あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『赤ずきん/グリム童話』です。
グリム童話の多くがじつは残酷な物語だったというのはいまや有名なお話。今回はそこら辺を中心にまとめていけたらと思っています。
←ちなみに、童話実写化ブームの流れにのって映画化された『赤ずきん』(2011年、レオナルド・ディカプリオ さん制作、ダーク・ラブファンタジー)。
グリム童話の『赤ずきん』は、無料の電子書籍Amazon Kindle版で7ページ、文字数3800字ほど。寄り道しちゃダメよ、改めて読むと意外と残酷な結末……。内容をお忘れの方はこの機会にぜひご一読ください。
あらすじ
かわいい少女、赤ずきん ちゃんがいました。お母さんからお使いを頼まれます。森の向こうに住んでいる病気のおばあさんにお菓子と葡萄酒を届けることに。
「寄り道しちゃダメよ」
……道中、赤ずきん ちゃんは一匹の狼に遭遇。唆されて道草をしてしまいます。
――その間、狼はおばあさんの家へと先回り、おばあさんを食べてしまうのです。その後、狼はおばあさんに変装して、寝床で赤ずきん ちゃんの到着を待ちます。
……赤ずきん ちゃん、おばあさんの家に到着。やはり狼に食べられてしまいます。満腹になった狼はそのまま眠ってしまいました。
そこへ通りがかった狩人が異変に気づきます。はさみで狼の腹の中から赤ずきん ちゃんとおばあさんを救出します。赤ずきん ちゃんは狼のお腹の中に石を詰めます。目を覚ました狼は石の重みで動けません。
狩人は狼の毛皮を剥いで持って帰りました。赤ずきん ちゃんは、「寄り道しちゃダメよ」とのお母さんのいいつけを、身をもって学ぶのでした。
読書メモと感想
なんと1900年以上前に存在した『赤ずきん』の起源
さて、いかがでしたでしょうか。わざわざあらすじを起こす必要もなかったかもしれませんが。お話を部分的に忘れていた方のお役に立てればこれ幸いです。
童話の原型が民間伝承(民話)にあるというのはよく知られたお話です。以前のブログ記事でも取り上げたように(⇒小説読書感想『ルンペルシュティルツヒェン グリム童話』映画化予定あり!)、『ハリー・ポッターシリーズ』のハーマイオニー・グレンジャー役で一躍脚光を浴びたエマ・ワトソンさん主演の映画が今年(2017年4月21日)日本でも公開される『美女と野獣』は約4000年前、こちらも2013年に実写映画化された『ジャックと豆の木』(映画タイトルは『ジャックと天空の巨人』)は5000年以上も前から存在していた可能性があることが分かっています。
この流れを汲むがごとく、当然ながら『赤ずきん』の起源も民話にあるとされていますが、スウェーデンの民話『黒い森の乙女』であるとか、フランスに伝わるメルヘン(ドイツ発祥の空想的物語形式)であるとか、さらに奇抜なところだと中国の伝承であるという説もあります。
しかしながら、やはり(僕の中ではおなじみになりつつある)イギリスはダラム大学の人類学者、ジャミ―・テヘラニ さんの2013年の研究発表によれば、『赤ずきん』は類型の童話『おおかみと7匹の子やぎ』の発生から1000年後に派生した物語であることが判明しており、『おおかみと7匹の子やぎ』は1世紀に誕生したと考えられているため、1900年以上前には存在していたことに……、前述の中国伝承説はテヘラニ さんによって否定されています。
ということで、『赤ずきん』の起源についてはフランス、オーストリア、イタリア北部の民話に由来するといった説が、いまのところ有力です。
ただの女の子だった!? 民話時代の赤ずきんちゃん
さて、とはいえ、民話であった頃の赤ずきん ちゃんは「赤ずきん」をかぶっていませんでした。
「じゃあ何ずきんなんだよ!」
ってなお話なのですが、そもそも「ずきん」というものはおろか、何もかぶっていないよ、とのこと。
以下、民話時代の『赤ずきん』の特徴(民話よりのちの『赤ずきん』との違い)をメモしておきます。
・赤ずきん ちゃんは「赤ずきん」を(何も)かぶっていなかった(なので厳密には赤ずきん ちゃんではないのですが、便宜上この呼び方を継続します)
・道中、狼が赤ずきん ちゃんを唆すシーンで、狼は赤ずきん ちゃんに「針の道」と「ピン(留め針)の道」の二択を迫って誘導し、時間稼ぎをする(民話よりのちでは森の奥の花畑に誘導して時間を稼ぐ)
・じつは、おばあさんは助からない
・そして、狼はおばあさんを干し肉とワイン(血)にしてしまい、赤ずきん ちゃんは騙されてそれを食してしまう(カニバリズム、食人)
・やはり狼に騙されて、服を一枚一枚脱いでいくシーンがある(……)
・狩人の助力はなく、赤ずきん ちゃんは自力で難を逃れる
(……カニバリズムって、思わず石田スイ さんの漫画『東京喰種トーキョーグール』を思い浮かべてしまいましたが)
いよいよ「赤ずきん」をかぶったペロー童話の赤ずきんちゃん!
