狐憑/中島敦=好きな漫画の連載再開を求むも…創作者の苦悩を知り反省…

あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

狐面今回は『狐憑/中島敦』です。

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以前のブログ記事(⇒小説読書感想『山月記 中島敦』→月下獣←人虎伝→苛虎…手乗りタイガー?)の最後に(「手乗りタイガー」の部分ではなく)ちょっとだけ触れた、「狐人」の狐つながり(?)の小説『狐憑』です。

 

狐つながり(?)だけに気合を入れて書きたいと思います!
(空回りにならなければいいのですが……)
最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

それでは早速あらすじから。

あらすじ

スキタイ人たちのもとに追放されたオウィディウス

紀元前8世紀~3世紀。文字もなく、本もなかった時代。スキタイ。現在のウクライナを中心に築かれたイラン系民族。その一部落であるネウリ部落の青年シャクは、北方のウグリ族の襲撃によって弟を失ってしまう。それをきっかけに部落内ではシャクに憑きものがついたと噂されるようになる。獣や鳥や魚の霊に憑りつかれたシャクは、鳥獣の目で見た光景を、表情豊かに物語る。部落の人々はシャクの語る物語に魅了される。

しかしシャクの語る物語は、霊によってもたらされたものではなく、彼自身の空想から生み出される産物だった。人々は、シャクの語る物語を求めて、連日のように彼のもとを訪れるようになり、それは次第、シャクの職業のようになっていく。ついにシャクは、狩猟や釣り、馬の世話や木の伐採といった村の仕事をしなくなった。そんなシャクに部族の人々と長老は不満を抱く。

冬を越えた頃、突如シャクは物語を語ることができなくなってしまう。話もできず、仕事もしないシャクに、人々の目は冷たくなっていく。長老は先祖伝来のしきたりに従い、とある処分を決定する。その処分とは――。

読書感想

さて、いかがでしたでしょうか。

中島敦 さんの『狐憑』は、無料の電子書籍Amazon Kindle版で7ページ、文字数5000字ほどの短編小説。小説、漫画、映画――創作者と創作物への接し方を考えさせられた作品。未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

創作者の苦悩(求む連載再開!)

僕がこの小説を読んで、一番に思わされたのは、「創作者の苦悩」みたいなものでした。

たとえば、僕には好きな漫画があるのですが、その漫画が長期休載になったとき、「早く続きが読みたいのに!」、「早く早く!」と急かすような思いに駆られてしまうわけなのですが、おもしろい作品を簡単に生み出せるわけじゃない、ということを忘れがちになっているような気がしました。

[まとめ買い] HUNTER×HUNTER カラー版(ジャンプコミックスDIGITAL)冨樫義博 さんの『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』のことなのですが……。

 

 

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上の冨樫義博 さんも葦原大介 さんも、体調不良とのことなので、厳密には創作のインスピレーションを突如失ってしまったシャクとは相違があるのですが、休載を非難するような思いが先行して、スランプに陥った作家の苦悩を思いやることって、少ないような……と反省させられる気持ちになりました。

とはいえ、

(ゆっくり静養して、早く良くなってください!)

と思わずにはいられません(反省の色が足りない?)。

創作物への接し方(著作権問題)

著作権表示つぎに思ったのは、「創作物への接し方」です。前項の「創作者の苦悩」にも通じる話ではあるのですが。

小説・漫画・アニメ・映画……、と様々な創作物が溢れている現代ですが、溢れ過ぎている現代ですが――溢れ過ぎているからこそ、それを作っている人たちへの感謝の念やリスペクトの気持ちというものを、疎かにし過ぎているような気がします。

インターネットやデジタル技術の発展で、著作権の問題が頻繁に取り沙汰されるようになりました。僕などもおこづかいが少ないので、「無料で楽しめたら嬉しいじゃん!」とか、ついつい思ってしまいがちですが、そんなときは作品を作っている作者の方の苦労というものを考える必要があるのだと、改めて思わされました。

早すぎた天才の悲劇(パンとサーカス)

本『狐憑』のシャクは、文字もなく、本もなかった時代、つまり物語がエンターテインメントとして確立されていなかった時代において、明らかに作家の才能を発揮していました(『狐憑』では詩人、ホメロス引き合いにしていますが)。

