で歌っている六蔵――

空の色、日の光、古い城あと、そして少年、まるで絵です。少年は天使です。この時私の目には、六蔵が白痴とはどうしても見えませんでした。白痴と天使、なんという哀れな対照でしょう。しかし私はこの時、白痴ながらも少年はやはり自然の子であるかと、つくづく感じました。

季節は移り変わって、三月の末、春のある日、朝から六蔵の姿が見えず、日が暮れても帰ってこない。「私」は虫の知らせを感じて、山の城跡へ――天主台の石垣から下を覗いてみると、そこに六蔵のなきがらがあった。「私」は思う。六蔵は鳥が好きだった。自由に空を飛ぶ鳥がよほど不思議なようだった。六蔵もそんな鳥のように、大空を飛び回るつもりで、石垣から身を躍らせたのかもしれない……。

それから――

「私」は六蔵の墓の前で、ひとり言を呟いている六蔵の母親を見る。

「なんだってお前は鳥のまねなんぞした、え、なんだって石垣いしがきから飛んだの?……だって先生がそう言ったよ、六さんは空を飛ぶつもりで天主台の上から飛んだのだって。いくら白痴ばかでも、鳥のまねをする人がありますかね、」と言って少し考えて「けれどもね、お前は死んだほうがいいよ。死んだほうが幸福しやわせだよ……」

六蔵の好きだった1羽のカラスが、城山の森から飛んでいく。突然話をやめて、茫然とそれを見送る六蔵の母親。

この一羽のからすを、六蔵の母親がなんと見たでしょう。

田舎
photo by mateuspabst

読書感想

いかがでしたでしょうか。

「ボーイ・ミーツ・ガール」じゃなくて「ボーイ・ミーツ・ボーイ」(?)と捉えるならば、女子向けの小説?

国木田独歩 さんの『春の鳥』は、無料の電子書籍Amazon Kindle版で11ページ、文字数8200字ほどの短編小説。自然への回帰、人の生の哀しさ、情景描写の美しさ――まるで一枚絵を見ていたような読後感。未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

さて、正直に言ってしまうと、狐人的にはやっぱり『忘れえぬ人々』、なのですが、期待を裏切らないすばらしい小説だと思いました。さすがは文豪、国木田独歩 さん! ですね。

あらすじでも引用させてもらいましたが、どこかノスタルジーを想起させる情景描写が、とても端的に描かれているので、すんなりと頭の中にその光景が浮かんできます。

まるで一枚絵を見ているかのように。

国木田独歩 さんの作品の、ひとつ特徴なのかもしれません(まだ2冊しか読んでいないので、軽々には断言できないところではありますが……)。

白痴であった六蔵が、このまま生き続けていても、はたして幸福になれたのかどうか――という六蔵の母親が抱えていたであろう葛藤が表れているラスト付近の言葉には、とても考えさせられる思いがしました。

ただ、母親としては当然我が子には生きていてほしかったはずですよね。しかし、この子の将来を思うなら……。生きてさえいれば、きっと良いことがある、というのはよく聞かれる言葉ですが、正直、現実に言われてこれほど響かない言葉が他にあるだろうか――と思ってしまうのは僕だけでしょうか?

もちろん、言ってくれる人のいるありがたさや、その人の気持ちまでを否定することはできないのですが。幸せな人間だから、少なくとも不幸ではない人間だから、その台詞が言えるのでは……、とか、どうしても斜めに見てしまいます。

我が子に生きていてほしい、と思うのは親のエゴ、本当にその子のことを思うなら――と考えて、考えて、考えて……、それでも本当に亡くなってしまったら悲しくて、悲しくて、悲しくて……、六蔵の母親の想いを想像してしまうと、切ないというか、やりきれないというか――世の不条理を思わないわけにはいきませんでした。

そしてそのことが、あらすじで引用したラストの1行に込められていて、国木田独歩 さん作品の全般的な主題として、置かれているようです。

自然主義とか、汎神論的自然観とか、老荘的自然観とか……、難しい言葉を調べて、それらしく述べることは可能化もしれませんが、とにかく読んでみて、それぞれに何かを感じられれば、それで十分なのだと思いました。

そうやって感じ取ったことというのは、すべてが言葉にできるわけじゃない。

だからぜひ読んでみてください!
(決して、感想が書きずらいから、投げ出したわけではありません! ……と信じたい)

とはいえ、読書感想文を書くにはおすすめしずらい1冊かもしれませんねえ……、決して書けないことはないかもしれませんが、書きやすい作品に比べてといった意味で。

教師と生徒の関係や、教育についても、いろいろと考察できるところがありますので、教師を目指している方などには一読の価値ありかと。

要するに、ぜひ読んでみてください!
(決して投げ出したわけでは……以下略)

読書メモ

・『春の鳥』について調べたこと

国木田独歩 さんは23歳のときに、大分県佐伯の鶴谷学館の教師として、学館長の坂本永年 さん宅に下宿していたことがあるとか。学館長の妹の息子さん(春雄)もまた白痴だったそうで、このときの体験をもとに『春の鳥』は執筆されています。

・六蔵
読みは「ろくぞう」。いつも「りくぞう」と読みそうになるのは僕だけなのでしょうか? 男の子の名前で「むさし」と読む場合もあるそうですが、さすがに「男の子の名前ランキング」には載っていませんね。「武蔵」といえば井上雄彦 さんの漫画『バガボンド』を思い浮かべてしまうのですが……、ところで『SLAM DUNK』(スラムダンク)連載再開の噂はどうなのでしょうか?

