紫紺染について/宮沢賢治=読書でふれる伝統工芸。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

紫紺染について-宮沢賢治-イメージ

今回は『紫紺染しこんぞめについて/宮沢賢治』です。

文字数6000字ほどの童話。
狐人的読書時間は約12分。

一度絶えた伝統工芸を復活させるのは大変。やり方がわかる職人さんがいない。詳しく書かれた本もない。古い文献によれば山男がそれを知ってるらしい。じゃ、山男、召喚しよっか。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

岩手県盛岡市の産物に紫紺染しこんぞめというものがある。紫紺染とは、桔梗ききょうによく似た草(多年草ムラサキ)の根からとれる染料で染めたもの。昔はとても有名だったが、明治になり安価なアニリン色素が輸入され、一度廃れてしまった。

大正時代に紫紺染を復活させようと紫紺染研究所が立ち上がった。しかし職人はすでになく、製法も染め方も詳しい記録が残っていない。

ある日、研究所のメンバーのひとり、工芸学校の先生が古い文献を見つけた。そこには西根山にしねやまの山男が城下町に紫紺を売りにきて、酒を買って帰っていった旨の記載があった。

そこで人々は招待会を開き、西根山の山男から紫紺染のやり方を教えてもらえないかと考えた。西根山の山男宛てに招待状を送ると、当日、黄金色きんいろ目玉あかつらの西根山の山男が会場に姿を現した。

人々は誘導尋問するように紫紺染の話題をそれとなく出すが、山男はそれについては何も知らない様子。人々はがっかりしてしまう。

が、山男がべろべろに酔っぱらってしまうと、昔父親に聞いたという紫紺染の製法のかなめと思しきやり方を話してくれた。それには黒いしめった土を使うという。山男は酔うと記憶がよみがえる特異な体質だった。

こうしてその夜の招待会は無事終わり、山男は帰っていった。こういうことがあって、盛岡の紫紺染は平和記念東京博覧会(大正11年3月)で二等賞をとることができた。

狐人的読書感想

宮沢賢治さんの山男シリーズですね。山男ってどういう存在なんでしょうね? 宮沢童話の山男は怪異や妖怪の類みたいですが。猟師やきこりをして山に住む男や登山者なんかも山男と呼ばれますよね。ポケモンにも出てきますよね、やまおとこ。

……さて。

「紫紺染」は「紫根染」と書くようです。「紺」と「根」をかけたのか、宮沢賢治さんはあえて「紫紺染」と記述しているらしいです。

実際にあった話に「山男の話」を創作した物語。一度は廃れてしまった伝統工芸を復活させようとして、山男を召喚したお話ですね(?)

新しく便利なものが生まれると、古きものは廃れてしまいます。しかし古いものには古いもののよさがある。伝統を守っていくのは大切なことに思えますが、現実は厳しいものがあるみたいです。

一番の問題は後継者が見つからないこと。

昔の伝統工芸の職人は弟子入りというかたちをとっていたため、修行中はなかなかお給料などはもらえませんでした。

お給料がないと現代では生きていくのが難しいですね。

いまでも最初の半年とかお給料の出ない伝統工芸の求人が出たことがあって、「ブラック労働」とか炎上したことがあったそうですが、技術を教えてもらうのだと考えればなかなか一概には言えないところなのかもしれませんね。

最近では伝統工芸に興味を持った外国人の方とか、趣味でやりたい主婦や高齢者の方々とか、そういうひとたちの教室としてにぎわっているところもあるらしいです。

伝統工芸を守っていくのは大変、そして廃れてしまった伝統工芸を復活させるのはもっと大変、なんだろうなぁ……と想像した、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

読書でふれる伝統工芸。

狐人的読書メモ

・ちなみにポケモンのやまおとこは全メインシリーズ皆勤賞のNPCトレーナーであるらしい。

・『紫紺染について/宮沢賢治』の概要

生前未発表。『ポラーノの広場』収録。山男シリーズ。紫根染の資料としても興味深い。文明批判がこめられているとの読み方も。

以上、『紫紺染について/宮沢賢治』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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