ネウリ部落の人々は、エンターテインメント(娯楽)を求めつつも、それを「仕事」として捉えることはできませんでした。狩猟採集時代の人たちにとって、「仕事」とは生きていくための営みだったからです。シャクに訪れる結末を思うに、生まれてくる時代が早過ぎた天才の悲劇、みたいなものを思わされました。

古代ローマ社会を表した言葉に「パンとサーカス」というものがありますね。詩人のユウェナリスという方が使い始めた表現だとか。

これは、権力者から与えられる無償の「パン(食料)」と「サーカス(娯楽)」によって、大衆が政治的盲目状態に置かれることを指摘している言葉ですが、ネウリ部落の人々と長老のとった、シャクに対する処分についても通じるものを感じました。

大衆――というか、人間は娯楽について貪欲です。もっともっとおもしろいものを……という人の欲望は留まるところを知りません。もっともっと美味しいものを、といった欲望も、本来味は生きるための摂食と無縁であることを考えるならば、これも立派な娯楽と言えるでしょう。

ネウリ部落の長老が、シャクの処分を提案したとき、部落の人々はこれまでシャクが提供してくれていた娯楽について、思いを馳せるべきだったのではないでしょうか。物語を語ることができなくなってしまい、仕事もろくにしなくなったシャクを、人々は用無しだと考えました。これまでの功績を考えて、処分に異議を唱えることもできたはずなのに……。

「パンとサーカス」の本来の意味とは少し違うかもしれませんが、ここに大衆の貪欲さ、愚かさを見た思いがしました。

ネタバレなし(でもわかる人にはわかってしまうかも)

赤ずきん

Photo by jorgemejia

ラストは最近ブログ記事に書いた影響かとは思いますが、グリム童話の『赤ずきん』を連想してしまいました(童話になる以前、民間伝承――民話―-だった頃の『赤ずきん』です)。

そんなわけで、よろしければこちらも。
赤ずきん/グリム童話×東京グール×魔性の赤=魔法少女赤ずきんちゃん?

 

 

読書メモ

『狐憑』の豆知識

・狐憑:以前のブログ記事にて。
狐人日記 その1 「皆もすなるブログといふものを…」&「『狐人』の由来」

・中島敦 さんの『狐憑』は、ヘロドトスの『歴史』から着想を得て書かれている。

・中島敦 さんは、当初『つきもの』というタイトルで、『狐憑』を発表するつもりだったが、『つきもの』と書いた紙を上から貼って、『狐憑』にタイトルを変更した。この理由は明確にはなっていない。しかしながら、「つきもの」が人に憑く「霊」を表すのに対し、「狐憑」は霊に憑かれた「人」を表す。ゆえに、中島敦 さんが、「霊」であるつきもの(インスピレーション)の方ではなく、「人」であるシャク(一人の人間)に重点を置きたいがためのタイトル変更と考えられる。

難しかった単語

中島敦 さんの小説は、難しい漢字や言い回しが多く、読み進めるのに難儀することも。そんなわけで、読めなかったり、意味の分からなかった単語をピックアップして調べてみました。

陶器に描かれたスキタイ戦士・ネウリ部族:スキタイの一部族、キュティア人はスキタイの別称。

 

 

ヌートリア・水狸:不明確な語。ちくま文庫版全集では「不明。水狗ならばかわうそ、水豹ならばあざらし。」となっている。読みは「すいり」。あるいはヌートリア(ドブネズミ)のこと?

 

カワウソ

Photo by Tambako the Jaguar

・獺:かわうそ。

 

 

 

 

菱の実・菱の實:ひしのみ。種子が食用される。見た目から「悪魔の実」とも……、何系の実なんだろう?

 

 

[まとめ買い] DRAGON BALL モノクロ版(ジャンプコミックスDIGITAL)・鱗族:いろくず。うろこのある動物から転じて魚類。……『ファイアーエムブレム蒼炎の軌跡・暁の女神』に登場する竜鱗族を想像してしまうのは僕だけ? 竜……、龍――あるいは、

 

詩仙・マエオニデェス:吟遊詩人のこと。

 

 

 

 

 

 

以上、『狐憑/中島敦』の読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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