狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『狐のつかい/新美南吉』です。
文字数1000字ほどの童話。
狐人的読書時間は約2分。
狐がみんなのためにおつかいに行くお話。みんなが嫌がることを率先して責任持ってやろうというお話。化け猫やろくろ首が油をなめる理由をお話。狐にはつぎこそがんばってほしいお話。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
(今回は全文です)
『狐のつかい/新美南吉』
山のなかに、猿や鹿や狼や狐などがいっしょにすんでおりました。
みんなはひとつのあんどんをもっていました。紙ではった四角な小さいあんどんでありました。
夜がくると、みんなはこのあんどんに灯をともしたのでありました。
あるひの夕方、みんなはあんどんの油がもうなくなっていることに気がつきました。
そこでだれかが、村の油屋まで油を買いにゆかねばなりません。さてだれがいったものでしょう。
みんなは村にゆくことがすきではありませんでした。村にはみんなのきらいな猟師と犬がいたからであります。
「それではわたしがいきましょう」
とそのときいったものがありました。狐です。狐は人間の子どもにばけることができたからでありました。
そこで、狐のつかいときまりました。やれやれとんだことになりました。
さて狐は、うまく人間の子どもにばけて、しりきれぞうりを、ひたひたとひきずりながら、村へゆきました。そして、しゅびよく油を一合かいました。
かえりに狐が、月夜のなたねばたけのなかを歩いていますと、たいへんよいにおいがします。気がついてみれば、それは買ってきた油のにおいでありました。
「すこしぐらいは、よいだろう。」
といって、狐はぺろりと油をなめました。これはまたなんというおいしいものでしょう。
狐はしばらくすると、またがまんができなくなりました。
「すこしぐらいはよいだろう。わたしの舌は大きくない。」
といって、またぺろりとなめました。
しばらくしてまたぺろり。
狐の舌は小さいので、ぺろりとなめてもわずかなことです。しかし、ぺろりぺろりがなんどもかさなれば、一合の油もなくなってしまいます。
こうして、山につくまでに、狐は油をすっかりなめてしまい、もってかえったのは、からのとくりだけでした。
待っていた鹿や猿や狼は、からのとくりをみてためいきをつきました。これでは、こんやはあんどんがともりません。みんなは、がっかりして思いました、
「さてさて。狐をつかいにやるのじゃなかった。」
と。
狐人的読書感想
狐がおつかいに行くお話といえば、『手袋を買いに』を思い浮かべますが、こんな話もあったんですね。
山の中に、猿や鹿や狼や狐が一緒に住んでいて、夜になると行灯をともし、一つの灯を囲んでいる光景は、なんだかほっこりさせられます。
そんなみんなが楽しみにしている行灯の油がなくなっているということで、そのおつかいを狐が率先して引き受けたのはとてもえらいと感じます。
動物たちは嫌いな漁師や犬のいる人間の村には行きたがりません。みんなが嫌がることを率先して引き受けるのは立派なことだと思います。
そんなわけで狐は人間の子供に化けて、首尾よく油を手に入れますが、帰り道にその油をなめてしまいます。
油ってそんなにおいしいの?
――と疑問に思いましたが、昔の行灯には石油ではなくて、主に菜種油が使われていたそうです。
おいしいかどうかはともかく、菜種油は植物性の脂肪分が摂取できるので、当時の猫がこれをよくなめていたらしく、化け猫が行灯の油をなめる由来はここからきているという話を知っておもしろく感じました。
同じ妖怪でろくろ首も行灯の油をなめるといわれていますが、これもやはり不足している栄養摂取が目的だったと考えられています。
ろくろ首の正体は苦界に落とされた婦女子で、強欲な雇い主に満足な食事を与えてもらえず、ゆえに行灯の油をなめるしかなく、灯に照らされたその影が、首の長い妖怪の姿に勘違いされたという、なんだか哀しい話があります。
さて。話が逸れてしまいましたが、行灯の油にはイワシ油(魚油)などもよく使われていたそうで、こちらはおいしさが想像しやすいように思います。
ちょっとだけ、あともう少しだけ……と、結局狐は油を全部なめてしまい(おいしいものをやめられない気持ち、ちょっとわかってしまいます)、みんなをがっかりさせてしまいました。
みんなが嫌がることを率先してやるのは大切なことですが、自分でやると言い出したからには責任を持ってやり通さなくてはなりません。
――というあたりが、今回の読書で得るべき教訓でしょうか。
狐にはつぎこそがんばってほしい!
――と願わずにはいられない、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
みんなが嫌がることを率先して責任を持ってやる!
狐人的読書メモ
・――というのは、『人の嫌がることを進んでやる』とも言い換えられて、でもこの表現って、人の嫌がること(暴力とか悪口とか)を率先してやる、という意味にも捉えることができ、まったく同じ文なのに正反対の意味になる不思議。
・――とはいえ、みんなが嫌がる仕事を引き受けるのって本当に難しく思ってしまう……クレーム対応とかトイレ掃除とかね。
・狐が油をぺろぺろするのやめられない気持ちわかる。甘いものとか、ついついやめられなかったりするよね……。
・山の中の動物たちが灯に集まるというストーリラインは『赤い蝋燭』にも似ている。行灯や蝋燭の灯と山の動物たちに、新美南吉は何か思い入れがあったのかもしれない。
・『狐のつかい/新美南吉』の概要
1948年(昭和23年)『きつねの おつかい』(福地書店)にて初出。短く、教訓もわかりやすく、読み聞かせに向いている作品かもしれないが、狐が行灯の油をなめる件など、現代ではわかりにくい表現を子供たちにわかりやすく伝える工夫は必要であるかもしれない。
以上、『狐のつかい/新美南吉』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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