面会/織田作之助=友達といつも一緒じゃないと不安じゃない?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

面会-織田作之助-イメージ

今回は『面会/織田作之助』です。

文字数1700字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約5分。

戦争に行く友達を見送る私。こういうとき、友達っていいなあって思う? 友情の量や質は一緒に過ごす時間に比例するのだろうか? 昔は戦意高揚の物語、今は戦争ってよくないと思える物語。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

旧友のSが戦争に行く。私は軍事郵便でその事実を知る。Sの筆跡を見るのは五年ぶりだった。明日第一線へ出発するから見送りにきてほしい――Sの頼みを待つまでもなく、私は見送る喜びに燃えた。

面会の朝は台風だった。別れを惜しむ人々の群れを縫い、探し当てたSは見張り役を買っていた。Sには両親も兄弟も親戚もない、不遇な男だった。雨の土砂降りの中、銃剣を構え、私一人を待ち焦がれていたのだ。

Sの嬉しそうな声、私の声もはずむ。言葉少なく顔を見合わせ、お互いの心に通う温かなものを感じ、目の奥が熱くなった。

やがて出発のときがきた。「××君万歳!」の声が渦巻く中、私は力の限り「S君万歳!」と叫んだが、涸れた細い声しか出せず、Sに申し訳ないと思った。しかし、Sはこぼれ落ちるような喜びを、顔いっぱいに浮かべてくれた。

私はSの戦争での目覚ましい働きを予感しながら、ぼうっとかすむSの後姿を追っていった。

狐人的読書感想

友達ってやっぱりいいなあ、そして戦争はやっぱりよくない、そんなことを思った読書でした。

S君が戦争に行く、それを知った「私」は勇んで見送りに行く――両者は旧友という間柄で、五年も音信不通だったといいますが、会えばやっぱり友情を感じられるというところは、ちょっとうらやましく感じたりもします。

友達って、毎日会って話をしたり遊んだりしないと、友情が薄れる気がして怖くなるのって、ひょっとして僕だけですかね?

なんだかんだ言っても、友情の量や質って、一緒に過ごす時間に比例している気がしてしまうんですよね。

とはいえ、毎日話をするよりも、たまに会って話をしたほうが断然話が盛り上がるってこともあります。ともすれば、気が合う友達とは毎日話をしていても飽きないってこともあります。

毎日話をしてもたまに話をしても、友情を感じられるひとが友達なんだなあ……、みたいな。なんだか当たり前のことを再認識しました。

ときどき、自分と友達の温度差を感じることがあります。

友達を喜ばせようとして、サプライズやドッキリを仕掛けてみても、あんまりいい反応が得られなかったり、みたいな?

こっちの思いだけが一方通行みたいになってしまうのって、なんか寂しいですよね。

意気込んで見送りに行く「私」と戦争へ赴くS君の場合も、「私」の熱意に対して意外と冷めた反応のS君を想像したりして、ちょっと不安になったのですが、そんなことはなくて、お互いに熱い友情を確かめ合うことができて、よかったなあ、みたいな。

長く離れている友達がいても、会えば再び友情を確認できるような、そんな友達関係を築きたいなと望みますが、しかしこれ、戦争という特殊な状況が人を感傷的にしてしまうことも少しは関係しているのだろうか、などと考えてみると、複雑な思いも抱いてしまいます。

織田作之助さんは結核のために徴集免除となっているようで、当時はそれが恥ずかしいことだという風潮が日本には蔓延していたようで、うがった見方をするならば、そんな負い目のような感情も、本作に影響を与えているのかなあ、という気がします。

この物語が実際のものか創作かはわかりませんが、織田作之助さんはけっこう経験派、太宰治さんのようにあったことをけっこうそのまま物語に取り込む作家さんだという印象を、狐人的には持っています。

この作品もちょっと感動的なところがあって、『十八歳の花嫁』みたいに、戦意高揚的な意味合いがあったのだとしたら、やっぱり複雑な思いがするんですよね。

小説や物語が戦争に利用されるのはなんだか哀しい……、みたいな……。

戦争と友情に思いを馳せた、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

友達といつも一緒じゃないと不安じゃない?

狐人的読書メモ

・織田作之助の徴集免除の文書が発見された、という新聞記事を見つけて興味を引かれた。オダサクファンで研究者の人が購入した、古本の中から出てきたらしい。戦地に赴く友人たちに対して肩身が狭く、免状を本の中に隠したのではないか、という推察が興味深い。

・『面会/織田作之助』の概要

1940年(昭和15年)7月、『大阪銃後ニュース第十号』にて初出。『定本織田作之助全集 第六巻』(文泉堂出版)収録。初出の媒体からして、やはり戦意高揚的な目的があったのだろうか? ともあれ、狐人的には様々な思いを喚起させられる好短編だった。

以上、『面会/織田作之助』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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