狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『犬と雀/グリム童話』です。
文字数2800字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約7分。
友達や家族を想う。大切な誰かが飢えていたら、盗んででも食べさせてあげたいと思う? 大切な誰かの命を奪われたら、復讐してやりたいと願う? 恐るべき雀の気持ちがあなたにはわかる?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
牧羊犬は主人からろくにえさももらえず、しょんぼりと出て行くことになり、道の途中で雀と出会う。
「犬のお兄さん、どうしてそんなにしょげてるの?」
「お腹が空いているんだ」
「じゃあ、一緒に町に行きましょう。お腹いっぱいにしてあげる」
雀と犬が町に着くと、雀は肉屋の売り台から肉を一切れつついて落とした。犬はそれを食べた。同じように犬は肉をもう一切れとパンを食べた。犬が満足すると二匹は町の外の街道を歩いた。
「僕は疲れたから眠りたい」
「じゃあ眠って。私は枝にとまっているから」
街道を三頭引きの荷馬車が走ってきた。
「馬方、とまれ。さもないとお前をみじめにするぞ」と雀は言った。
「お前なんぞにみじめにされてたまるか」と馬方は言った。
荷馬車は犬をひきつぶしてしまった。
雀は馬方に復讐した。荷台のワインの樽の栓をつついて抜いて全部こぼした。三頭の馬の目をくり抜いてやった。馬方は斧で雀を始末しようとして、自分の馬を打ってしまった。
「ああ、なんて不幸だ」
「まだだ。お前の家も不幸にしてやる」
馬方が怒って家に帰ると、おかみさんが言った。「ああ、あなた。家の中に悪い鳥が入ってきて、世界中の鳥を集めて、上にある小麦を食べてしまっているのよ」
馬方が慌てて屋根裏部屋へ行くと、何千何万という鳥たちに小麦は全部食べられていた。雀はその真ん中にいた。
「馬方、お前の命もとってやる」
雀はそう言って窓から外へ飛び出ていった。馬方は財産をなくし、怒り心頭でストーブのうしろに座った。
「馬方、お前の命もとってやる」と雀は窓の外から叫んだ。
馬方は斧を投げたが、窓を割っただけだった。雀はストーブの上に舞い降りて同じことを叫んだ。馬方はやみくもになってストーブを打ち壊してしまった。鏡、ベンチ、テーブル、家の壁――それでも雀に斧は当たらなかった。
ついに馬方は雀を手で捕まえた。馬方は雀を丸呑みにしたが、雀は馬方の口から這い出して叫んだ。馬方は斧で雀を打つようおかみさんに頼んだが、おかみさんは打ち損じて馬方の頭を打ってしまった。
雀は飛び上がって去っていった。
狐人的読書感想
す、雀……。なんか恐いグリム童話でした。
雀は犬のために肉屋やパン屋から肉とパンを盗み、犬をひきつぶしてしまった馬方に復讐します。
雀は正義じゃありません。しかし悪とも言い切れない。
友達や家族が飢えていたら盗んででも食べさせてあげたいと思うでしょうし、大切な人の命が奪われてしまえば復讐したいと願うでしょう。
結局のところ、優先順位の問題なのかな、って気がしました。
人間は大切な誰かのためなら、大切でない他人を踏みにじることができる。
もちろんそこには道徳感情が絡んできて、ものごとはそんなに単純ではないのでしょうが。
根本的な部分では単純なのかな、って気がします。
雀は感情的になって盗み、馬や馬方の命を奪います。馬方は感情的になって身を滅ぼしてしまいます。
感情的になることの愚を説いている童話だとも感じました。
雀といえば非力な存在に思えますが、この物語のなかの雀はある種の超越的な力を持っているようにも思えます。
力を持っていればなんでも自分の思い通りになると考え、他人のことなど考えずに行動してしまいます。
すぐに感情的にならない。他人のことも考えよう。
といったあたりが、今回の読書で得るべき教訓ですかね。
それがなかなかむずかしく感じてしまいますが。
結局、馬が一番かわいそうだったな……、とか思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
恐るべき雀の血まみれの復讐譚に学ぶ…?
感情的にならないで、他人のことも考えたい。
狐人的読書メモ
・力にも感情にも人はおぼれがち。
・『犬と雀/グリム童話』の概要
KHM58。原題『Der Hund und der Sperling』。初版では『忠実な雀の名付け親』というタイトルだった。力を持った雀、恐るべし……。
以上、『犬と雀/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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