屋根裏の散歩者/江戸川乱歩=「絶対犯罪しない!」って断言できる?

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

屋根裏の散歩者-江戸川乱歩-イメージ

今回は『屋根裏の散歩者/江戸川乱歩』です。

文字数30000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約84分。

三郎が屋根裏の散歩という異常な趣味を持ち、
異常な完全犯罪を成し、小五郎にだまされちゃう話。
その異常性は必ずしも理解できないものではなく、
では誰もが異常犯罪者に…?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

郷田三郎ごうださぶろう。二十五歳。職業にも遊びにも興味を持てない彼は、素人探偵の明智小五郎あけちこごろうと知り合ったことをきっかけに、「犯罪」という事柄に並々ならぬ興味を覚えるようになる。

あるとき、三郎は新築の下宿に引っ越し、ひょんな思いつきから押入れの上段に寝ていると、天井板の一枚がはずれて、屋根裏に上れることを発見する。

その日から、彼の「屋根裏の散歩」が始まる。天井板にはわずかな隙間や節穴があり、ほかの部屋の住人たちの生活を覗き見ることができるのだ。それはまさに病的な趣味といえるものだった。

三郎はある男の部屋を覗き、一つの犯罪を思いつく。男の名は遠藤といい、歯医者の助手を務めている。以前部屋に誘われていったとき、モルヒネの小瓶を物入れから取り出して見せ、女と心中しようとしたことがあるなどと、さも得意げにうそぶいていた。

三郎はまず遠藤の部屋を訪ねて話し込み、遠藤がトイレに立ったすきにモルヒネの小瓶を盗み出す。そして屋根裏の散歩を続け、チャンスが訪れるのを待つ。

チャンスはやってきた。それは大口を開けて寝ている遠藤のその口と、天井の節穴が一直線上に一致する瞬間だった。三郎は、モルヒネを数滴、遠藤の口へポトリと落とす。遠藤は毒薬を飲んで絶命する。

モルヒネの小瓶を節穴から落とし忘れるというミスはあったものの、それもなんとか成し遂げた。密室の中の完全犯罪は完成したかに見えた。現に警察は失恋による自害だと結論したようだ。

誰も三郎を疑えるはずがない――はずだった。

事件から三日目、明智小五郎が噂を聞きつけ、探偵的興味から三郎を訪ねてきた。三郎はわかるはずがないと、積極的に調査に協力するが、明智の二つの指摘にハッとさせられる。

・事件発生の朝、遠藤の部屋の目覚まし時計が鳴っていた。その夜自害しようという人間が、翌朝の目覚ましをセットするだろうか?

・事件の日から、三郎はあれほど好きだった煙草を吸わなくなっていた。

しかし、三郎の犯罪だという確たる証拠は何ひとつない。

それから半月後、夜、三郎が部屋に帰って押入れを開くと、逆さの遠藤の首が!――それは押入れの天井から降りてきた明智だった。

明智は小さなボタンを三郎に見せる。遠藤の部屋の天井裏に落ちていたものだが、これは君のシャツのボタンだろうね。三郎がハッと胸を見ると、ボタンが一つとれていた。もう駄目だ――三郎は犯行を自白した。

しかし、ボタンは明智のトリックだった。前にきたとき、三郎のシャツのボタンがとれていることに気づき、事前に同じものを仕入れていたのだ。やはり証拠は何ひとつない。が、明智は警察から、モルヒネの小瓶が被害者の煙草の箱の中に落ちていたことを聞いて、いよいよ三郎の犯行を確信した。

煙草の箱の中にモルヒネの小瓶を落としたことから、「煙草イコール自身の犯した罪」という一種のトラウマが生じ、三郎は煙草を吸えなくなっていたのだった。

狐人的読書感想

『屋根裏の散歩者』は江戸川乱歩さんの代表作の一つと数えられるくらい有名な小説のようですね。

何度も映画化やドラマ化がされているそうで、僕もなんとなくタイトルくらいは耳にしたことがあるような気がしていました。

江戸川乱歩さんといえば、作品制作の裏話みたいなものがずいぶんおもしろい印象を持っているのですが、この小説にもありました。

なんでも『屋根裏の散歩者』の着想は、江戸川乱歩さんが会社勤めをしていた頃、会社をサボって社員寮の押入れに隠れて寝ていたこと、自宅の屋根裏に侵入した経験――など、実際の体験から得られたものなのだそうです。

なんだか子供みたいなことをしていたんだなあ、といった感じですね。

さらに、この作品は「ネタ切れで、間に合わせで、とても苦労して書いたのだけど、めちゃくちゃな出来に、もう俺は駄目だ……、と悲しんでいたのに、案外好評だった」というようなものだったそうです。

江戸川乱歩さんのこのストイックさというかネガティブさというか、いつもシンパシーを感じるところなのですが、どうでしょうね?

毎回作品もおもしろいのですが、何よりその制作秘話がおもしろくて、それを集めて1冊本があってもいいような思いがするのですが、……ひょっとして?

