狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『愛と美について/太宰治』です。
文字数13000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約35分。
物語を連作する5人兄妹の話。なんかいい感じ。しかし同じ環境で育つ似た遺伝子を持つ人間が全然性格違うのってなんででしょうね? 自分を演じる人間の不思議。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
五人兄妹がいて皆物語が好きだった。
長男は二十九歳、法学士。尊大だが本当は弱く優しい人、想像力に欠ける。長女は二十六歳、鉄道省勤務、未婚。長身で痩せていてロイド眼鏡(弟妹たちに馬と呼ばれている)。夢見がちだが体は頑健。次男は二十四歳、帝大の医学部在籍。虚弱体質、吝嗇、人を蔑視したがる。高位高官であったことからゲーテに傾倒している。作家の才能は兄妹の中で一番ありそう。次女は二十一歳、ナルシスト。ミスコンに応募しようか三日三晩悩んだことがあったが、身長が足りないことに気づき諦めた。あまり人が読まない小説を読むが、一番好きなのは鏡花。末弟は十八歳、一高の理科甲類に入学。かまってちゃん。家庭内でいざこざがあると必ず口を出したがり家族は皆閉口している。大人のつもり。探偵小説を好む。
父親は五年前に亡くなり、しかし暮らしに不安はない。ブルジョワジー。母親は穏やかで優しい人。梅雨の季節の曇天の日曜日、母は林檎の果汁をしぼり、五人の子供たちがそれを飲む。退屈すると物語の連作をするのがこの家族の習わしだ。
まず長兄が提案する。風変わりな主人公がいい。次女は老人がいいと言う。甘い愛情豊かな、綺麗な物語がいいとまた長兄。末弟が老人は大数学者だと言う。老人の研究について語るが、それは学校で習ったばかりの話で、末弟の数学の記憶があやしくなってくると長女がフォローする。偏屈な老博士が街を散歩してマダムに出会う。次男が引き継ぐ。マダムは老博士の昔の妻だった。二人は別れ、老博士は新しい妻を迎えたらしい――少なくともマダムはそう思っている。今度マダムも職工と再婚することになった。二人はささいな会話を交わして別れる。ナルシストの次女が続ける。老博士はマダムと別れると妻のために薔薇を買って家に帰る。家の中はしんとして、書斎の机にはマダムの写真がきれいに飾られていた。
長兄が最後にとってつけたような補足として博士の容貌を語り、それぞれが語りのあとの物思いに耽っていると、楽しそうに聞いていた母親がそっと外を眺める。あら、家の前にへんなおじいさんが立っていますよ。兄妹五人はぎょっとして立ち上がり、母親はひとり笑い崩れた。
狐人的読書感想
いい雰囲気の小説でしたね。たまに読み返したくなるような感じがします。こういう家族にはなんとなく憧れがあります。お金持ちで暮らしに不自由はなく、やさしくておちゃめなお母さんがいて、個性豊かな兄妹たちがいる――まあお父さんがいないのはちょっと残念でしたが。大家族には大家族の大変さがあるのでしょうが……。
しかし一般的に兄弟姉妹ってそれぞれに個性があるイメージなんですよね。同じ環境で育っているはずなのに、なぜ別々の個性を有するようになるのか、ちょっと疑問に思ったりします。似たような性格やものの考え方になりそうなものですが、実際にはそうでない場合のほうが多かったりする気がするんですよね。
遺伝的、環境的ないろいろな要因があるのでしょうが、ひとつには家庭での立ち位置をお互いに演じ分けているのかな、とか考えてしまうんですよね。よく言われるのは、長男長女はしっかり者で末っ子は甘えん坊みたいな。家庭内でも他の家族に求められている役割を演じているのかと思うとなんだか不思議な感じがします。
グループ、学校や会社などでも、人間は社会の中で自分に求められている役割を敏感に察し、演じているのだとふと感じることがあったりしますね。
なんか人間の不自由さを思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
こういう家族いいですね。
狐人的読書メモ
・生まれた順番が性格に関係する不思議。
・『愛と美について/太宰治』の概要
1939年(昭和14年)5月、『愛と美について』にて初出。「最も軽薄で、しかも一ばん作者に愛されてゐる作品」と太宰治は述べている。
以上、『愛と美について/太宰治』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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