バガボンド(1)(モーニングKC)Slam dunk―完全版 (#1) (ジャンプ・コミックスデラックス)

 

 

 

 

井上雄彦 さんとかつて版権問題でもめた鳥嶋和彦 さんが集英社から異動になったことが噂の発端のようですが……、確かに、思わぬ形の連載終了だったと聞けば、そんな感じの終わり方のようにも感じますが……、物語的には全然悪い終わり方のようには感じなかったし……、かといって続編が出るなら読みたいし……、だけど……、読みたいような、読みたくないような? (前回ブログ記事でも同じようなこと言ってたような…… ⇒狐憑/中島敦=好きな漫画の連載再開を求むも…創作者の苦悩を知り反省…

[まとめ買い] 文豪ストレイドッグス(角川コミックス・エース)ちなみに『文豪ストレイドッグス』の田口六蔵は、『春の鳥』の田口六蔵がモチーフですよね、きっと。『文スト』の国木田独歩 さんファンには、そちらの観点からも読んでもらいたい作品ですね。

 

・白痴

重度の知的障害を指す言葉。差別用語と捉えられることがあるため、使い方に注意が必要そうですね。ドストエフスキー さんの小説を真っ先に思い浮かべるのは、きっと僕だけではないはず。坂口安吾 さんの作品にも同名のものがあるようですが。

・「さぎ」を「からす」に言い黒める

鷺のシルエット
photo by Pai Shih

ことわざ。鷺を烏と言いくるめる。正しくないことを強引に正しいと言いくるめること。白い鷺を黒い烏だと言い張ることから、「言いくろむ」「言い黒める」という表記をすることがあるそう。右の写真は「されどシルエットの鷺は黒いよね」といった屁理屈。

・『わらべなりけり』
ウィリアム・ワーズワース作中にもあるように、イギリスの有名な詩人(ウィリアム・ワーズワース)の詩『There was a boy』(一人の少年)。少年がフクロウを真似て「ホウホウ」と鳴くと、フクロウも「ホウホウ」と鳴いて応えてくれる。少年は10歳になる前に亡くなってしまう。国木田独歩 さんは、この詩の影響を受けて、『春の鳥』を執筆しています。

 

以下、原文。

『There was a boy/ウィリアム・ワーズワース』

フクロウThere was a Boy, ye knew him well, ye Cliffs
And Islands of Winander! many a time,
At evening, when the stars had just begun
To move along the edges of the hills,
Rising or setting, would he stand alone,
Beneath the trees, or by the glimmering lake;
And there, with fingers interwoven, both hands
Pressed closely palm to palm and to his mouth
Uplifted, he, as through an instrument,
Blew mimic hootings to the silent owls
That they might answer him. And they would shout
Across the watery vale, and shout again
Responsive to his call, with quivering peals,
And long halloos, and screams, and echoes loud
Redoubled and redoubled; concourse wild
Of mirth and jocund din! And, when it chanced
That pauses of deep silence mocked his skill,
Then, sometimes, in that silence, while he hung
Listening, a gentle shock of mild surprise
Has carried far into his heart the voice
Of mountain torrents; or the visible scene
Would enter unawares into his mind
With all its solemn imagery, its rocks
Its woods, and that uncertain heaven, received
Into the bosom of the steady lake.
 
This Boy was taken from his Mates and died
In childhood, ere he was ten years old.
Fair are the woods, and beautious is the spot,
The Vale where he was born: the Church-yard hangs
Upon a slope above the Village School,
And there, along the bank, when I have passed
At evening, I believe, that oftentimes
A full half-hour together I have stood
Mute-looking at the grave in which he lies.

以下、散文訳

ウィナンダーの島々とその断崖よ、だいぶ前ではあるが、宵時に星が丘の稜線に沿って輝き出たり、沈もうとするとき、木々の下とか輝く湖畔で、諸君もよく知る一人の少年がぽつねんと立っていたのを覚えていよう。彼はそこで両掌をしっかりと合わせ、絡めつつ、口の近くに持っていき、フクロウが自分に応えるようにと、楽器のようにホウホウと真似て吹くのだった。するとフクロウたちは湖の谷間を越えて彼の呼び声に応じて何度も鳴き始めるのだった。その鳴き声は何とも陽気で騒がしい集いとなっていた。それから、彼の技術を嘲るような長い沈黙の中、時々、彼が耳を澄ましていると、山の息吹が穏やかな驚きの衝撃となって心に拡がるのだ。つまり、岩々や木々やおぼろげな天空が、静かな湖面に身を映す様が自然と拡がるのであった。この少年は実は、友達から引き離され、10歳にならぬうちに死んでしまった。彼が生まれたその地の谷間や森はなんとも美しい。村の学校のうえの坂道を登りつめると教会墓地があるが、私はかつてその急斜面に沿って歩き、しばし丸半時間ほど、立ち止まって彼が横たわる墓を眺めたことがある。

以上、『春の鳥/国木田独歩』の読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

(▼こちらもぜひぜひお願いします!▼)
【140字の小説クイズ!元ネタのタイトルな~んだ?】

トップページ

※オリジナル小説は、【狐人小説】へ。
※日々のつれづれは、【狐人日記】へ。
※ネット小説雑学等、【狐人雑学】へ。
※おすすめの小説の、【読書感想】へ。
※4択クイズ回答は、【4択回答】へ。

シェアよろしくお願いいたします!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です