雪後/梶井基次郎=140字の「胸キュン小説」って、どうですかね?

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

雪後-梶井基次郎-イメージ

今回は『雪後/梶井基次郎』です。

梶井基次郎さんの『雪後』は文字数6000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約19分。

地味な研究生活。
東京郊外で送る田舎の新婚生活。

新生活スタートな時期におすすめ?

おひとりさまでも田舎暮らしのスローライフに憧れる?
そんなあなたに『地域おこし協力隊』あります。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

行一は「大学に残るか、就職すべきか」迷っていた。恩師のおかげで研究生活に入ることができた。それと同時に信子との新婚生活もスタートした。くぬぎ林や麦畑、乳牛のいる牧場。日向と土の匂い。雀の鳴き声。東京郊外での慎ましやかな日々。妻の妊娠。

冬。犯罪の気配。泥棒の噂、火事。ある朝屋根に足跡が。身重の妻を心配して、行一は市内に新たな住まいを探す。

ある日、早春を告げるような大雪。朝、深い青空に、生まれたばかりの仔雲。「ホーホケキョ」うぐいすかしら、と妻。小僧の口笛に行一は好感を抱く。晩、行一は信子に、ロシアの短編作家の書いた話をする。

少年が少女をそりに誘う。マフラーがハタハタはためき、風がビュウビュウ耳を過ぎる。「ぼくはきみを愛している」少女は胸がドキドキした。風の唸りが消える。空耳だったのかもしれない。「どうだった?」「もう一度」「どうだった?」「もう一度! もう一度よ」泣きそうになって少女は別れた。永遠に。やがて二人は離れ離れ、それぞれ別の相手と結婚した。年老いても二人はその日の雪滑りを忘れなかった。

切り通しの坂で信子が転倒した。胎児に異常はなかった。行一は妻の知らなかった怒り方をした。信子は「どんなに叱られてもいいわ」と泣いた。しばらくして信子が病に伏した。医者は腎臓の病気と診断した。彼女の母が呼ばれた。不眠症。実験の頓挫。「コケコッコウ」

赤土に出る女の太腿ふともも。作家志望の友人大槻がやってきて、それは「〇〇の木の根だ」という――そんな夢を見た話を、現実の大槻と話す。トランプと切符売場の小屋――大槻が見た行一の夢。大槻と別れ、電車を降りた帰り道、偶然姑に出会う。姑は仔牛が産まれるのを見たという。

行一は今日の美しかった夕焼雲を思い浮かべた!

「よしよし、よしよし」ふくらんで来る胸をそんな思いで緊めつけた。

狐人的読書感想

梶井基次郎さんの小説は、なんとな~く暗~い印象が強いのですが、『雪後』は希望を予感させる爽やかな終わり方で、なんか好き。信子さん、無事に元気な赤ちゃんを産んでくれそうな気がします。

また、主人公が梶井基次郎さんでない(主人公のモデルが梶井基次郎さんでない)と思われるところも、これまで読んできた作品とは趣を異にしているように思いました(作家志望の大槻が梶井基次郎さんなんですかね?)。

行一は「大学に残るか、就職すべきか」迷っていたようですが、恩師のおかげで研究生活に入ることができました。選択肢があること、自分のために尽力してくれる恩師がいること、そんな境遇はちょっと羨ましく感じてしまいました。

もちろん、そこには本人の努力と苦労があって、今後充分な生活が保証されているわけでなく、……ただただ羨むばかりなのはお門違いとわかってはいるのですが。貧乏しても好きな研究をする研究者というものには、漠然とした憧れを抱いてしまうのですが、どうでしょうね?

そんなこんなで、行一が新生活をスタートさせたところから始まる『雪後』は、新生活をスタートさせる時期におすすめしたかった小説なので、いまちょっと時期を外してしまった感は否めません。来年以降、新生活をスタートさせる時期に読んでもらえることを祈るばかり?

――とはいえ、そればかりが印象的、というわけでもないので、他の部分についてもこれからつらつらと書いていきます。お付き合いいただけましたら幸いです。

『地域おこし協力隊』って、どうでしょうね?

雪後-梶井基次郎-狐人的読書感想-イメージ

ふむ。郊外での田舎暮らしって、どうなんでしょうね?

