ダス・ゲマイネ/太宰治=とにかく読んでみて!としか言えないんです!

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

ダス・ゲマイネ-太宰治-イメージ

今回は『ダス・ゲマイネ/太宰治』です。

文字数22000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約64分。

「恋をしたのだ。そんなことは、全くはじめてであった」。タイトルと冒頭がいい小説は間違いなくいい小説。ちょっと小難しく感じるけど不思議と快く読まされてしまった小説。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

二十五歳の大学生、佐野次郎がいる。佐野次郎はあだ名である。佐野は色街の女に恋をする。しかし、一介の学生が色街に足しげく通うことができるはずもなく、その女に顔がよく似た、上野公園にある甘酒屋の娘、菊を代わりに見ることで我慢している。

佐野はその甘酒屋で、東京音楽学校に8年も在籍している馬場数馬という音大生と知り合う。馬場は典型的な「俺はまだ本気出してないだけ」な芸術家気取りの自称音楽家であるが、佐野と意気投合して親しく付き合うようになる。

佐野は失恋し、夏休みを実家で怠惰に過ごしていると、馬場から手紙が届く。同人誌を作らないか。その誘いで佐野は元気を取り戻し、東京に戻ると馬場と雑誌作りについて熱心に語り合う。

東京美術学校に通う美大生、馬場の親戚筋にあたるという佐竹六郎を、雑誌の挿絵担当として紹介される。佐竹は馬場を軽蔑している。佐野は上野公園で、佐竹から馬場がほら吹きのビッグマウスだと聞かされる。雑誌も本気で作るつもりなんかない。佐野はそれでも馬場を信じる。

雑誌の打ち合わせということで、佐野の部屋に一同が集まる。その中に、馬場が先輩から紹介されたという、新人作家の太宰治もいる。馬場と太宰は始めから険悪な雰囲気で、すぐに言い争いが始まり、馬場が太宰を殴ったことで、同人誌制作の話は流れてしまう。

その後、佐野と馬場はおでん屋で酒を飲む。馬場はそこで佐野に告白する。雑誌をやる気なんて始めからなかった。君を好きで、離したくなかった。菊は君のことが好きだ。君は誰が一番好きなんだ。

佐野は「誰もみんな嫌いです。菊ちゃんだけを好きなんだ」と馬場に告げて外へ出る。雨の中佐野は走り出す。頭がわるいから駄目なんだ、だらしがないから駄目なんだ――

馬場と佐竹が甘酒屋で会話している。そこには菊の姿もある。佐野は昨夜電車にはねられた。馬場は菊に「泣くな」と言い、菊は「はい」とだけ答える。馬場は佐竹を遊びに誘う。生きているというのはなんだかなつかしい。

人は誰でもみんないつかは……。

狐人的読書感想

タイトルがいい小説はいい小説!――ということで、『ダス・ゲマイネ』という言葉は、なんとなく心に残りますよね。

これはドイツ語で「通俗性、卑俗性」(Das Gemeine)といった意味の言葉が由来だそうです。また、南部弁と津軽弁を組み合わせた「んだすけ、まいね」(それだから駄目なんだ)にも由来する、いわゆるダブル・ミーニングなのだとか。

なんかすごく練られているなって感じがします。

冒頭の一文も印象的です。

『恋をしたのだ。そんなことは、全くはじめてであった。』

冒頭がいい小説もまたいい小説!――ですよね。

そんなわけでこの小説、けっこう評価が高いみたいで、ネットでも好きだという人がいっぱいいました。

僕もなんだか好きな作品です。

内容は青春小説っぽく感じましたが、どうでしょうね?

佐野、馬場、佐竹、太宰――主要な四人の登場人物は、全員太宰治さん自身の一面が投影されている、いわば分身として描かれているような印象を受けます(そのまま太宰治という名前が出てきますしね)。

女性関係については佐野に、ユーモアと自意識については馬場に、タイトルの意味である通俗性、卑俗性については佐野と太宰に、それぞれ象徴されているように感じられました。

一番印象に残るのは馬場の強烈な個性ですね。

俺はまだ本気出していないだけ、ほら吹き、ビッグマウス……だけど話はおもしろくて、人懐っこいところがあって、お金持ちの息子で――こういう言い方はあれですが、浅く付き合う分にはおもしろい友達かもしれません。

最後の告白には驚かされましたね。

BLなのかと思いましたが、たぶん純粋に友達として、馬場は佐野のことを慕っていたのだと思いますが(……と信じたいですが、……BLでもそれはそれでおもしろいですが)。

佐竹と太宰は芸術家としての著者の悩みが表れているキャラクターです。

ぱっと思い浮かぶところでは『八十八夜』とか『きりぎりす』とか『清貧譚』とか、他作を読んでいても、芸術をお金に変えること、文学的であるよりも大衆受けを狙った作品を書くこと、など、芸術家が俗化することに強い抵抗を持っていたことが伺えるんですよね。

そして主人公の佐野です。

馬場が言うようにどこか純粋な人物で、同時に太宰さんの弱さを一番体現している人物だという気がします(女性関係や結末が太宰さんとかぶりますよね)。

四人の中では傍観者的な立ち位置というか、三人と感情的に対立することもなく、主人公向きだという気がして、創作する上で学ぶべきところの多いキャラクターのように感じました。

正直、彼らの会話は僕にはちょっとむずかしく感じられて、おもしろいというような印象はあまり持たなかったのですが、それでもずっと読んでいたくなるような感覚になったのは、不思議な気がします。

読んでいるのが快いみたいな……

これってなんなんでしょうね?

僕の中では村上春樹さんの小説がそんな感じなんですけれど、本作も読ませる作家さんの才能を感じさせる作品だという感じがします。

こういう小説はおすすめしたいけど、言葉でおすすめしにくいんですよね……。

とにかく読んでみて!

――としか言えないんですよね。

そんなわけで、とにかく読んでみて!

――な今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

とにかく読んでみて! としか言えないんです!

狐人的読書メモ

・『友情と金銭とのあいだには、このうえなく微妙な相互作用がたえずはたらいているものらしく、彼の豊潤の状態が私にとっていくぶん魅力になっていたことも争われない。』――友情と金銭は本当に微妙。

・とにかくいいセリフや言葉が多い。馬場語録とか作りたいけど、全セリフピックアップすることになりそうだから諦めた。

・『ダス・ゲマイネ/太宰治』の概要

1935年(昭和10年)10月、『文藝春秋』にて初出。第一回芥川賞最終候補者に文藝春秋から依頼があり、競作というかたちで執筆された。第一回芥川賞に落選したあと精神的に追い詰められていた時期に書かれたという。評価は高く、好きな人も多い。心地よく読まされる小説。読んでみてとしか言えないのはもどかしい気もする。

以上、『ダス・ゲマイネ/太宰治』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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