狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『猿小僧/夢野久作』です。
文字数6000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約14分。
万狼の大群を火計により撃退し、生き胆取りの悪党から太子を救い出す、猿小僧の痛快大冒険活劇! 不自由な人間の都と自由な猿の都。誰もがみな、不自由の中で限定された自由を生きてる?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
猿小僧はもともと乞食の子供で、人間が行ったことのない猿の都に迷い込み、猿たちと暮らし始める。猿小僧は猿たちに家や橋や野菜の作り方を教えて、猿たちは猿小僧に果物を与え、木登りや鳥獣の言葉を教えたりする。
猿小僧がすっかり猿の都での暮らしになじんだ頃、狼の大群が攻め寄せてくる。猿小僧はこれを火計にて撃退する。以来、猿たちは猿小僧を神様のように敬うようになる。
ある日のこと、猿小僧は生き胆取りの三人の悪党に遭遇し、これを退治してさらわれてきた十三人の子供を助け出し、人間の都へ送り届けてやる。子供たちは貴族の子ばかりで、その中には太子様も含まれていた。
天子様は猿小僧に深く感謝し、王宮での暮らしや地位、着物や学問を与える。しかし猿小僧にはそれらが窮屈でたまらず、ついに王宮を飛び出してしまう。
猿小僧がひさしぶりに猿の都へ帰還すると、猿たちは泣いて喜んだ。猿小僧も初めて嬉し泣きに泣いた。
「人間の都より猿の都の方が余っ程いい。もう決してここを出て行かないから安心しておくれ」
狐人的読書感想
「猿小僧の痛快大冒険活劇!」って感じでしょうか? とてもおもしろかったです。
僕も自由気ままな猿の都へ行ってみたいような気持ちになりましたが、はたして猿小僧のようにうまく立ち回れるか……まったく自信がありません。
それは、僕が文明社会の便利さに、どっぷりつかってしまっているから、そんなふうに思うのだろうか、などと考えてみました。
僕も猿小僧と同じように、人間社会が窮屈に感じられることがあります。
人間社会で生きるためには身分が必要で、その身分に応じた役割を果たし、労働力など文明社会を維持するための何かを提供し続けなければならず……そういったことに、不自由さを覚えたことのある現代人は、僕以外にも結構多いのではなかろうか、なんて想像してみるのですが、どうでしょうね?
猿小僧みたいに、猿の都で猿たちに神様のように敬われて、おいしい果物を捧げてもらい、自然の中で毎日遊び暮らせたらとても楽しそうですが、しかし実際、そんなうまい話はないですよね。
仮に文明を捨て、電気も水道もない自然の中で生きることができたとしても、食べ物を得るためには狩猟や栽培や採取をしなければならず、自給自足の生活の労働量は、文明社会で提供しなければならない労働量を超えているだろうことは明白です。
それが苦にならない、楽しい、自由だと思える人もいるのでしょうが、僕には難しく感じられてしまいますね。
それに自然の中で動物たちと遊ぶのはおもしろいのかもしれませんが、現代社会にある娯楽、マンガやアニメやゲームや映画や、何より読書ができないのは絶対つらいに違いありません。
この小説は一見すると「人間の都=窮屈で不自由な社会」「猿の都=勝手気ままで自由な社会」といった印象を受けるのですが、現実的に自由不自由を考えてみると、人によってずいぶんと差があるように思えてきます。
どんな環境で生きるにしても、自由な面と不自由な面は絶対に存在するわけで、言うなれば「不自由の中の自由」(不自由の中で制限された自由)といったものを、人はそれぞれに納得して享受するしかないのかもしれませんね。
自由になりたいけど、自由ってなんだろう?
――みたいなことを考えさせられた、今回の読書感想でした。
読書感想まとめ
自由になりたいけど、自由ってなんだろう?
狐人的読書メモ
・読書する、空想の中だけは、人は真に自由であるのかもしれない。
・『猿小僧/夢野久作』の概要
1920年(大正9年)『九州日報』にて初出。「九州日報シリーズ」。初出時の署名は「萠圓山人」。初出紙には夢野自筆の挿絵が一点添えられていた。本編の主人公「猿小僧」は、この2年後に発表される「白髪小僧」の主人公に通じるところがあると指摘されている。猿小僧の痛快大冒険活劇! 限定された自由について漠然と考察した。
以上、『猿小僧/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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