作家の生活/横光利一=小説の神様の小説家になるための8のこと。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

作家の生活-横光利一-イメージ

今回は『作家の生活/横光利一』です。

文字数4000字ほどの随筆。
狐人的読書時間は約15分。

小説の神様・横光利一の小説家になるための8のこと。
1日1回自分の死を想像する、創作者は孤独、
創作は副業とすべき……など。
プロ作家、あるいはプロじゃないからこその創作とは?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

1.優れた作品を書く方法の一つとして「一日に一度、自分がその日のうちに死ぬと思うこと」とジットはいっている。

2.親としての作家と、作家としての作家と。子供を不良少年にし、飢えさせてまで売れそうにない作品を書き続けるべきか?

3.創作を作家の本業とすべきではない。創作を作家の副業とすべきだ。

4.作家は究極の作品を目指さなくてもよい。いまの自分ができうる最善の努力を払えばよい。

5.一つ進歩した作品を書けば、一つ退歩した作品を書く。そうしないとつぎの進歩を見失ってしまう。

6.意識的な観察はしない。自然に目に触れ、耳に入ってくることを大切にする。

7.売れるジャンル、売れないジャンル、ではなく、自分が書きたいものを書く。そのためには成功を願ってはいけない。

8.そもそも作品に成功というものはない。どんな大天才が書いても、作品にはやはり書けない部分がひそんでいるからだ。しかしそれは必ずしも作品の欠点とはなりえない。事例として、谷崎潤一郎『春琴抄』『顔世』、宇野浩二『子の来歴』。

狐人的読書感想

今回のあらすじは内容の要点を書き出してみました。

題して「小説の神様・横光利一の小説家になるための8のこと」といった感じでしょうか?

ひょっとすると誤解もあるかもしれませんが、一つ一つに思わされるところがあります。

それでは上から順を追って綴っていきます。

1.優れた作品を書く方法の一つとして「一日に一度、自分がその日のうちに死ぬと思うこと」とジットはいっている。

ジットとは、フランスの小説家アンドレ・ジットさんのことのようです。この方の書かれた『贋金つくり』は、横光利一さんに大きな影響を与えたと言われています。

小説、映画、マンガ、アニメ、ゲーム――どんな創作物でも「生と死」ということが描かれていない作品は、少ないように思います。

おもしろい作品には、やはり「生と死」が描かれていることが多いように感じられて、「1日1回自分の死を想像する」というのは、いわれてみれば創作において、たしかに有効な方法である、というふうに思わされます。

2.親としての作家と、作家としての作家と。子供を不良少年にし、飢えさせてまで売れそうにない作品を書き続けるべきか?

よく「創作者とは孤独なものだ」みたいなことがいわれますよね。それは精神的な面においていわれるのと同時に、人間関係の面でもいえることのように思っています。

創作はお金にならない場合のほうがはるかに多いです。結婚し妻を持ち子を育てながら、創作で生活するのは難しく感じられます。

とはいえ、守る者があったり、支えてくれる人がいてがんばれる、ということもありますよね。創作者は孤独であるべきか、いろいろな観点から考えさせられるテーマです。

3.創作を作家の本業とすべきではない。創作を作家の副業とすべきだ。

創作は副業とすべき、というのは、現代でも(現代だからこそ)思うところが大きいです。とくに小説は本業として目指すよりも趣味として続けていくべきものなのかもしれませんね。

生活に困窮して、自分を追い詰めて書いたとしても、良い作品が生まれるとは限らず、良い作品が書けなければ人生を台無しにしてしまうかもしれません。

もちろんこれは、他のどんな芸術や、夢といわれるような生計を立てるのが難しい職業を追い求める場合にも、いえることでしょうね。

副業や趣味ならば失っても困ることはありません。何かのきっかけで認められて成功する可能性だってあります。

だけどどうしても、夢ばかり追いかけてしまうのが人間だという気がしてしまいます。……割り切るのがなかなかに難しく感じてしまうところです。

4.作家は究極の作品を目指さなくてもよい。いまの自分ができうる最善の努力を払えばよい。

これは非常に身につまされる話でしたね。

何かを書いていると、人称とか形式とか、あるいはこのストーリーはおもしろいのか、いろいろと考えてしまって、なかなか書き進められなくなることが多々あります。

だけど究極の作品はありえないし、書き進められず悩んでいても、いきなり文章力やストーリー構成力がアップするわけでもないんですよね。

とにかくいまの自分で書けるものを書いていくしかないんだ、ということは、常に意識しておきたい心得だという気がしました。

これを再認識できただけでも、狐人的にこの作品を読んだ価値は充分にありました。

5.一つ進歩した作品を書けば、一つ退歩した作品を書く。そうしないとつぎの進歩を見失ってしまう。

これはいかにも先進的な作品に挑戦し続けていた横光利一さんらしい考え方ですね。

いまの時代はあらゆる作品が出尽くしていて、新しいことをするというのはだんだんと難しくなってきているように感じられますが、しかし世間的に新しくなくとも、自分の中では新しいこと、と考えてみれば、案外できそうな気にもなってきます。

今回は自分の中で新しい試みを試してみたら、次回は前回に戻ってそのテーマを吟味してみる、というのはたしかに技術向上のための有効な手段のように思えてきます。

思えるだけで、やろうとするとできなかったりする気もしますが、……そう考えると、やはり天才の発想なのでしょうかねえ……、判断に迷うところです。

6.意識的な観察はしない。自然に目に触れ、耳に入ってくることを大切にする。

普段から意識的な観察をすることがなかったので、逆に意識的な観察をしてみたいと思いました。自然体も意識的も、どちらも重要なように感じられます。

7.売れるジャンル、売れないジャンル、ではなく、自分が書きたいものを書く。そのためには成功を願ってはいけない。

これもなあ……書きたいものを書いて売れている作家さんって、どのくらいいるものなんでしょうね?

とはいえ、書きたいものだからこそ、おもしろいものが書けるというのもたしかにいえるでしょうし、書きたいものを書くために創作を副業とすべき、ということもあるのでしょうね。

芥川龍之介さんの『漱石山房の冬』でも、夏目漱石さんが芥川龍之介さんに同じようなアドバイスをしていて、天才が天才に言えることだと感じたのを、ふと思い出してしまいました。

8.そもそも作品に成功というものはない。どんな大天才が書いても、作品にはやはり書けない部分がひそんでいるからだ。しかしそれは必ずしも作品の欠点とはなりえない。事例として、谷崎潤一郎『春琴抄』『顔世』、宇野浩二『子の来歴』。

4.に通じることなんですかね。なんでもつめこんで書いてしまいがちになりますが、なんでも書かれているからといって良い作品とはなりえず、逆に書かれていないことがあるからこそ惹きつけられる作品となる、みたいな。

もちろん、どんなにつめこもうとしても、必ず書けない部分が出るということでもあるのでしょうが……事例として挙げられている作品はまた読んでみたいと思います。

以上、「小説の神様・横光利一の小説家になるための8のこと」でした(?)

読書感想まとめ

小説の神様・横光利一の小説家になるための8のこと(?)

狐人的読書メモ

プロの作家じゃないからこそ考えるべきこと。創作は副業とすべきということ。

・『作家の生活/横光利一』の概要

1934年(昭和9年)初出。初出誌不明。大正~昭和初期の小説家、新感覚派の旗手、小説の神様、横光利一の随筆。作家にとっての創作とは。あるいは作家じゃないからこその創作とは。

以上、『作家の生活/横光利一』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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