毒もみのすきな署長さん/宮沢賢治=サイコに惹かれる理由を考察(?)

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

毒もみのすきな署長さん-宮沢賢治-イメージ

今回は『毒もみのすきな署長さん/宮沢賢治』です。

文字3500字ほどの童話。
狐人的読書時間は約8分。

ダース・ベイダー、シャア・アズナブル、ハンニバル・レクター、フリーザ、毒もみのすきな署長さん……。悪には悪の理由があり、人はなぜ悪に惹かれてしまうんだろう……って話?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

「毒もみ」とは、海や河川に毒をまいて魚を獲る漁法で、プラハの国では法律で禁止されている。

ある夏、プラハの町の警察へ、新しい署長さんがやってくる。とても親切で、仕事熱心な署長さんだ。

近頃、毒もみ禁止の法律を破る者がいるというので、署長さんは自ら現場を張り込みしたり、一生懸命犯人逮捕に努める。

ある日、署長さんは平然とした様子で言う。

「毒もみの犯人は私です」

署長さんは裁判にかけられ、首を落とされるとき、笑って言った。

「ああ、面白かった。おれはもう、毒もみのことときたら、全く夢中なんだ。いよいよこんどは、地獄で毒もみをやるかな」

みんなはすっかり感服した。

狐人的読書感想

なんか(……最高に?)サイコなお話でしたね。何が言いたいのかもよくわからない気がします。

だけど、署長さんに対して、みんながすっかり感服した気持ちは、なんとなくわかるような気もします。

署長さんのような「サイコパス」とでも言える存在に、ある種の美を感じたり、強く惹きつけられてしまったりするのは、なぜなんだろう? と思います。

最近のマンガやアニメやゲームや映画やドラマやなんやかや――『毒もみのすきな署長さん』のような悪役が描かれることは、じつは少ないのではないでしょうか?

悪役にも悪役になった理由があって、それがそのキャラの魅力になって、作者でも想像しなかった人気を博することがあります。

たとえば、スターウォーズのダース・ベイダー(アナキン・スカイウォーカー)は母への愛、妻への愛ゆえにダークサイドに堕ちてしまいましたし、ガンダムのシャア・アズナブルは復讐のためにあくどいことをいろいろやったりしました。

「愛や憎しみのために悪となる悪人」には、同情したり共感できる部分があって、それが人気につながったりするわけですが、しかしサイコパスという人物たちは、一般的な倫理観からは逸脱し過ぎていて、これが人気化することは難しいようにも思えるのですが、決してそうでもないんですよね。

こちらの例としては、たとえば『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士とか、ドラゴンボールのフリーザとかが挙げられるでしょうか。

こういうひとたちは、「好きなことを好きなようにやっている」だけなのですが、それが社会常識の範疇からは逸脱してしまっているため、異端児として排除される運命にあります。

とはいえ、人間の中には「好きなことを好きなようにやりたい」という欲望があるわけで、誰でも少なからずそれを持っているわけで、しかし倫理観や良識が働くのでそれらを我慢できるのです。

人から倫理や良識がなくなれば正常な社会は維持できなくなるので、それは種の保存の観点からすると本能的なものとも言えて、人間が備えてしかるべき素質ですが、そういう倫理や良識が欠落している人物がいて、自分が我慢していることを好き放題やっていたら、やっぱりそれをうらやましく思ったり、憧れてしまったりしちゃいそうで、そういう気持ちが『毒もみのすきな署長さん』のような「サイコパス的悪」に惹きつけられる理由なのかなぁ……とか。

狐人的にだらだら考えた、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

サイコに惹かれる理由を考察(?)

狐人的読書メモ

・宮城県では「毒もみ」、秋田県では「毒流し」、福島県では「根流し」、長野県では「ドウス」など、毒もみにはいろいろ呼称がある。

・毒もみには世界中で歴史上、さまざまな記述が残されている。

・毒もみのやり方。1.山椒の皮をはがして乾かし臼でひく。2.引いた粉を3750gにつき木灰2625gの割合で混ぜる。3.できた混合物を袋に入れ、河や池の水に入れて手でもみほぐす。4.水中に有害成分が流れ出し、魚は毒にあたって腹を上にして浮かび上がる。

・『毒もみのすきな署長さん/宮沢賢治』の概要

初出不明。賢治の弟(宮沢清六)によれば「署長さんや床屋や登場者達の性格は、その単純化があまりにひどく行われているので、はじめて読む人には可笑しく感ぜられる程かもしれないが、実はこの人達のようなのが賢治の好きでたまらなかった人間型であったようだ」。少年探偵団的な子供たちの活躍、悪役としてのサイコパスの魅力など、発展の余地を感じさせる作品。ブラックユーモア。読解は難解かもしれないが、興味深い作品である。

以上、『毒もみのすきな署長さん/宮沢賢治』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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