ロマネスク/太宰治=大いなる力には、大いなる責任が伴う。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

ロマネスク-太宰治-イメージ

今回は『ロマネスク/太宰治』です。

文字数20000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約60分。

しもぶくれの髭面、天平時代のイケメンになっちゃう仙術太郎。強くなり過ぎて、軽く小突いて妻を亡くす、漫画みたいな喧嘩次郎兵衛。太宰治の投影、嘘の三郎。三者三様の生き様を見よ!

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

仙術太郎は神童だった。三歳で予言者としての才を表し、十歳になると機転を利かせて村を救うが、そのことは数年で人々に忘れられてしまう。太郎は蔵の中で仙術の本を見つけると、修行して鼠や鷲や蛇になる法を体得する。十六歳で恋をする。惚れた娘に好かれたいと、仙術でイケメンになろうとするが……しもぶくれの髭面になってしまう。それは天平時代のイケメン像――仙術の本が古過ぎた。いたたまれなくなった太郎は、故郷の村を後にする。

喧嘩次郎兵衛はならず者だ。喧嘩がしたくて修行するのだが、強くなり過ぎたために喧嘩しようという者がいなくなってしまう。次郎兵衛は火消しの頭として周囲に頼られ、嫁を貰ってそれなりに満足して暮らすが、ある日事件を起こしてしまう。嫁に喧嘩の腕を自慢しようとしてじゃれてみせたところ、その命を奪ってしまったのだ。次郎兵衛は牢屋に入り、都々逸どどいつとも念仏ともつかぬ歌を、あわれなふしで口ずさんだ。

嘘の三郎は嘘つきだ。父がケチだったため、小遣い稼ぎに嘘を吐くようになる。発作的ないたずらで友達の命を奪ってしまい、それを隠すために吐いた嘘で、いよいよ嘘を嘘で塗り固めていく人生を歩むことに……。三郎は得意の嘘を活かして作家となるが、父が亡くなったのをきっかけに嘘のない生活をしようと思い立つも、この世のすべてが嘘に満ち溢れていることに気づいて苦悩する。

三人は江戸の居酒屋で偶然出くわす。互いの半生を語り合ううち、三郎は他の二人の生き様に感銘を受ける。私たちは芸術家だ。三郎は三者の物語を書こうと決意し、気炎を上げるのだった。

狐人的読書感想

僕も三者三様の生き様には感銘を受けるところがあったので、ブログに書き残しておこうと思います、嘘の三郎のように(?)。

まずは仙術太郎です。

まさに仙人のように、人間味に欠ける人格だな、と最初は感じました。

感情に乏しいところがあり、発達障害を思わされるのですが、しかし予言の才能があって、仙術を身につけたり――サヴァン症候群を思わせる天才ぶりを発揮して、天才って、なんだか無条件で好きになっちゃいますよね。

そして、人々になかなか認めてもらえないのも、天才ですよね(あっさりと認められてしまう天才もいますが)。太郎も人々のためになることをしたのに、その功績は数年で忘れられてしまいます。ちょっと悲しいところです。

しかし、太郎自身は、そんなことをあまり気にしていない様子でした。功名心や欲がないために、特別な力を持ち得たのだとしたら、なんだか思わされるところがあります。僕だったら、まずは自分のために、力を利用することを考えそうな気がします。

いよいよ太郎も、好きな女の子に振り向いてもらうため、仙術でイケメンになろうとして、失敗してしまいました。

特別な力や才能というものは、人々のために使うべきだという教訓が、ここには含まれているようにも思いましたが、実際にはやっぱり自分を優先してしまうように感じ、それができる人は本当にすごいなあ、とか。

太郎が昔のイケメンになってしまったオチは単純におもしろかったですね。人間の美意識って、絶対的なものじゃなくて、時代や場所によって移ろいゆく相対的なものなんだよなあ、ということを、改めて認識したところです。

つぎは喧嘩次郎兵衛です。

強くなり過ぎて、それを自慢しようと妻を軽く小突いたら、妻が亡くなってしまった、って……なんか漫画みたいなお話でしたね。

現代ボクシングの右ストレートを、江戸時代の次郎兵衛が自分で発見して身につけたシーンは、狐人的に熱かったです。

ケンカをするためにケンカに強くなろうとしたのに、強くなったがゆえに恐れられ、誰もケンカの相手をしてくれなくなったというところには、皮肉な矛盾を感じられます。

結局、妻を亡くし、牢屋に入れられてしまったバッドエンドから見るに、やはり太郎と同じように、「力は誰かのために使うべき」というテーマが見られるように思いました。

最後は嘘の三郎です。

このキャラクターは太宰治さん自身の投影だという気がしました。

親に仕送りを頼むための手紙を代筆していたという件、その手紙の内容が他作でも登場していたことや、やはり作家になったというところなどを、重ねて見てしまったからかもしれませんね。

嘘は一度ついてしまうと、その嘘を隠すためにまた嘘をつかなければならず……嘘を積み重ねていく人生は、本人が悪いとはいえ、つらいものがあるなあ、と想像しました。

嘘つきの子供は親に原因がある、というところにも感じるところがありました。子供がなんで嘘をつくのかといえば、親にかまってほしかったり、寂しかったりすることもあるんじゃないかなあ……みたいな。

ともあれ、嘘はよくないですね。

最後三人が出会ったところで、あっさり物語の幕は閉じてしまいましたが、ここから三人の冒険活劇的なストーリーが展開しても、おもしろそうだと感じます。

ぜひ、そんな続きが読んでみたかったような、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

大いなる力には、大いなる責任が伴う。
ウソ、ダメ、ゼッタイ。

狐人的読書メモ

・『水のなかにはいっても濡れないものはなんじゃろ。』『影じゃがのう。』――というなぞなぞが印象に残った。

・『ロマネスク/太宰治』の概要

1934年(昭和9年)『青い花』にて初出。作品集『晩年』に収録。おもしろいし、もっとおもしろくなりそうな作品。テーマの解釈が違っているかも……。

以上、『ロマネスク/太宰治』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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