それは1697年にフランスで出版されたペロー(ペロー童話集)の『赤ずきん(小さな赤い乗馬ずきん)』でのこと。これが最も古い「現在の『赤ずきん』の原型」とされる童話です。
ペローは前項で列記した民話時代の『赤ずきん』の特徴を削除・改変して、現在の『赤ずきん』の原型を作りました。
僕が一番注目したのは、ペローが『赤ずきん』のラストに教訓を追加した点にあります。
じつは、ペローの『赤ずきん』では、最後おばあさんのみならず、赤ずきん ちゃんも助かりません。狼に食べられてしまい、そのまま物語は終わります。
これは、もともと警告を促す寓意を含んだ、民話時代の『赤ずきん』の、警告をより強調するための工夫だと思います。
結末を悲惨なものにすることで、規範(お母さんのいいつけ)を守らないと、命を落とす危険があるよ――という教訓をより強めて読者に伝える効果があるのではないでしょうか。
カニバリズムや服を脱ぐシーンがペローの『赤ずきん』で削除されているのは、たぶん表現規制なんですかねえ……、時代とともに社会の倫理的レベルが向上している表れなのかと考えると、現代のテレビや出版物の表現規制に通じるところがありますね。
ちなみに赤ずきん ちゃんのかぶる「赤ずきん」にもいろいろと謂れがあるみたいです。
そもそも頭巾は当時(16~17世紀)の貴婦人の間で流行していたおしゃれな帽子だったのだとか。
しかし、その一方で、当時のヨーロッパは魔女狩りの時代――「赤」は魔性の色、罪や官能、あるいは悪魔を想起させる色……、すなわち、赤ずきん ちゃんは魔女(魔法少女)だった? そう言われてみると、狼と話してますよねえ……。(画はおすすめ漫画、佐藤健太郎さんの『魔法少女・オブ・ジ・エンド』)
やっぱりハッピーエンドがいい! グリム童話の赤ずきんちゃん
グリム童話の初版は1812年、ペロー童話から100年以上後に出版されたことになります。
ペロー童話とグリム童話の最大の違いは、やはりラスト、エンディングでしょう。
前述のように、ペロー童話では赤ずきん ちゃんが狼に食べられてそのまま終わりますが、グリム童話では狩人に助けられて終わっています。
簡単に言ってしまえば、
・ペロー童話はバッドエンド
・グリム童話はハッピーエンド
ということになります。
双方ともに、「子供のあり方」についての教訓を述べていますが、
ペロー童話では、「親のいいつけを守ること」(規範順守)
グリム童話では、「子供は大人に守られるべきもの」
と、それぞれ強調されている教訓の部分に違いが見られるように思います。
『赤ずきん』から何を学ぶべきか、まとめてみますと。
・寄り道しちゃダメよ!
・大人は子供を守ってね
・悪い男に騙されちゃダメよ?
……こんな感じ?
ともあれ、学ぶところの多い物語だと思いました(今回のブログ記事、こんなエンディングでよかったのでしょうか……)。
以上、『赤ずきん/グリム童話』の読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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