ア、秋/太宰治=ア、秋…の味覚松茸は他の国では嫌われてるらしい。

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

ア、秋-太宰治-イメージ

今回は『ア、秋/太宰治』です。

文字数1500字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約4分。

太宰治のネタ帳、創作ノートの一部? 心に残るフレーズが一つは見つかると思う。ア、秋…といえば食欲の秋だけど、それは冬の準備のために食欲が高まる動物の本能なんだ。ア、秋…といえば…

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

(今回は全文です)

『ア、秋/太宰治』

本職の詩人ともなれば、いつどんな注文があるか、わからないから、常に詩材の準備をして置くのである。
「秋について」という注文が来れば、よし来た、と「ア」の部の引き出しを開いて、愛、青、赤、アキ、いろいろのノオトがあって、そのうちの、あきの部のノオトを選び出し、落ちついてそのノオトを調べるのである。

トンボ。スキトオル。と書いてある。

秋になると、蜻蛉とんぼも、ひ弱く、肉体は死んで、精神だけがふらふら飛んでいる様子を指して言っている言葉らしい。蜻蛉のからだが、秋の日ざしに、透きとおって見える。

秋ハ夏ノ焼ケ残リサ。と書いてある。焦土である。
夏ハ、シャンデリヤ。秋ハ、燈籠。とも書いてある。
コスモス、無残。と書いてある。

いつか郊外のおそばやで、ざるそば待っている間に、食卓の上の古いグラフを開いて見て、そのなかに大震災の写真があった。一面の焼野原、市松の浴衣ゆかた着た女が、たったひとり、疲れてしゃがんでいた。私は、胸が焼き焦げるほどにそのみじめな女を恋した。おそろしい情慾をさえ感じました。悲惨と情慾とはうらはらのものらしい。息がとまるほどに、苦しかった。枯野のコスモスに行き逢うと、私は、それと同じ痛苦を感じます。秋の朝顔も、コスモスと同じくらいに私を瞬時窒息させます。

秋ハ夏ト同時ニヤッテ来ル。と書いてある。

夏の中に、秋がこっそり隠れて、もはや来ているのであるが、人は、炎熱にだまされて、それを見破ることが出来ぬ。耳を澄まして注意をしていると、夏になると同時に、虫が鳴いているのだし、庭に気をくばって見ていると、桔梗ききょうの花も、夏になるとすぐ咲いているのを発見するし、蜻蛉だって、もともと夏の虫なんだし、柿も夏のうちにちゃんと実を結んでいるのだ。

秋は、ずるい悪魔だ。夏のうちに全部、身支度をととのえて、せせら笑ってしゃがんでいる。僕くらいの炯眼けいがんの詩人になると、それを見破ることができる。家の者が、夏をよろこび海へ行こうか、山へ行こうかなど、はしゃいで言っているのを見ると、ふびんに思う。もう秋が夏と一緒に忍び込んで来ているのに。秋は、根強い曲者くせものである。

怪談ヨロシ。アンマ。モシ、モシ。
マネク、ススキ。アノ裏ニハキット墓地ガアリマス。
路問エバ、オンナ唖ナリ、枯野原。

よく意味のわからぬことが、いろいろ書いてある。何かのメモのつもりであろうが、僕自身にも書いた動機が、よくわからぬ。

窓外、庭ノ黒土ヲバサバサイズリマワッテイル醜キ秋ノ蝶ヲ見ル。並ハズレテ、タクマシキガ故ニ、死ナズ在リヌル。決シテ、ハカナキていニハ非ズ。と書かれてある。

これを書きこんだときは、私は大へん苦しかった。いつ書きこんだか、私は決して忘れない。けれども、今は言わない。

捨テラレタ海。と書かれてある。

秋の海水浴場に行ってみたことがありますか。なぎさに破れた絵日傘が打ち寄せられ、歓楽の跡、日の丸の提灯ちょうちんも捨てられ、かんざし、紙屑、レコオドの破片、牛乳の空瓶、海は薄赤く濁って、どたりどたりと浪打っていた。

緒方サンニハ、子供サンガアッタネ。
秋ニナルト、肌ガカワイテ、ナツカシイワネ。
飛行機ハ、秋ガ一バンイイノデスヨ。

これもなんだか意味がよくわからぬが、秋の会話を盗み聞きして、そのまま書きとめて置いたものらしい。

また、こんなのも、ある。

芸術家ハ、イツモ、弱者ノ友デアッタはずナノニ。

ちっとも秋に関係ない、そんな言葉まで、書かれてあるが、或いはこれも、「季節の思想」といったようなわけのものかも知れない。

その他、

農家。絵本。秋ト兵隊。秋ノカイコ。火事。ケムリ。オ寺。

ごたごた一ぱい書かれてある。

狐人的読書感想

創作ノートやネタ帳を一部公開している感じですね。この中には誰でも一つくらいは「おっ」ってなるフレーズがあるような気がします(僕の場合は『トンボ。スキトオル。』でした)。

ところで四季(春夏秋冬)で一番好きな季節って、人によってけっこう分かれそうな気がしますね。

ネットのアンケートとか見てみると、「春」と「秋」で一位二位を争い、「夏」と「冬」で三位四位といった感じです。

たしかに、
「春」と「秋」どっちが好き?
「夏」と「冬」どっちが好き?
という質問のほうが意見が分かれそうですね。

「暖かい」のがいいか「涼しい」のがいいか、あるいは「暑い」のがマシか「寒い」のがマシか、といった「気候的な過ごしやすさ」が問題となりそうです(ちなみに僕の場合は「春」「夏」ですかね)。

ア、秋といえば「食欲の秋」ですが、動物は冬の準備のために秋は食欲が増進するらしく、それは人間も同じなのだとか。

ア、秋の味覚の代表である「松茸」は、じつは日本でしかあまり食べられないそうです。ほかの国ではあの香りが「臭い」と感じられて嫌われているのだとか(僕も松茸よりはハンバーグ派ですかね……)。

ア、秋(9月)は世界的には入学シーズンですよね。日本の4月の入学式も松茸を食べるの同様、世界的に見れば珍しいということになります。

ア、秋のお月見では「兎が餅つきをしている」といわれたりしますが、ヨーロッパでは「椅子に座って読書するおばあさん、髪の長い女性」、アメリカでは「人の横顔、ワニ、トカゲ」、カナダでは「バケツを運ぶ少女」などさまざまみたいです。

ア、秋の野菜「かぼちゃ」の名前の由来は「カンボジア」なんだそうです。

そんなわけで『ア、秋』……の話題をメモ的に絞り出してみた、今回の狐人的読書感想(?)でした。

読書感想まとめ

ア、秋…の味覚松茸は他の国では嫌われてるらしい。

狐人的読書メモ

・ちなみにア、秋の味覚「栗」は、果物なのか野菜なのか木の実なのか、明確には定まっていないらしい(分類の上では「種実類」)。

・ちなみにちなみに「ケーキのモンブラン」の名前の由来は「山のモンブラン」であるらしい(モンブランの山みたいに立派なケーキを作りたい……と思ったらしい)。

・『ア、秋/太宰治』の概要

1939年(昭和14年)『若草』にて初出。太宰治のネタ帳、創作ノートの一部? いいフレーズがたくさんあった。

以上、『ア、秋/太宰治』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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