ともあれ、ここからは『屋根裏の散歩者』の中身について、少し気になったところなどを書いておこうと思います。

まず、なんといっても、この作品は「明智小五郎もの」だということでしょうか、前知識がなかったので、そのことにはちょっと驚きました。

とはいえ、明智小五郎は最初に名前がちょっとだけ、やはり最後にちょっとだけ登場して、あっさりと事件を解決してしまう感じで、だからこそインパクトが強いというところはあるのですが、僕の印象にはあまり残らなかったように思います。

印象に残ったのは、本作の犯人であり主人公ともいえる、郷田三郎のほうなんですよね、やっぱり。

一言でいうと「異常犯罪者」として描かれている人物ですが、それが必ずしも「まったく理解できない異常さ」ではないというところに、興味を持ちます。

興味を持ちます、というか、三郎は何事にも興味を持てない人なのですが、しかし、これを厳密にいうと「異常に飽きっぽい性格」といえるかと思います。

職業や趣味に飽きてしまう、というのは誰にでもあるところで共感しやすく感じるのですが、だけど実際、飽きたからといって、趣味はともあれ職業を転々と変えてしまうというのは、ちょっと普通ではないような気がするんですよね。

「屋根裏の散歩」にしても、もちろん人の生活や秘密を覗き見たいというような願望は、誰にでも少しはあるように思えるのですが、とはいえそれを現実に実行する人は少ないのではないでしょうか?

本作のテーマである「犯罪をしてみたい」ということについても、前述と同様なことがいえるかと考えます。

タブーへの興味、やってはいけないことをやってみたくなる気持ち、というのは誰もが持っている感情のように思うのですが、しかしこれを実際にやってしまう人間は世の中の少数派で、その中の行き過ぎてしまった人たちが犯罪者と呼ばれるようになってしまうわけです。

この「犯罪を実行してしまう人と実行しない人の差」というのはなんなのだろうと考えてみます。それは誰でも持っている気持ちを制御できるかできないかの違いなのだろうという気がします。

脳の作りに違いがあって、脳内分泌のコントロールがうまくできず、それが犯罪行為につながっていく、ということなのでしょうか。

たとえば、「やってはいけないことをやってしまう」ような精神疾患に、強迫性観念やトゥレット障害というようなものがあるそうです。

また、「カリギュラ効果」という心理作用もあって、テレビ番組のピー音やモザイクはこの効果を利用しているといいます。

自分の感情や行動を抑制できないことが一種の精神病なのだと捉えるならば、それは先天的なものか後天的なものか、というのも興味深い問題です。

先天的であれば、たとえば「犯罪遺伝子」といったような、ある生物種では異常行動を起こす者が、遺伝的に一定数必ず現れるという説があります。

後天的であれば、マンガ、アニメ、ゲーム――幼少期から非現実世界にどっぷり浸かることのできる現在、現実と非現実との区別が曖昧なまま大人になってしまったり、またその原因として、親の共働きなどで、子供一人家の中で過ごす時間が増え、家庭での情緒教育や倫理教育が行き届かないから、などという話も聞きます。

郷田三郎は異常犯罪者でしたが、その異常性は僕のまったく理解できないものではなく、だからこそ、僕自身も異常犯罪者になり得る可能性があるのではないか、などと想像してみると、ちょっと恐くなってしまうような、そんな今回の読書でした。

読書感想まとめ

江戸川乱歩さんの『屋根裏の散歩者』の制作秘話にシンパシー。自分も異常犯罪者になり得るかもしれない恐怖。

狐人的読書メモ

・『どんな遊びも、どんな職業も、何をやって見ても、一向この世が面白くないのでした』――自分にもわかる。おそらくある程度は誰にでもわかることなのではなかろうか?

・『しかし、そんな彼にも、生命いのちしむ本能けはそなわっていたと見えて、……』――自分にもわかる。自ら命を絶つ行為がいいことだとは言えないが、それができてしまう人には何がしかの凄さを感じてしまう。

・『彼に出来そうな職業は、片端かたっぱしからやって見たのです、けれど、これこそ一生を捧げるに足ると思う様なものには、まだ一つもでっくわさないのです。』――一生を捧げるに足ると思える仕事ができている人はごく一部なのではなかろうか? あなたがもしそう思っていまの仕事ができているのだとしたら、それはとても幸せな、羨ましいことのように思ってしまう。

・『天網恢々疎てんもうかいかいそにしてもらさず』――悪いことをすれば必ず報いがある。そう思いたいが、そうではない現実がある、という気がする。

・全体的にまとまりのない感想になってしまった。タブーに惹かれる気持ちの正体が、調べてみてもうまく納得できない部分があった。また機会を見つけてチャレンジしたい話題。

・『屋根裏の散歩者/江戸川乱歩』の概要

1925年(大正14年)『新青年』にて初出。明智小五郎もの。江戸川乱歩が、代表作の短編集にはいつも入れていた、という著者の代表的な短編小説の一つ。制作秘話と必ずしも異常とは言い切れない異常性がおもしろい。

以上、『屋根裏の散歩者/江戸川乱歩』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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