なんか一時期注目されていたような気がしないでもないのですが(曖昧な記憶)。平日は片道数時間の電車通勤で、休日は空気のおいしい大自然の中、家族でバーベキューやハイキングを楽しむみたいな。

話題は郊外から離れてしまいますが、自治体は、町おこしのため、若者の移住者獲得のため――いろいろな移住者支援制度に取り組んでいるみたいですね。

福島県国見町では「18歳まで子供の医療費無料」とか、熊本県産山村では「第一子に出産祝金20万円、第二子30万円」とか。

移住者獲得合戦、とでも呼べるような様相を呈している向きもあるようですが。この場合、やはり子育て世代がターゲットになるらしく、おひとりさまの妙齢の女性の方が、田舎に移住すると周囲の視線が……、といった話を聞くと、独身者の移住に需要はないのかなあ、とか思ってしまいます。

調べてみると、そんなおひとりさまでも田舎暮らしにチャレンジしやすい(と思われる)『地域おこし協力隊』なる制度がありました。

「お給料をもらいながら田舎で仕事ができる」となると、田舎暮らし(スローライフ)に憧れる独身者には、一念発起を促される制度に見えるのですが……(地域によって「あたり」「はずれ」あるそうです)。

僕のようなひきこもりがちからすると、住む場所なんてどこでもいいような気がしてしまうのですが……。田舎に住みたかろうと、都会に住みたかろうと、結局は仕事があるかないか、すなわちお金があるかないか、というところに着地せざるを得ませんよね。

――という(この話が)どうにもならない、というお話。

140字の「胸キュン小説」って、どうですかね?

雪後-梶井基次郎-狐人的読書感想-イメージ

おそらく『雪後』を読んで誰もが気になるところといえば、行一が妻の信子に語って聞かせる「ロシアの短編作家の書いた話」ではないでしょうか(この挿話自体もさることながら、こんなシチュエーションが展開できる夫婦関係には憧れを禁じ得ませんが、どうでしょうね?)。

少年が少女をそりに誘うお話。

まったく知らない僕からすれば、この物語を挿話として作品中に取り込んだ梶井基次郎さんのセンスがいい、とか思ってしまうのですが、すでにこの物語を知っている人はどう感じるのか、ちょっと気になるところでした。

これはロシアの小説家、アントン・チェーホフさんの『たわむれ』という短編小説だそうです。

日本の少年は絶対こんなことしないだろうなあ(海外でもどうなんでしょうね?)、とは思いつつも、やはり惹きつけられてしまう物語です(今度本文のほうも読みたいですね)。

そういえば、ツイッター(SNS)で「胸キュン漫画」なるものが流行っていると聞きましたが、140字で「胸キュン小説」が書ければひょっとして、……とか、ふと考えてしまいました(僕にはとても書けそうにありませんが)。

チェーホフさんの『たわむれ』は、男女関係になかなか踏み出せないでいる少年少女のもどかしい恋愛模様(チェーホフさんの恋愛模様?)が描かれていて、しかし二人は結ばれず、それでもその思い出は色あせることなく生涯残る、みたいなノスタルジックな余韻の残る物語ですが(本文読んでないのにここまで語ってしまってよいのだろうか?)。

おなじみ(?)フロイト的解釈では、雪の白は少女の純潔性、赤い橇、男の甘い囁き、絶頂に向かうスピード感……、といった大人な読み解き方ができるそうです。

とある説によれば、梶井基次郎さんの『雪後』は、「性」というものを持つ存在としての青年の、「社会」に向き合うなかで、「家庭」に対するある種屈折した思い――がテーマとして表現されているとも読めるらしく、そんなふうに言われてみると、たしかに梶井基次郎さんっぽいように思えてきます。

こうした知識を知った上で『雪後』の物語を捉えると、梶井基次郎さんがチェーホフさんの『たわむれ』を挿話に選んだ意味も、なんか深いものがあったのかなあ……、という気がして、趣深く感じてきます(全体的に非常に漠然とした感想ですが)。

――とにかくチェーホフさんの短編小説を今度読んでみます、というお話。

読書感想まとめ

『地域おこし協力隊』とチェーホフさんの短編小説に興味を持った、というお話。

狐人的読書メモ

ところで「狐の剃刀(キツネノカミソリ)」ってご存知ですか? 作中、行一の夢の話のところで名前が出てくるのですが。ヒガンバナ科の植物だそうで、恥ずかしながら初耳でした(ちなみにタコノキも初耳でした)。――最近読書してて『狐』結構出てくるんだよなあ……。

・『雪後/梶井基次郎』の概要

1926年(大正15年)『青空』(6月号)にて初出。梶井基次郎さんが主役じゃない(脇役?)なところが珍しい。

以上、『雪後/梶井基次郎』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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