キューピー/夢野久作=狐人的感想「キューピー誘拐事件の真相を想え!? 夢野久作版『トイ・ストーリー』」

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

キューピー-夢野久作-イメージ

今回は『キューピー/夢野久作』です。

夢野久作 さんの『キューピー』は3ページ(文字数700字)ほどの短編小説です。このブログで読めます。まさに夢野久作版『トイ・ストーリー』。「チューチュー」「イイエ、ニャンにも知りません」「キーキーピイピイ」とってもかわいいお話です。しかしラストは――夢野久作 さんのストーリー展開が、そろそろ見え始めてきた今日この頃。未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

(パブリックドメインの非常に短い小説なので今回は全文を掲載します)

『キューピー/夢野久作』

アメリカ生まれのキューピーがいなくなったので、おもちゃ箱の中は大変なさわぎがはじまりました。日本のダルマさんが向う鉢巻でタワシ細工の熊に乗っていの一番に飛び出す。あとから独逸ドイツ生まれのブリキの兵隊が木造りの自動車で駈け出す。仏蘭西フランス生まれの道化人形は英国生まれのねむり人形と一緒にそのあとから走り出す。みんな出て行っておもちゃ箱は空っぽになりました。

ダルマさんが、敷居の処を通りかかった鼠に、キューピーさんはどこへ行ったか知らないかと尋ねますと、鼠はチューチューと笑いながら、

「それはきっと、この頃この家へ来た小さな三毛猫がおもちゃに持って行ったのだろう」

と言いました。ソレッと言うので、縁側で日なたぼっこをしている三毛猫を捕まえてダルマさんが睨みつける。兵隊さんが剣付き鉄砲を突きつけて、キューピーをどうしたかと聞くと、三毛猫はビックリして顔を撫でて、

「イイエ、ニャンにも知りません。私はお嬢さんの帯だの鞠だのはおもちゃにしましたが、まだキューピーはおもちゃにしたことはありません。おおかたそれは鼠さんが私をここから追い出すためにそんなわるい事をしたのでしょう」

と言いました。

皆は成る程と気がついて、直ぐに天井裏へかけ上って方々を捜しますと、隅っこの方でキーキーピイピイ泣く声が聞こえますので、ソレッと言って馳せつけました。

みるとかわいそうに、キューピーはお腹も何もピシャンコになって、青い眼を泣きらして寝ています。みんなは大喜びで連れて帰って、寄ってたかって介抱をして、もとの通りにふくらましてやりました。

三毛猫はその後大きくなって、家中の鼠を皆捕って殺してしまいました。

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狐人的読書感想

さて、いかがでしたでしょうか。

トイ・ストーリー3(吹替版)

誘拐された仲間のキューピーを助けるために、おもちゃ箱の中から飛び出して、大騒ぎするおもちゃたちの姿は、どうしたってピクサーのアニメ映画『トイ・ストーリー』を思い浮かべてしまいます。

キューピー誘拐事件発生!

なかま(いのち)だいじに(ドラクエ風)!

少年漫画的な熱い展開です?

キューピーといえばキユーピー3分クッキングを思う

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「キューピー」と聞けば、やはり「キユーピー3分クッキング」をイメージする方も多いのではないでしょうか(かくいう僕がそうなのですが)?

そして、下拵えの時間を考えると、3分では絶対無理だよね、と思っているのも、(ひねくれものの)僕だけではないはずです(と信じたい)。

実際の番組は、CM含めて10分間あるわけですが、……それでも、……ねえ(しつこし)?

しかしノーカット、編集・撮り直しなしで1日6本撮影しているのは、素直に凄い、と思わされてしまいます。

「キユーピー3分クッキング」のスポンサーといえば「キユーピーマヨネーズ」でおなじみの「キユーピー株式会社」です。

そして、このマスコットキャラクターが、「キユーピー3分クッキング」のオープニングで、軽快な音楽とともに、やさいな仲間たちと、息の合ったダンスを披露している、今回誘拐事件の被害者となってしまったキューピー人形です。

――そんなわけで、キューピーは「キユーピー株式会社」のオリジナルマスコットと思われていた方もいらっしゃるかもしれませんが(かくいう僕が……)、もともとはアメリカのイラストレーター、ローズ・オニール さんという方が発表した、キューピッドをモチーフに描かれたイラストをもとに、キャラクター化されたものです。

これが、大正から昭和初期にかけて日本にも輸入され、大流行となりました。

キューピーから日米首脳会談と昨今の世界情勢を思う

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そんなキューピーのやさいな(おっと失礼間違えました)、もといゆかいな仲間(おもちゃ)たち――夢野久作 さんの『キューピー』に登場するキャラクターは、日本のダルマ、ドイツのブリキの兵隊、フランスのピエロ、イギリスのねむり人形――と、じつに国際色豊かです。

アメリカとイスラム諸国、日本と韓国、中国、北朝鮮――決定的な事件が起こった、というわけでは決してありませんが、近年の世界情勢に不穏なものを感じてしまうのは僕だけなのでしょうか?

