狼森と笊森、盗森/宮沢賢治=過去、現在、未来…人と自然の関係は?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

狼森と笊森、盗森-宮沢賢治-イメージ

今回は『狼森オイノもり笊森ざるもり盗森ぬすともり/宮沢賢治』です。

文字数6000字ほどの童話。
狐人的読書時間は約15分。

小岩井農場の北にある四つの森について。大昔、森と人間は友達だった。いまはどうだろう?自然との共存とか人間のエゴだろ、って思う?ところで小岩井コーヒーおいしいよね。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

小岩井農場の北に四つの森があった。南から北へ、狼森オイノもり笊森ざるもり、黒坂森、盗森ぬすともりと続いていた。大昔、数組の百姓の家族がここに入植し、森の許しを得て暮らし始めた。森は彼らに木を分け与え、北風から守ってやった。

一年目の秋、人々が豊作を喜んでいるところに、子供たちが消える事件が起きた。探しに行くと、子供たちは狼森で狼たちと火を囲んでいた。人々は子供たちが森のもてなしを受けていたことを知り、お礼に粟餅あわもちをお供えした。

二年目の秋、人々がさらなる豊作を喜んでいるところに、農具がすべて消える事件が起きた。探しに行くと、笊森の笊の中に農具を発見する。笊森も粟餅が欲しかったらしく、この年から人々は狼森と笊森に粟餅をお供えするようになった。

三年目の秋、人々が大豊作を喜んでいるところに、収穫物がすべて消える事件が起きた。黒坂森の助言に従って探しに行くと、盗森が盗んでいたことが判明する。盗森も粟餅が欲しかったのだ。この年から人々は四つの森に粟餅をお供えするようになった。

――その粟餅も、時節がら、ずいぶん小さくなったが、これもどうも仕方がない。これらは黒坂森が語り部に語った話である。

狐人的読書感想

狐人的に小岩井コーヒーが好きだったりするのですが、小岩井農場って宮沢賢治さんが童話を書いている時代からあったんですねえ……恥ずかしながら、知りませんでした。

(調べてみると、1891年―明治24年―に開設されたそうで、創業者三名の頭文字をとって、「小岩井」と命名されたそうです)

本作の主要登場キャラクターである四つの森(人格を与えられた森)も、実在する地名なんだそうです。

宮沢賢治さんの他作にも多く見られるように、本作も「人間と自然の関係」というものが、主要テーマとして描かれているように思います。

昔の人たちは対話するように自然と付き合ってきたんだなあ、と思えば、それはなんだか素敵なことのように感じられます。

動植物と話ができて、物語のように仲よくできたらすばらしいな、と想像しますが、しかし実際に動植物が話せたとしたら、絶対に人間とは仲良くできないだろって、ひねくれて考えてしまう僕がいるんですよね。

とくに植物の場合、人間に与える(というか一方的に略取される)ことはあっても、逆に恩恵を受けることは限りなく少ないように思い、むしろ人間がいないほうが繁栄できるんだろうなあ、というのは想像に難くないところです。

結局、世界って、奪うか奪われるかの関係しかないように成り立っていて、自然との共存、動物たちとの共存というのはしょせん人間のエゴに過ぎないのかと考えれば、なんだか寂しいような悲しいような気持ちがして、その気持ちだって僕のエゴに過ぎないんですよね。

とはいえ、世界から植物が消えてしまえば、現状人間は生きていけないわけであって、人間のエゴに過ぎなかったとしても、やはり自然との共存という考え方は大切なものだと思えてきます。

自分たちが生き残るためにエゴイスティックな感傷があるのだとすれば、人間の心ってうまくできてるなあ、と感心せずにはいられません。

黒坂森の最後に語った一言が、印象に残ります。

『その粟餅も、時節がら、ずいぶん小さくなったが、これもどうも仕方がない』

不作でお供えの粟餅が小さくなったと捉えるならば、たしかにどうも仕方がない、というところですが、自然への感謝や配慮が失われつつある現代を思えば、仕方がないとばかりもいえないことのように感じられてしまいますね。

やがて人工的に酸素を生み出す装置が開発されて、自然を必要とせずに人間は生きられるようになるのでしょうか? それともやっぱりいつまでも自然と共存していくことになるのでしょうか?

「人間と自然の関係」の過去、現在、そして未来が気になる、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

過去、現在、未来…人と自然の関係は?

狐人的読書メモ

・小岩井ヨーグルトもおいしいよね。

・『狼森と笊森、盗森/宮沢賢治』の概要

1924年(大正13年)『イーハトヴ童話 注文の多い料理店』(盛岡市杜陵出版部・東京光原社)にて初出。当時はあまり評価されなかったらしい。四つの森で自然の持つ多面性が描かれている。人は感謝を忘れがちだが、何かのきっかけで思い出すことができる。自然界から現代への不気味な警告とも読み解ける。

以上、『狼森と笊森、盗森/宮沢賢治』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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