狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『名なし指物語/新美南吉』です。
文字数11000字ほどの童話。
狐人的読書時間は約22分。
名無し指ってどの指? その語源を調べてみたらおもしろかった。善の為になす悪の是非、悪が悪を生む負のサイクル。マタンじいさんとジュリーはその後どうなったのかなあ……。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
木ぐつ屋のマタンじいさんの左手には名なし指がなかった。じいさんが木ぐつをほるのをおもしろそうに見ていた子供たちの一人が、その理由を尋ねた。
子供だったマタンは、ある日道ばたでクルミの殻を拾い、名なし指にかぶせて「ぼうしだ、ぼうしだ」とおもしろがっていた。それからしばらく行くと、塀のところでジュリーがしょんぼり座っていた。ジュリーのお母さんは長いこと病気だった。お父さんは酒のみでめったに家に帰ってこない。帰ってくればジュリーは家の外におっぽり出された。マタンはジュリーをなぐさめてあげたかった。ちょうど塀の上にはリンゴの実がいくつか見えた。マタンはそれを一つもいでジュリーにあげようと思った。自分の家に帰れば立派なリンゴの木があるのだけれども、そのときはジュリーをなぐさめてやりたいことしか考えられなかった。塀のむこうはお金持ちの家で、ちょうど主人が鋏でリンゴを収穫しているところだった。リンゴに手を伸ばしたマタンの名なし指は、その鋏で切られてしまった。
やがてマタンは木ぐつ師になるため、町の木ぐつ師のところへ奉公に出た。いつもお母さんのお古をはいているジュリーのため、木ぐつを作ってやりたかったからだ。マタンは指が一本なかったので、親方には「いい木ぐつ師にゃなれぬかもしれん」と言われていたが、一生懸命努力して三年後には立派な木ぐつを作れるようになった。その木ぐつをジュリーに送ると、ジュリーからは感謝の手紙が届いた。
さらに三年後、一人前の木ぐつ師になったマタンは、ジュリーの新しい木ぐつを持って村に帰ろうとするが、途中知り合った男と宿で相部屋となり、木ぐつもお金も盗まれてしまう。宿代は宿屋の主人一家の木ぐつを作ってどうにか支払うことができた。すると町人たちがその話を聞き、木ぐつの注文がさっ到した。マタンは注文をこなすためにもう一晩その宿に泊まることにした。新たに案内された小さな部屋のテーブルの引き出しに、前の客の忘れていっただろう財布が入っていた。マタンの頭の中で声がした。お前も盗まれたのだから、今度はひとの金を盗んでやるがいい。そのとき、ドアをノックする音がして……
狐人的読書感想
……と、いいところで未完とは。もはや続きが読めないのは残念でなりませんね。知らなかったので調べてみたら「名無し指」とは薬指の別称とのことでした。ほかにも薬指には「紅付け指」や「環指」といった呼び名があるそうです。
「名無し指」の語源は「この指は病気を治す魔力を宿した指である」と世界中で考えられ大切にされてきたこと、とされています。指の名前を知られると、災いがやってきたり、呪いをかけられたりして薬の効果が消えると信じられていたため、名前を隠していたのだとか。
呪いに相手の名前が必要だというモチーフは、西遊記の名前を呼ばれて返事をすると吸い込まれてしまう瓢箪のエピソード、ジブリ映画の『千と千尋の神隠し』や『ゲド戦記』などにも見られるものだということで、ちょっと興味を惹かれました。
内容は勧善懲悪的な感じですが、善の為になす悪の是非や、悪が悪を生む負のサイクルのようなことも書かれていて、深みのある物語になっているような気がします。
やはりマタンじいさんはジュリーのこと好きだったんだろうなあ……、ふたりはその後どうなったんだろうなあ……、というあたりが気になって仕方がなかった、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
名無し指の由来が興味深い。
狐人的読書メモ
・「名無し指」は鹿児島、沖縄などの方言として残っているという。狐人的には薬指を「名無し指」と言っているのは聞いたことがない。
・『名なし指物語/新美南吉』の概要
初出不明。未完。
以上、『名なし指物語/新美南吉』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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