先日(2017年2月10日)、日本の安倍首相はアメリカのトランプ大統領と初めての日米首脳会談を行ったわけですが、その内容は概ね良好だったようで、ニュースやワイドショーなどを見ていても、意外と高評価のものが多いように感じます(握手後、安倍首相の安堵の表情が、別の意味でも話題になっているのには、少し笑ってしまいましたが――ごめんなさい)。

それぞれの国の利害関係を思えば、必ずしもなかよく――とはいかないかもしれませんが、お互いに妥協し合って、平和な世界であらんことを願わずにはいられません(とはいえ、その妥協点を見出すことの難しさも、思わずにはいられないわけではありますが)。

有名な「十二支の説話」から鼠と猫の対立構造を思う

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そして、その他の主要キャラクター(容疑者)として、鼠と三毛猫がいるわけですが――この両者の対立構造を見て「十二支の説話」を思い浮かべる方はどれほどいらっしゃるでしょうか? 

十二支とは――

「子(ねずみ)・丑(うし)・寅(とら)・卯(うさぎ)・辰(たつ、龍)・巳(へび)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(いのしし)」

これら12種類の動物の総称であることは、いうまでもないことかもしれませんね。これの由来となる説話、神様が十二支を決める際、早いもの順で決めたというお話も、知らない人のほうが少ないように思いますが、いかがでしたでしょうか?

この十二支を決めるとき、鼠が猫に嘘をついて、十二支決定の日を1日遅く教えたために、結局猫は十二支に入ることができず……、以来猫は鼠の天敵となった、というお話が、おおまかな「十二支の説話」の内容です。

これを調べてみると、申と戌の間に酉がいるのは、犬猿の仲を仲裁したからだとか、猪は猪突猛進して門の前を通り過ぎてしまい最後になってしまっただとか、13番目に到着したため十二支に入れなかった鼬(いたち)を神様が憐れに思って毎月最初の日を「ついたち」と呼ぶようにした――などなど、おもしろいお話があります。

オノマトペからキューピー誘拐事件の真相を想え!?

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photo by eisenbahner

――脱線してしまいましたが、鼠と猫と、どちらが好きですか、というか、どちらに肩入れしたくなりますか、みたいなお話です。

どちらのほうが人気があるのだろうか?

――といった疑問と言い換えてもみても同じかもしれません。

ファンタジア(吹替版)

鼠をモチーフにした人気キャラクターといえば、やはりディズニーのミッキーマウスでしょう。不動の王者、ミッキーにかなうキャラクターがはたしているのか、と考えてみると、結構難しく思えるのですが、とはいえ、猫のキャラクターだってサンリオのキティちゃんとか、ジブリ映画『魔女の宅急便』のジジとか、最近だと『妖怪ウォッチ』のジバニャンとか……、たくさんいるわけで、鼠と猫と、どちらが好きか、なかなかいい勝負のように思います。

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ただし現実の動物に限れば、圧倒的に猫好きが多いと思うのは僕の思い違いでしょうか?

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かくいう僕も「十二支の説話」の影響で、鼠と猫の対立構造を思うとき、どうしても猫に肩入れしてしまう傾向があります。

その点、夢野久作 さんの『キューピー』は、噓つきの悪い鼠を、三毛猫が成敗する勧善懲悪のストーリーとなっていて、(十二支の説話で報われないだけに)狐人的にピタリとはまった物語でした。

――とはいえ、夢野久作 さんらしい容赦のないオチに、鼠を憐れに思う気持ちを催さずにはいられなかったわけなのですが……。

この作品では、宮沢賢治 さんの小説を彷彿とさせるような、楽しいオノマトペが散見されます。

仲間たちによって発見されたキューピーは、ピシャンコになって「キーキーピイピイ」泣いています。しゃれているかはともかく、ダジャレていて、とてもかわいい表現ですよね。

さらに三毛猫は、「イイエ、ニャンにも知りません……」と身の潔白を訴えるときになんとも萌える台詞を口にしていますよね。西尾維新 さんの小説「物語シリーズ」に登場するブラック羽川を連想してしまうのは、僕だけ?

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しかし、単純に萌えてばかりもいられず……、このオノマトペのせいで、これってなんだか不真面目な発言のような気がしませんか?

……ひょっとして、嘘をついていたのは三毛猫のほうで――と想像してしまうと、そこにミステリー要素を見出してしまうわけなのですが、どうでしょう?

とはいえ、鼠も、「チューチュー」と笑いながら三毛猫のせいにしようとしているので、不真面目というなら、こちらのほうが不真面目にも感じるわけで……、どうやらこの線はなさそうですね(失礼しました)。

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しかしながら、小説を想像する楽しさを、感じさせてもらえるところではありました。

ぜひこの楽しみを味わってみてください。

(オノマトペ雑学、オノマトペが楽しいこちらの小説もぜひ)

読書感想まとめ

夢野久作版『トイ・ストーリー』。突然、誘拐された「キユーピー3分クッキング」でおなじみのキューピーと、やさいな――もといゆかいな仲間たちの友情物語。「十二支の説話」から連綿と続く鼠と猫の対立構造――あなたはどちらを応援したい? かわいいオノマトペから、やさいな(?)仲間たちとキューピー誘拐事件の真相を想え!?

狐人的読書メモ

キューピー-夢野久作-狐人的読書メモ-イメージ最近、小説を想像する楽しさ、を感じられる作品によく出会う。とくに短編小説は、その傾向が強いのかもしれない。これは創作の際に意識すべき点なのかもしれない。

 

・『キューピー/夢野久作』の概要

1922年(大正11年)11月27日、「九州日報」にて初出。
「九州日報シリーズ」

以上、『キューピー/夢野久作』の読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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