狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『闇中問答/芥川龍之介』です。
文字6500字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約22分。
天使の声と悪魔の声。それは自分の心の声。よくも悪くも自己否定。自己否定の先に「どうするの?」が大事。自分の甘えに向き合うのは、苦しくて気持ちいい。自己啓発的自問自答。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
或声(天使あるいは悪魔)と僕(芥川龍之介)との対話形式の文章。
一(天使編)
『或声 お前の言ふことは自己弁護だ。自己弁護位手易いものはない。
僕 自己弁護は容易ではない。若し手易いものとすれば、弁護士と云ふ職業は成り立たない筈だ。』
二(悪魔―メフィストフェレス?―編)
『或声 お前の書いたものは独創的だ。
僕 いや、決して独創的ではない。第一誰が独創的だつたのだ? 古今の天才の書いたものでもプロトタイプは至る所にある。就中僕は度たび盗んだ。』
三(悪魔―デーモン?―編)
『或声 ではいつも気をつけてゐろよ。第一俺はお前の言葉を一々実行に移すかも知れない。ではさやうなら。いつか又お前に会ひに来るから。
僕 (一人になる。)芥川龍之介! 芥川龍之介、お前の根をしつかりとおろせ。お前は風に吹かれてゐる葦だ。空模様はいつ何時変るかも知れない。唯しつかり踏んばつてゐろ。それはお前自身の為だ。同時に又お前の子供たちの為だ。うぬ惚れるな。同時に卑屈にもなるな。これからお前はやり直すのだ。』
狐人的読書感想
天使や悪魔と問答している芥川龍之介さん、といった作品ですが、「一」の天使はけっこう厳しめのことを言っている印象で、「二」のメフィスト(?)は慰めるようなことを言っている印象で、いずれにせよ「自分はそんな人間じゃない!」と、「僕」(芥川龍之介さん)が天邪鬼的に反論している感じがしました。
「自分はいい人間だ」と言うのも、「自分は悪い人間だ」と言うのも、どちらも「自分を甘やかしている」みたいなものなのかなぁ、というのは、たまに思うことなのですが、だったら「自分をどう言ったらいいんだろう?」というのは、いつも迷うところです。
「一」も「二」も、よくも悪くも「自己否定」しているみたいで、自己否定はある種の陶酔感をともなって心の負担を軽減してくれる気がするのですが、それだけで終わってしまって、あまり意味がないようにも思えるんですよね。
自己否定のあとには「じゃあ、どうする?」という質問が必要な気がするのですが、それが本作の場合の「三」なのかなぁと感じます。
自己肯定だけではたしかにナルシストになってしまいそうですし、自己否定ばかりしていても意味がなく、「適度な自己否定したあとに適度な自己肯定をして、理想の自分になっていきましょう!」みたいな、「自己啓発的自問自答」という読み方をしていいんでしょうかね、これは?
とても興味深い作品だと思いました。
天使の声、悪魔の声とはいっても、結局それは自分の声であって、どんなに厳しい内容でも、慰められるようなことを言っていても、どこかに自身の甘えが含まれていて、「その甘えにどう向き合うのか?」ってあたりが大事になってくるのかなって気がしました。
闇中問答は、苦しいことでもあり、気持ちのいいことでもあり、しかし結局、現実に活かせなければ無意味なのでしょう。
とはいえ、それを現実にするのがやっぱり難しいわけであって、「それができるなら誰も闇中問答しないでしょ」って感じですが、闇中問答しなければ現実の実現もありえないわけで……、「うわー、どうすればいいんだぁ……」と闇中問答した、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
自己否定も自己肯定も理想実現へのステップ?
狐人的読書メモ
・完璧主義の麻痺。人間は完璧を追求すると「完璧にできないからやらない」となってしまう。
・他人を許せない。世の中は二択評価の基準では成り立っていない。
・人間は他人に無関心。他人は自分に興味がない。
・自己否定も自己肯定も甘えとはいえ、そのバランスが重要とはいえ、自己肯定の方が生きる上では有益であるかもしれない。
・『闇中問答/芥川龍之介』の概要
1927年(昭和2年)『文藝春秋』にて初出。初出時表記は『闇中模索(遺稿)』だった。自己啓発的自問自答。心の声との対話。著者の遺書である、という読み方もある。
以上、『闇中問答/芥川龍之介』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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