縮小する世界(5)

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読書時間:5分
あらワド:終身雇用制の崩壊/労働世代への増税/年齢と富によって分断されたこの社会/現実に絶望した若者たちは、夢の生活を求めて/小さな世界に閉じこもろうとしている/フェムトライズの真の意味/縮小する世界とは?

 

ハローワークを出た俺は、街を歩きながら思考を巡らせる。

『正しき人類の未来のため』に、がんばるシキノ姉妹と、彼女たちが所属する組織は正しいと思う。だけど、フェムトライズのことを世間に公表したところで、研究が止められるか、あるいは小人の人権を確立できるかはあやしいものだと感じている。

いま、この国は、じわじわと若者たちを締めつけている。

終身雇用制の崩壊、毎年行われる労働世代への増税は、ひょっとすると、フェムトライズの実験(若い男性をフェムトライズし、タウンに送り込み、純粋な小人の女性とセックスをさせ、いまだ生まれてこない純粋な小人の男性を生み出すための試み)を進めるための、布石なのではなかろうか?

現在の年金制度は、労働人口が払っている年金を高齢者に回している。当然、現在の高齢者が年金をあきらめることはないだろうし、現在の正規雇用労働者が既得権益を手放すはずもない。

年齢と富によって分断されたこの社会で、若年層は現実よりも、マンガ、アニメ、ゲーム――夢の世界に閉じこもろうとしている。

現実に絶望した若者たちは、夢の生活を求めて、これからYAPOO!株式会社に殺到するのではなかろうか?

その流れを、現在の人々の倫理観に訴えて、止められるものだろうか?

重大な守秘義務を課せられているはずの俺に、監視の一つもつけないのは、そんな自信の表れのようにも思える。

それにもう一つ根拠がある。

それは『フェムトライズ』というネーミングだ。

YAPOO!株式会社のきれーな面接官のおねーさん――もといハルさんにも質問した疑問、『フェムトライズって、なんで『フェムト』なんでしょうね?』。

『フェムト』は国際単位系(SI)の接頭辞の一つだ。センチメートルとか、ミリメートルとかの、『センチ』とか『ミリ』と同じものだ。

デシ(10のマイナス1乗)・センチ(10のマイナス2乗)・ミリ(10のマイナス3乗)・マイクロ(10のマイナス6乗)・ナノ(10のマイナス9乗)・ピコ(10のマイナス12乗)・フェムト(10のマイナス15乗)

の量であることをそれぞれ示している。

もしも、デシライズ、センチライズ、ミリライズ、マイクロライズ、ナノライズ、ピコライズ――と、世界が縮小を繰り返してきたのだとしたら?

いまは6回目の縮小された世界で、フェムトライズで7回目の世界縮小を行おうとしているのだとしたら?

俺は、箱庭の中の街の箱庭の中の街の箱庭の中の街の箱庭の中の街の箱庭の中の街を想像してみる。

とはいえ、ふと見上げる空は青く晴れ渡っていて、ところどころに白い雲も見えて、太陽は眩しい。

とても箱庭の中の街のようには思えない。

しかしながら――

しかしながら、いまの俺はそんなことを考えていられる身分じゃない。

じつはYAPOO!株式会社に就職することが決まって、タウンに行って、もうこちらには戻らないかもと思ったので、俺は一応マンションの賃貸契約を解除してしまっていた。

つまり、正社員を目指す前に、まずは住むところを探さないと――住所不定では履歴書に書くこともできず、就職活動だってままならない(戻ってからの一週間はマンガ喫茶などに寝泊まりしていた。一応、YAPOO!株式会社サイドの監視がついていないか、確認の意味も含めて)。

なので、俺は不動産屋を探して、とりあえず、この世界の街を歩き続けるのだった。

<おわり>

 

※ここまで読んでいただきありがとうございました。

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