狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『婚期はずれ/織田作之助』です。
文字数8000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約25分。
お見合い結婚が普通だった時代、
親のせいで行き遅れてしまうこともあったという話。
時代遅れって思うかもだけど、
非婚・晩婚、代理婚活・親コン、
意外と現代っぽい話だよ、婚期はずれ。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
戦前の大阪、朝日理髪店の当主が亡くなると、32歳の長男がその家業を継ぐ。長男はまだ独身、26歳の長女も23歳の次女もいまだ独身のままだ。さらに下には13歳の次男、17歳の三女、10歳の四女と、計2男4女の子供たちがいる。
母おたかは長女と次女の行き遅れに頭を悩ませていた。とはいえ、その原因はおたかにあった。縁談がきても見栄をはってしまい、ちょっとでも気に入らないところがあれば、すぐに話を断ってしまうのだ。仲人はいつもあきれて帰っていった。
そんなおたかも内心では焦りがある。が、どうしても見栄を捨て切れない。娘たちの器量もたいしてよくなければ、本人たちも哀れだ。おたかは近所にこれはと思える男がいれば、その家族と懇意にしたりもするのだが、うまくいかない。
結婚に縁遠い小姑が二人いては、長男にも嫁の来手がない。おたかは子供たちがどんどん行き遅れていくことに引け目を感じながら、見栄っ張りな性格も相まって、人々にいっそう頑なな態度を取るようになる。近所づきあいは悪化していく。
そうこうするうちに、10年の歳月があっという間に流れてしまう。20歳になった四女の妊娠が発覚する。相手の男は肺病で亡くなったという。おたかはぺたんと尻もちをつく。しかし赤ん坊が生まれると、その世話に行き遅れた娘たちが活気づく。
赤ん坊が暗かった家に明るさを取り戻してくれたのだった。
狐人的読書感想
女性もバリバリ働く現代、晩婚化が進み、もっといえば非婚化が進み、あまり「行き遅れ」ということは意識されない時代になってきているような気が狐人的にはするのですが、本人も親たちも、決してそんなことはないんでしょうかね?
現在、女性の平均結婚年齢は29歳とかいわれているそうで、都会では32,3歳、田舎では30歳で結婚していない女性は「行き遅れ」と思われてしまうのだとか。ちょっと意外な感じがします。
行き遅れ女子の特徴は、キャリアウーマン、隙がない、美人、だらしない、気持ちが重い、プライドが高い、高望みしている、といった事柄が挙げられるのだそうで、本作のように親に問題がある、というケースはやはり現代では少ないみたいですね。
「親に問題がある」なんていってしまいましたが、正直この小説を読んでいて、「親任せの子供たちにも問題があるのでは……?」と思ってしまったのですが、どうやら当時はお見合い結婚が主流だったようで、現在のように恋愛結婚が許されない風潮もあったといいます。
なんだか信じられないような話だと思ったのですが、じつはいま、婚活業界では「代理婚活」や「親コン」と呼ばれるものが活況だと聞きます。
代理婚活、親コンの名前が示す通り、これは子供の代わりに親が婚活パーティーをして、それぞれの親が決めた相手と、当事者である子供たちが結婚するという――こちらも時代を逆行するような、信じられないような話だと思いましたが、どうでしょうね?
結婚は当人たちばかりでなくて親同士の関係も大事ですし、仕事に忙しくて恋愛どころではない子供たちに代わって親が婚活をするというのは、とても合理的なようにも思えるのですが、「過保護過ぎない? それでいいの?」って感じも否めません。
ただし、やっぱりデメリットもいろいろあるみたいで、この小説に登場する母おたかのように、子供が相手を気に入っていたとしても、親が勝手に断ってしまうケースもあるのだとか(まあ、婚活費用は全部親が負担しているので、強く言えないという事情はあるようですが)。
戦前の時代遅れの結婚観を知ることができる小説として紹介しようとか考えていたのですが、案外いまの時代に即した小説だったことに驚いてしまいました。
この小説の持つもう一つの特徴として、織田作之助さんの他作にも見られるように、やはり「庶民が描かれている」ということが挙げられるかと思います。
行き遅れた娘たちが暮らす暗い雰囲気の家族に、新しく生まれてきた赤ちゃんが明るさと元気を取り戻してくれる結末は、著者の庶民に向けるあたたかな目が感じられる、という感じがします。
結婚は人間の暮らしに大きく根をはっているものなので、今と昔とでは180度変わっているようでいて、根底の部分では共感できるところがあり、時代の流れとともにまた180度回って、昔に戻っているようなところもあって、なんだかおもしろい発見をしたように感じた今回の読書感想でした。
読書感想まとめ
恋愛結婚が主流の現代、お見合いの話は古いと思っていたのですが、晩婚化・非婚化が進む現在、親のお見合いである代理婚活、親コンが活況だと聞いておもしろく思いました。
狐人的読書メモ
・非婚化は興味深い話題。おそらくこの直接的な対策はもはや難しい。これだけ浮気報道が騒がれている現代、少子化対策にはもう富裕層の重婚を認めて、税を取るしかないのでは……とか考えてしまう。その税金を庶民層の子育て支援に回すとか。当然モラルの問題はあるだろうけど、じきにそんなことも言ってられなくなっていくような気がしている。
・『婚期はずれ/織田作之助』の概要
1940年(昭和15年)『会館芸術』にて初出。『織田作之助全集 1』(講談社)収録。織田作之助の知り合いの家がモデルとなっているらしい。
以上、『婚期はずれ/織田作之助』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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